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「おかしな夢でした」
今、ぼくはQ大学の学生として、その大学院に通う身分である。タツマ喜六というペンネームは相変わらずで、学業をこなしながら小説家の端くれをやっているのだ。
そのぼくの話を教授……すなわち夢野博士が先ほどから興味深そうに訊いているのだ。
「それはつまり、妹のいない君が見た願望夢ではないかな」
「先生もそう思われますか」
「あり得る話だよ。人はその夢で果たせない希望を叶えようとすることがある」
「予知夢ではなさそうですね」
「第一、年が合わないよ。君の二十四歳という年齢は合っているとして、その、みよちゃんという女の子の、七歳とか十七、八歳とかいう年がどうにも理屈と合わない。たとえこれから君に妹ができるとしても、その年は零歳であるはずだ。まあ、夢というものはわけのわからないものが多い。あるいは君の見た夢のとおり、この世界とは別のアナザーワールドが、どこかでぽっかりその出入り口を開けて待っているのかもしれないな。……ありがとう、タツマ喜六くん。夢研究の素材として興味深い話だったよ。今回の夢の話、小説にするのかい」
「ええ。完成したら先生にも読んでいただきたいです」
「期待しているよ」
夢野博士の部屋を出たぼくはその足で大学をあとにすると、キャンパスからほど近いハンバーガーショップを目指した。そこのコッテリバーガーセットが目下のぼくの好物なのだ。
あの夢が正夢だとすると、そのレジに立つ店員は高校生のみよちゃんなのだ。ぼくは何かの期待めいたものを感じながら店の入り口をくぐった。
明るい外から入った関係で一瞬目がくらみ、店内は薄暗いものに感じた。レジの女の子の顔もよく見えない。
「いらっしゃいませ」
聞き覚えのある声。この声はひょっとして……
「みよちゃん?」
ぼくと彼女の目が合ったのはそのときだった。
妹にするとちょうどいいような年ごろの、夢で見たのとそっくり同じな女の子。何かの予感がぼくの胸を一陣の風のごとく吹き抜けた。
「あなた、みよちゃんとおっしゃるんですか」
おかしいかもしれないと思ったが訊いていた。すると彼女はためらいがちに答えた。
「えっ、はい」
「偶然だな。ぼくの妹と同じ名前だ。……あっ、注文はコッテリバーガーセットで。ドリンクはホットココア」
みよちゃんの夢。それはやはり予知夢だったのだ。
たとえ、この場で一度出会うだけの女の子だったとしても、あれは立派な予知夢だったのだ。
「どうしてわかったんです。わたしの名前」
「夢を見たんです。予知夢みたいなやつ」
「…………」
すると、いつの間にかぼくの後ろには列ができていて、誰かが、
「早くしてくれないか」
と声を荒げた。それでこの日のぼくの記憶は断たれた形になり、あとにはみよちゃんとのやりとり、その表情や声といった彼女にまつわるものが残った。
自宅二階の自室に戻ったぼくは、そこでまた驚かされることとなった。夢で見ただけのはずの夢新聞が机の上に置いてあったのだ。
どういうことだろう。ここはやはりみよちゃんの夢世界であるのだろうか。いよいよわからなくなってきたぼくは隣部屋をのぞいた。
衝撃――
そこには七歳とおぼしきみよちゃんがいたのである。




