第15話 海で遊ぶのが最高すぎて困る。そして海で食う飯のうまさは異常
島村達が楽しんでいるのを背景に俺が浮き輪に腰掛け、ぷかぷかと浮かんでいると早坂がくる。たしか久々に海に来ると言ってたな。早坂も浮き輪を使い、俺のところにパシャパシャとバタ足をしなから来ると俺の真横に止まる。額に水中眼鏡、度入りのをかけて
「泳がないんですか‥?」
「だって楽なんだもの。気持ちいいし。」
いやね、これが楽で気持ちいいのよ。浮かびながら直射日光を浴びる、これ最高。早坂を見ると彼女は少し考えんでいて、ニコッと笑みを浮かべてくる。
「…えいっ!」
「うおお!?」
早坂が笑いながらビート板のように俺の浮き輪を押してバタ足して動かし始める。
「は、早坂さん!?」
「フフッ…驚きましたか?」
俺を押しながら微笑み、無邪気に悪ふざけを楽しんでいる。いつものおとなしく、物静かな早坂さんがこのような行動をすることに驚いた。
「お、驚くわ!予想外すぎる!」
「せっかく海にきてるのですよ…?泳いで楽しみませんか?」
早坂の水飛沫に濡れた笑顔が輝いている。その笑みに流石の俺も顔が赤くなる。やべ、めっちゃ可愛い。天使か?
「OK!それじゃかっ飛びますか!」
「…はい!」
2人で泳ぐ。もちろん浜の近くじゃ無いと危ないから気をつけてるが、互いに笑い合い、早坂が水をかけてきて俺も軽く反撃する。
俺もこんな事は初めてだからついテンションが上がってしまう。海なんて家族としか来なかったからな。
渚さんも平賀達のところでビーチバレーを楽しみ、各組で楽しみ笑い合う。
「あら、もうお昼じゃない。皆ご飯にしましょ?」
渚さんが腕時計を確認して大声で叫んで伝えてくる。飯か、海の家に行くか。全員で海から上がり、女子達の濡れた髪から滴り落ちる水滴が肌を滑り落ち、美しさに男3人は目を奪われる。
「あら、どうしたの?」
一ノ瀬が濡れた髪を片手でかきあげる。その美しい仕草に柊は顔を真っ赤にする。
「な、なんでもないよ!」
「ふふっ、見惚れたなら正直に言えばいいのに。」
一ノ瀬が軽く柊のおでこを小突く。高一とは思えないスタイルの良さと美しさ、そりゃ目を奪われるわ。
「男なら見惚れちまうよ…なぁ?」
「う、うん…」
「さすがにな‥。」
許せ女子達。これは男では勝てんよ。見惚れちまう。スタイルにいい美人と美少女だぞ。どうしろってんだ。
「へぇ〜?」
「ゆ、許せ!と、とりあえず俺と平賀で飯買ってくるわ。食いたいやつを言ってくれ」
「それじゃ焼きそばで!
島村のからかいになんとか誤魔化して俺の提案に全員が頼んでくる。平賀と2人で頼まれたメニューを頼み、全員でシートに座り食事をする。焼きそばうめえ。
「いやー楽しいな。」
「うん!みんなで来れて良かったよ!」
「しかしこういうところで食う飯ってなんで美味いんだろうな?」
「雰囲気じゃねえか?」
雰囲気がいいから飯がうまいんだよ。ほら、祭りの屋台のたこ焼きとか美味いじゃん。あんな感じだろ、多分。
「あーしかし泳ぎ疲れたわ。」
「葵ちゃんと楽しんでたもんね〜久川。」
「あぁ。もうヘロヘロだわ。歳かな?」
「まだ10代なのに何おっさんみたいなこと言ってるのよ。」
「50のおっさんじゃねえんだぞお前!」
一ノ瀬に肩を軽く引っ叩かれ、平賀にも頭を引っ叩かれる。ノリツッコミか!
「痛え!平賀〜やりやがったなこの野郎!」
「バカなこと言ってるからだ!」
ゲラゲラ笑いながら小突き合う。
「しかしまぁ、大人はこう言う時に飲むビールは美味いって言うが、ほんとかもしれんなぁ。コーラやサイダーが上手く感じるんだからよ。」
「ちょっと憧れますよね…」
「お父さんがビール飲んでるの、美味しそうに見えるよね!」
子供の頃ってあの親父がビールを飲んでる姿になんかこう憧れたんだよな。喉を鳴らして飲んで、「カァーッ!」と息を吐いてジョッキをドンっ!と置く仕草、あれになんか憧れたんだよ。羨ましいと言うか、子供にはできないあの仕草。
「美味そうだよな〜。俺ガキの頃真似したわ。コーラ飲んでさ。」
「僕も幼稚園児の頃やったよ!」
「俺もやったわ!」
「確かにやったわね良!」
男3人と渚さんの4人でゲラゲラ笑う。やっぱやる奴はやるよなあれ。
「私のお父さんはあまりお酒を飲まないのでわからないです…。」
「私のお父さんはやるわね。疲れた後の一杯がうまいって言ってたわ。」
「アタシの父さんは飲むのも食べるのも好きだから大変だよ。」
女子の方は意外にもバラバラな反応。確かに大人全員が酒が好きってわけじゃぁないもんな。俺も甘い酒とか日本酒や焼酎はジュースで割らなければ飲めない。たまにビールとか飲んでたけどな。
「島村の親父さん、そんなに食うのか?」
「うん、めっちゃ食べる。食べ放題とか行ったらもう凄いよ?大工やってるからさ〜」
大工か、そりゃ食うわな。俺の知り合いの塗装工とか大工とかめっちゃ食ってたもんなぁ。
「大工か〜。すげえな!職人さんか?」
「うん!昔からやっててさ、今は自分で会社を設立きて、5人くらいでやってるんだ。」
島村の父親に流石に全員が驚く。お前社長令嬢だったんか。しかしまぁ社員を雇えるのはすげえわ。俺なんて管理職や班長になんてなりたくなかったもんなあ。
「よくわからないけど、大手の依頼をうけてるんだって。」
「要は下請けだな。」
「下請け?」
全く、せっかくの海で、波の音を背景に下請けの説明をしなければならないとはな。
俺が下請け構造の説明をする。
「単純に言えば大手企業が「んじゃ8000万の仕事やっからこれ作れ。」って一次下請けに仕事渡して一次下請けが「これだけの金やっからうちの会社はこの部品作れねえからこれ作れ。」ってさらに下の会社‥二次や三次下請けに仕事を発注してくことだな。」
単純に言えばこんな感じだ。ちょっと違うと思うが、勿論もっと複雑だし色々問題もある。まぁ詳しくは書かないがな。やはり全員が目を丸くしている。まぁ高校生が下請け構造を細かく知ることなんてないしニュースでも下請けいじめって単語がたまに出るくらいだからな。
「オービスと言いなんでそんなに詳しいのかしら?」
「漫画知識っすわ。」
「漫画‥ですか…?」
勿論嘘だが漫画のせいにしておこう。いや、下請けはマジで漫画で知ったが。
「お父さん大変なんだね…あとでバイト代でビール買ってあげよっと。」
そうした方がいいと思う。なぜって?俺も働いてからわかった、家賃と車のローン、光熱費や水道代を払うのがどれだけ大変か。嫌いな親父だったが、それを知ると尊敬するもんなぁ。思い出したくもねえ。
「ま、いいんじゃねえか?さて、また海に行こうぜ!」
「そうね、3時まで楽しみましょ!」
一ノ瀬が笑顔で全員を引っ張り、みんなでまた海に向かう。さーて、午後も楽しみますか!




