第9話 大切なのはわかるけど学校ほど面倒くさいものはないと思う。
「起立、礼、着席!」
いつもの挨拶と共に席に座る。今日は一時限から数学だよ。死ぬほどかったるい。おっちゃんの教師が因数分解の説明をする。わけわかんねえよ。前世で習っただろだって?覚えてねえわ。ただでさえ夏のクソ暑い日差しの中、クーラーが効いてても日差しが当たってしんどいのよ。
あのチョークのカリカリと言う独特な音と共に式が書かれていく。
「久川、これ解けるか?」
ニヤケ面で俺を指してくる。あ、この野郎、俺が数学苦手なのわかって指しやがったな?任せなさい。すかさず立ち上がる。そして自信満々に答える。
「わかりません。」
即答して教師が呆れ果てる。「お前なぁ‥」と言いながらも笑っており、クラスメイト達もクスクス笑っている。仕方ないだろ、苦手なものは苦手なんだもの。
「久川お前成績1な?早坂、解けるか?」
「はい…。 \( 2x^3 + x^2 - 2x + 8 \)です…。」
あっさり答え、教師が頷く。と言うか俺の成績1にしようとするな。留年するじゃねえか。なんのために赤点免れたと思ってるんだ。
「相変わらず馬鹿ね…」
一ノ瀬が頬つきしながらため息をつく。クラスメイト達が笑い、俺も「やかましい!」と反撃し教師が「お前だよ!」とツッコむ。苦手な授業でもこんなノリで楽しめるなら良い。その後もまた問題を出し、他の生徒が答えていく。
休み時間になり、机に突っ伏す。
「あなたねえ…即答でわからないはないでしょ…」
「流石に僕も吹き出しそうになったよ。」
「その…あれは笑いかけました。」
いつものように俺の机の周りに集まり、一ノ瀬は頭を抱え、柊が笑っている。早坂ですら笑いかけるってなんだよ。
「アタシは指されなくて良かった〜。ある意味ありがとね!」
「感謝されても嬉しくねえわ!」
「じゃあ勉強しろ。即答したのは流石に馬鹿だと思ったぞ俺。」
島村と平賀も揶揄ってくる。畜生!社会と国語で見返してくれる!許さぬぞ!
「うるせえ!頭いいからってこのイケメンが!くたばりやがれ!」
「死なねえからな!?勉強しろドアホ!」
「じゃかあしゃあ!」
罵り合いを始め、4人がため息をつく。なにやってんだか。という表情をしている。
ボロクソに言い合いながら、ふと思い出し平然と話す。
「そういやよ、バイトどうよ?」
「ん?ああ、もう1週間経つけど慣れてきたよ。今のところ変なクレーマーは来てないな。」
「そりゃ良かった。俺も何か始めようと思ってよ。」
「何をするつもりなの?」
柊がキョトンとした顔で聞いてくる。早坂と一ノ瀬も顔を見合わせて首を傾げる。
「部活でも入ろうかなと。文化部にな?」
「いいじゃん!なにやるの?」
「茶道部。金曜しかやってないし部費も月500円だからな。」
茶道部楽しそうだからな。抹茶と和菓子とか最高じゃないの。
「違和感すごいわね。」
「すまん、想像できない。」
「ごめん、想像したら笑っちゃった。」
柊と早坂も同意するように頷く。おいコラなんだその反応。つか柊と早坂さんもなんで笑ってるんだ。泣くぞ。
「チッ。」
「なんで舌打ちするのよ。違和感がすごいのよ違和感が。」
「あの…ものすごくマナーとか厳しいと思いますよ…?」
「そこは大丈夫。調べたから。」
「ま、まぁ、見学とかしてもいいと思うよ?僕も部活に興味あるし」
柊も部活に興味あるのか。聞いてみようかと思ったらチャイムがなる。席に座り、授業が始まる。国語か、それなりに得意科目だからいけるな。
女性教師が入ってくる。前から思っていたのだが、ラノベっぽい世界なのに年配の方とはどう言う事だ!美人がよかったのに!だが説明がわかりやすい。ベテラン教師はほんとすげえよなぁ。
(やっぱなんか国語って楽しいんだよな。漢文とかさ。)
頬付けしながら想いに耽る。あー早く終わらねえかなぁ。4時限目って腹減るからよ。
チャイムがなり、やっと昼飯になる。購買から唐揚げとポテトを買ってきてさらにいつもの3段弁当を取り出す。
「た、食べますね‥」
「腹減るからよ。ガッツリ食うのよ。」
「太るわよ?」
いつものメンバーで集まり、俺が食べる量に早坂が驚きながら可愛らしい弁当を開け、俺の弁当を見て流石に驚く。おい一ノ瀬、良いんだよ。男はガッツリと食うもんだ。多分。
「あ、ポテト食っていいぞ。」
「ありがとうございます…。」
早坂が頭を下げて1本取る。
「そういや柊、なんの部活に興味があるんだ?」
「うん、棋道部に入ろうと思ってるんだ。将棋とか囲碁に興味があって。アルバイトも考えたけど、お父さんにお金のことは大丈夫だからって言われてさ。」
「あら、似合うと思うわよ?実は私も華道部に入ろうと思ってるの。」
一ノ瀬が華道をやってる姿を想像してみる。違和感ないな。と言うか似合いすぎるだろ。一ノ瀬は美人だからな。
「やっぱ、文化部になるよな。俺はバイトしてるから部活動やらないけど、やるなら気楽にやれる部活をやりたいな。」
「アタシはいいかな〜。お金稼ぎたいし、だけど運動部って上下関係厳しそうだから文化部のほうがいいよね。」
バイトを始めた2人はあまり興味なさそうな感じだ。まぁ部活動は帰りも遅くなるしバイトしてたらやれないからな。
「んじゃ放課後4人で見学行くか。いきなり決めるより見学したほうがいいよな。」
「賛成!どんな感じなのか楽しみだね!」
どんな感じなのか見てくるくらいなら大丈夫だろ。美人な先輩いればいいなぁ。内心でそんなアホな事を考えるとチャイムがなる。あー長い休み時間終わっちゃったよ。
6時限目までおわり、いつものように掃除をする。平賀と島村はバイトのため先に帰り、4人で見学に向かう。
「そういや早坂さんも部活に興味あるの?」
「はい…華道とか書道をやってみたいな…と。」
「絶対似合うよ!それに僕たち、運動部より文化部の方が似合いそうだよね!」
「言えてますね‥楽しい部活ならいいと思うのですが…」
柊と早坂の話を聞いて一ノ瀬は少し考え込む。
「楽しいのもいいけど私は真剣にやりたいわ。勿論楽しみたい人もいるからバランスが取れてる事を願いたいけど。」
「俺もそう思う。エンジョイ勢とガチ勢はマジで対立するからな。」
俺は一ノ瀬の意見に同意する。ゲームやサバゲーとか、楽しみたいエンジョイ勢と、とにかく勝ちを目指すガチ勢はマジで対立するからな。バランス取れてないとどえらいことになる。文化部だからそうそうないと思うが…吹奏楽部だけはありそうだけど。あと顧問が鬼軍曹じゃない事を願いたい。
茶道部、華道部、棋道部、書道部を見た後、せっかくなので演劇部とかるた部も見学してみた。
「俺は少し考えよ。お前らは?」
「私は入るわよ。いい経験になりそうね。」
「僕は棋道部とかるた部のどっちかにするか迷ってるよ。かるたも面白そうだったね!」
「私は‥少し考えますね?他に見てまわります…。」
2人は入ることにしたようだ。俺はバイトでもするかな。茶道部に入るのも悪くないが。
内心でバイトと茶道部を両立するのも悪くないなと考えながら俺と早坂は自転車置き場に向かおうとする。すると俺はある男女に気づく。花の世話をしているのだ。
「あのー。ここって部活…すか?」
「綺麗な花ですね‥」
「うん、園芸部。華道部にもたまに花あげてたりしてるんだよ。」
「今は私達3年生2人と2年生2人、1年生1人の5人しかいないけど、あなた達は1年生かな〜?」
あー園芸部か。男子の方は大人しめの、青髪の柔らかい雰囲気のイケメンといった感じで、女子の方はベージュ色の三つ編みツインテールの髪型でほんわかした感じの先輩だ。スタイル?素晴らしい。
「そうっす。なんとなく部活でも入ろうと思いまして、あちこち見学してたんすよ。」
「へぇ〜もしよければ見学してく?まぁ活動は地味だけどね。育てるの楽しいよ?」
「バイト考えてるんで来れるかわからないっすけど…」
「全然大丈夫だよ〜。うちは緩くってるからね〜。」
先輩に言われ、せっかくなので見ていく。花とかよく知らねえよ俺。早坂は興味津々に見ているが。
「こちらの花は…マリーゴールドとサルビアですか?」
「うん、時期が時期だから夏の花を育ててるよ、詳しいね君!」
「さすが早坂さん。馬鹿の俺は花はわからんからな。」
マリーゴールドは知ってるがサルビアはわからんな。見た事はあるがあれだ。名前を知らんというやつだ。
「ええ…花は好きですから‥」
「もしよければ入らない?やってる事は花の育成や野菜の栽培だけど、花は文化祭とかにも展示するよ。」
「あ…入部します。久川君は?」
「まぁいいけど、汚れとか気にしないし。」
「お!ありがとう。僕は部長の瀬戸口輝、よろしくね!入部届もよろしく」
「私は副部長の園山遥。よろしくね〜。」
園芸部ね。花とか水やりしか知らんけど大丈夫か?まぁ汚れ仕事ならできるし。
「久川亮介です。よろしくお願いします。」
「早坂葵です…よろしくお願いします…。
先輩が自己紹介してきたんだ、こちらも自己紹介するのが礼儀ってもんだ。そういや気になったことがある。2年生と1年生がいない。
「あの、ところで2年生と1年の方は?」
「あー、休みだよ。」
「あ、はい。それじゃ明日入部届出すんでよろしくお願いします。」
早坂と共に頭を下げて自転車置き場に向かう。早坂は楽しそうだ。花が好きなのは違和感ないな。運動部の活動の音が響く中、俺と早坂は帰る。
1年生というと他クラスだな。会うのが楽しみだ。
翌日、俺と早坂で入部届を書いてたら園芸部に入ることにクラス全員が驚いた。まぁコレに関しては俺も驚いてるからな。まぁ楽しむか。




