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第18話 久々の溶接ってなんだかんだ面白い。仕事だとめんどくさいけど

※本作に登場する溶接や金属加工の描写はフィクションです。現実でアーク溶接およびグラインダーを使う作業をする場合は、労働安全衛生法に基づく特別教育が必要です。また、学校での作業には教員の許可・監督のもとで行う必要があります。そして保護具の着用もしなければなりません。現実で無断で行うと停学、最悪退学になるので絶対に真似しないでください。フィクションですので、その点ご理解ください。

「ええ!?あなた本当に何を言ってるのよ!」

「溶接の経験なんてないでしょ!?」


平本先輩と緑川先生が困惑している。経験あるんすよ。こっちの世界じゃ4ヶ月くらい経ってるけど元の世界でね。


「あー簡単すよこんなの。まーみててくださいって」


俺は棚から巻き尺を取り、使う予定の植木鉢の大きさを測る。3.5号鉢が直系10.5cm、5号鉢が直径15cmね。高さも測ってと…。


「OK、これなら2時間で作れるかな。最初だからちっと時間かかるな。」

「なんで測り方慣れてるの!?」

「いやいや、マジで作るのか!?」


作るんだっての!ちと簡単な図面っつうか図を書くから静かにしてちょ!


「台座の足はこれくらいでいいか…。3.5号は15cm、5号鉢は20cmでいいか」


全員が固まる。「なんですぐに書けるの?」みたいな表情をして。俺はとりあえず部室のロッカーにある作業着に着替えてくる。


「じゃ、行ってきます。」


ドアを開けて溶接場に向かう。10秒位部員と先生が固まった後「待って!?」と叫んで追いかけてきた。ジャージだと危ねえぞ。


少し歩いて溶接場に入る。3年生の男子部員が俺を見てくる。


「おい何しにきたんだ!」

「あーちょっと物作りっす。端材使いますわ。」

「お、おい!?」

「久川君!?」


端材置き場からリングに使う丸棒と足に使う角棒を取り出す。よし、これくらいならいいな。何本か取り、グラインダーを使おうとすると溶接部の顧問が怒鳴ってくる。


「コラっ!お前何やってんだ!」

「あーすんません。ちと物作りたいんで。すぐ終わりますよ。」

「お、おい!」

「ヨイショ!」


丸棒を曲げて、余った部分をサンダー通称『グラインダー』で切断し、バリを削ってハンマーで叩いて合わせてリングにし、植木鉢の大きさに合わせたのを合計大と小のリングを4つ作る。角棒はスケールで長さを測り高速カッターで切断する。もちろんサンダーでバリ取りして。


「あいつ普通科なのになんでできるんだ!?」

「あんな綺麗なリング作ってるぞ…?」

「つうかなんであんな慣れてるんだ!?ていうかなんで園芸部がここに来てんの!?」


慣れた手つきで作業する俺に溶接部の部員と顧問達がざわつく。


「な、なんでできるの…?」

「経験者なのかな…?」

「久川君普通科だよね?なんでできるんだ?」


先輩方も目を丸くしている。まぁ普通なら、工業系の生徒じゃなければできないよな。

おっと、この棒ちとひでぇな。


「ちょっとこの角棒はサビひどいな。紙やすり使うか。」


粗いやつを使い錆を落とす。まぁ少し残ってるがサンプルだからこれくらいでいいだろう。こいつも曲げて形を作る。


「溶接機借りますよ。」

「お、おいコラ!せめて防塵マスクしろ!!」

「半自動久々だな〜」

「おい!?」

「久々!?」

「な、何を言ってるんですか…?」


周りの目を気にせず片手面を取り、溶接機の電源をつけ、炭酸ガスのバルブを開き量を調整する。今回は仕方ないから8ミリの丸棒使ってるから電流は100Aでいいか。電圧も調整してっと。


「デジタルは楽だな〜。アナログは調整めんどくせえからよ。」

「なんであいつ操作を知ってるんだよ!?」

「アナログ使ったことあるのか!?」


あるよ。つうかボロ工場とか中小とかアナログメインだぞ。電流と電圧が合ってるかは音で聞き分けろとか教わったからな。いやーあの苦労は忘れられねえわ。あのクソ会社デジタル買えよ。楽だしワイヤーの無駄使い少なくなるのに。


「緑川先生…あの生徒は一体?」

「うちの部の1年生としか‥」


顧問同士で話し合っているが無視してようせつをはじめる。仮止めして、別で引っ張られるからハンマーで叩いて修正して2本目の足をつける。溶接部の部員が興味津々に、園芸部のみんなも防塵マスクをつけて俺の作業を見る。


仮止めが終わり、形ができると本溶接に入る。バチバチとなるなる音ともにヒュームがもくもくと浮かぶ。くっせえ。


「ほい完成、端材でできたけどどうっすか?」


サギ箸で掴んで水で冷やし、とりあえず見せる。


「え、う、うん…これならいいけど…」

「ええ‥だけどこれ…」


瀬戸口先輩と緑川先生が顔を見合わせて本気で困惑している。出来いいと思うんだけど。


「このバカモン!勝手に何をやってるんだ!」


溶接部の顧問が怒鳴ってくる。やべ、久々の溶接にテンション上がりすぎた!


「全く…停学ものだぞこれは!保護具着用せず、あまつさえ無断で端材を使い資格もなしに溶接しおって!」


やべ!無資格じゃねえか俺!特別教育この世界にはないんだった!うわ…俺退学だなこれ…やらかしたわ


「まぁ今回は厳重注意と反省文で済まそう。だが見事な溶接だ‥ビードも綺麗だし端材でここまでのものを作るとは…」

「はい…素人が作るには難しい筈ですよ?」

「だな、これは停学させるには惜しい逸材だ…」


いやただ経験あるだけだからな?9年やってりゃ普通だろこんなの!?まぁ高校生だけどさ!


「お前名前は?」

「あー、久川亮介っす。」

「明日から覚悟しろ。夏休みの3日間は無くなると思え、特別教育を取らせてやる。あと罰としてお前は溶接部にも入ってもらう。」


…はい?


「あー、はい?」

「つまり、君は溶接部に入ってもらうってことだよ。園芸部と掛け持ちでね?停学じゃなくなるからいいじゃないか。」

「嘘ぉ!?」

「いや、俺からみても綺麗な溶接だよ。あ、溶接部部長の北山大吾、よろしく。」

「顧問の藤岡遼平だ。よろしくな?」

「なんで勝手に決まってんだ!?」


いやじゃー!助けてくれ!わしは学校でまで3年間も溶接などしとうない!!瀬戸口先輩助けて!


「頑張ってね!」


笑顔でサムズアップしてきやがった!!嘘だろ!?俺溶接部にも入るのかよ!!夏場地獄だぞ!!


「早坂さん!平本先輩!園山先輩!助けてください!清水先輩!中村も助けてくれ!」

「頑張りなさいおバカ、自業自得よ。」

「頑張れよ、応援してるから!」


先輩方が苦笑いしながら見捨てやがった!おい冗談だろ!?まじかよ!おいマジか!?


「頑張ってください…。」

「頑張ってね〜掛け持ちだから忙しくなるよ〜?」

「久川君ならできるよ!」

「ちくしょうめぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


溶接場が爆笑の渦に叩き込まれる。おい溶接部まで笑ってんじゃねえよ!?


「平本先輩、あなたも入部してください!?マネージャーとして!お願いします!」

「資格ないのにできるわけないじゃない。諦めなさい!」

「こんな、こんなバカな話があるか…!」


皆んなして見捨ておって!自業自得だけどな!まぁ停学とか退学にならないなら飲むしかないか。頑張ろ。溶接部

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