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第6話 汚い店ほど美味いのは真理だと思う。

学校から出て、コンビニのATMでお金をおろし、チャリを押しながら店までの道案内をする。他の学生達やクラスメイトもグループでファミレスやカラオケ等遊びに向かう者、バスに乗り駅に向かう者、1人で真面目に塾に向かう者など様々だ。


「あ、あの‥どう言うお店なんですか?」

「ん?中華屋だよ。女子には少し多いから分けた方がいいけど、量はガッツリ、味も良し、値段も安いところを知ってるのさ。そこにしようと思ってね。」

「す、少し歩くんですね…」


早坂がキョロキョロしながら周りを見渡す。個人店の多い細い道だが、慣れてないのだろう。不安そうにしており、柊も同様にオドオドしている。


「本当にこんなところにあるのか?というか休みの日こう言う道を歩いているのか?」

「ああ、美味い店を探すのが趣味の一つだからな。お、あそこだぞ。」


中華料理◯×軒と書かれた赤い看板が目印の店を指差す。俺以外の5人は顔を見合わせるが俺は気にせずに開ける。70代くらいの夫婦と50代の息子がやっている。少し小汚い店内だが、美味しそうな匂いが漂っている。まだ俺たちしか来てないようだ。


「ちわーっす。すいません、6人だけどいいですか?」

「あいよー!そこのテーブルをくっつけてね!」

「どもっす。」


おばちゃんが元気に伝えてくる。俺がテーブルを、平賀が椅子を移動させ、座る。

一ノ瀬はこう言う店は余り来ないのか周りを見渡す。色褪せた日替わり定食のメニューや棚に並んだ紹興酒などは余り見た事ないのだろう。俺がこっそりと耳打ちする。


「悪いな、けどここめっちゃ美味いから。」

「大丈夫よ?その、こう言う店は初めてだから。おすすめは?」

「そうだな、油淋鶏と青椒肉絲、大盛りチャーハンがおすすめかな。炒飯は女子には多いから大盛りを3人で分けるといいぞ。」

「柊は?」

「僕も少食だから一ノ瀬さん達と分けるよ。」

「OK、大盛り2人前頼めばうまく分けられる。平賀は?」

「俺は普通サイズでいいよ。大盛りはきついかな?」


俺を除く5人が頷く。俺がおばちゃんを呼び、大盛りと普通サイズのチャーハンを2つずつ、油淋鶏と青椒肉絲を頼む。おばちゃんが確認して厨房に戻る。


「ねえ久川、他にも美味しい店とか知ってるの?趣味って言ってたけど。」

「まぁな、ラーメン屋巡りとか好きだから休日によく行くんだよ。んで、ここがめっちゃ美味かったから何度か来てるのさ。」

「私‥こう言うお店初めてです。いつも家で食べてますから。」

「僕もこう言うお店は余り来ないから新鮮だよ!」


マジか、まぁ学生ってチェーン店とかだもんなぁ。俺は前の世界、個人経営の店でよく食ってたけど。一ノ瀬はテレビを、特にニュースを真剣に見ているな。早坂はメニューを見て「品数多いですね‥」と呟いている。


「そうそう、早坂さん恋愛小説とか好きなんだよね。僕も好きなんだ!おすすめとかあるかな?」

「あ…はい!私は「◯◯の恋人」とかよく読んでます。親が少し厳しくて…。漫画は読ませてもらえないのですが、小説ならいいと言ってくれまして。」

「ええ!?漫画面白いのに…」

「少し気持ちわかるわ。お父さんが余りよく思ってないから。」

「ほんと!?アタシは別に気にしてないけどなぁ…。堅苦しそう。」


島村が手を頬に当てて驚いている。ガラガラと扉が開き、どんどん客が入ってくる。サラリーマンや大学生など様々だ。


「小学生の頃とか漫画とか読ませてもらえなかったけど、成績で見返したから今は自由よ?」

「羨ましいです…。家に帰っても勉強ですから‥それで余りクラスメイトと話とかできなくて…その…」

「それなら近いうちに私の家にきましょ?同じ女子同士なら大丈夫よ。ゲームはないけど、漫画ならいくらでも読ませてあげる。」

「良いのですか…?」

「それならアタシの家でもいいよ!ゲームとかもあるし!やろうよ!」


島村と一ノ瀬が早坂を誘う。成る程な。会話を聞いててわかったが、親が厳しいタイプか。さらに家でも勉強させられてるな。だから余り人付き合いが得意じゃないのか。


「平賀、柊、お前らの家はどんな感じなんだ?」

「普通かな。まぁ成績が悪くなったら怒られるけどゲームとかも禁止されてないな。」

「僕もだよ。僕はゲームはやらないから漫画とかだけど、久川君は?」

「自由。だが赤点取ったら怒られるって感じだな。つか次あんな点数取ったら殺される。間違いなく殺される。」


男達3人でも話し合う。まぁなんだかんだ普通なのが1番だよな。厳しすぎると余り良くないと思うが。教育虐待とかマジでシャレにならないからな。んなクソ親の家だったら出てってやるわ。


「まて、大丈夫なのか?帰りが遅くなっても。」

「それなら大丈夫です…連絡はしましたので。」

「良かった。流石に申し訳ないからよ。早坂さんの親に申し訳ないからよ。お、飯が来たぞ。」


飯が来る。大盛り炒飯のボリュームに驚き、さらに油淋鶏と青椒肉絲が届く。あまりにもうまそうな匂いに全員がつられる。

小皿も全員に配り炒飯を分配する。全員で「いただきます。」と言い食べる。


「うま!本当に美味しいよこの炒飯!」

「本当ね、油淋鶏も美味しいわ。」

「青椒肉絲も美味しいです‥。」


女子達はあまりの美味さに舌を打つ。


「うん、油淋鶏のたれが絶品だね!」

「本当に美味いな。冬川、俺にもあとで美味い店教えてくれよ。」

「おう、任せとけ。」


サムズアップする。任せろ。ラーメン屋とか詳しいからな。店内もサラリーマン達がビールや紹興酒などを頼み、店内がいい意味で騒がしくなっていく。

俺たちも学校の事を話しながら食事して、食い終わると俺はまだ終わりじゃないと片手を上げる。


「おばちゃん、杏仁豆腐と胡麻団子あります?」

「あるよ!すぐ作るからね!」


店主が先に杏仁豆腐を出してきて、数分後に胡麻団子を出してくる。女子がいるんだ。スイーツは必然だ。

先に女子達が食べる。島村が「ん〜!!」と身体を震わせる。早坂と一ノ瀬が顔を合わせ、目をキラキラさせる。その次に柊と平賀も食べて一瞬で頬が緩む。


「美味いだろ?」

「ほ、本当に美味しいよ!甘くて…絶品だよ!」

「ああ、本当にうまいな。今度食べにこよ。マジてくる。」

「嬉しいこといつまでくれるね!そんじゃ今回はサービスでこの杏仁豆腐と胡麻団子の料金はまけてあげるよ!」

「あざっす!」


おばちゃんが気前よくまけてくれて、店主も口元を緩ませながらサムズアップする。流石に頭を下げて、レジに向かい、約束通り会計してバラバラに別れる。電車に乗り、家に帰宅する。


「亮介?結果はどうだった?」

「あ、お兄ちゃん帰ってきたんだ。」


お袋が笑みを浮かべながら待っていて、妹も気づく。あ、これやべえわ。


「こ、こちらございます。」

「どれどれ?数学35点、英語31点、理科36点、国語73点、社会75点…。」


点数を言うとため息をつく。本気で呆れてるなこれ。


「まったく、勉強会したのに理数系と英語がダメじゃない‥赤点は免れたけど、せめて40から50は取りなさい?」

「お兄ちゃん、ダメじゃん。」


紗香もため息をつく。そう言うお前はどうだったんじゃい!


「お前はどうだったんだ?」

「ん?私は350点だけど。」


参りました。バカで結構でございます。


「だけど社会と国語はよくやったわ。次は頑張ってね?」


お袋がが笑みを浮かべる。あ、これ次やらかしたらやばいやつや。


「はい、次は頑張ります。」

「それじゃ部屋に行っていいわよ?」


立ち上がり部屋に向かう。テストはこれがあるから嫌なんだよなぁ‥。早く働きてえ。卒業して就職してえ!とりあえずゲームやるか。「あー勉強したくねえ。」とぼやきながらゲームをやる。数時間経ち、眠くなったので寝る。あー本当に疲れたわ。

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