第13話 初めての高速道路って怖いけど慣れると楽しい。ただオービスだけは勘弁な。
時はきた。海だ。そう、約束の日が来たのだ。そう、海ですよ海。潮風に吹かれ、ビーチは海水浴客で賑わい、カップル、家族連れなど様々な人々が来てますよ多分。
まぁその前に家の倉庫からバーベキューコンロと炭を出して平賀が来るの待ってるのですが。
なんで待ってるのって?そらんなクソ重たいものを持っていけねえよ。そのため俺は家を教えるため近くのコンビニで待っていたのだ。
電車通学なのもあって家に呼んだことないからな。遊ぶのはいつもゲーセンとかだし。
「眠い…」
朝の5時にコンビニの前でエナドリを飲み、小鳥のさえずりが聞こえる中、俺は眠気覚ましをしながら待つ。これでタバコでもありゃいいんだがなぁ。暇つぶしになるのよ、一服。少し経つと車のエンジン音が聞こえる。
「すまん久川、待ったか?」
「まぁな。家はすぐそこだから。」
さて、乗って案内しますか。後部座席のドアを開ける。
「すいません、久川です、今日はよろしくお願いします。」
「弟から聞いてるよ。私は平賀渚、よろしくね。」
うん、固まりました。スッゲェ美人。だと思ったよ。弟がイケメンなら姉も美人ですよね。しかも美人の一ノ瀬超えてやがる!しかもでけぇ、何がとは言わんが。いやー眼福眼福。
「おい久川…」
「すまん、あまりにも美人すぎてな。反則だろおい。こんなの逆転サヨナラ満塁ホームランですよ。」
「なに言ってんだお前は!」
「いやもう別嬪すぎてね?」
「アホ。」
やめてその顔、泣きたくなるから。バカみてえじゃん僕。まぁいいや。お姉さん、笑わないで?アホみたいだから。
「他の奴ら拾いに行くんだろ?」
「ああ、コンロを乗せたら次は柊だな。あ、平賀さん、案内しますんで。」
「ええ、ありがとう。…狭い道じゃないわよね?」
あー、取り立てだから細い道苦手か。気持ちはわかる。農道とか怖えもん。カーナビで車1台しか走れてえ道路を表示されて仕方なくそこ通った時、対向車が来た時の絶望よ。
「大丈夫っすよ、すぐそこですし。」
本当に車で2分くらいの距離なので平賀の姉も安堵する。俺と平賀でコンロと炭を載せ、俺の着替えと水着を入れたリュックも載せる。
カーナビを設定し、全員の家や待ってる場所に向かう。渚さん、柊と早坂を見てすっげえ喜んでるけど。いやまぁ可愛いけどさ、男の娘だもん。早坂さんのことお人形さんみたい!って可愛がってたぞ。可愛いもの好きなのかアンタ!
テンション高えなおい。
向かうキャンプ場の場所を設定する。車って便利だよなぁ。
「それじゃ行くよー。」
高速で3時間だからな。ゆっくりしましょ。
ETCだからスムーズに行ける。
渚さん、初めての高速なのだろう。少し緊張しているな。
「左車線走ってれば大丈夫っすよ、煽り運転してくる猿はすぐ右車線に行くんで。多分」
「え、ええ。」
高速道路は最初は怖いが実際は早く走るだけの有料道路と思えば簡単だからな。
まぁまだ高速には入ってないが。
「あの、ちょっとコンビニに停めてもらってもいいですか?飲み物買いたいので。」
「わかったわ、皆んなも買ってきていいからね?」
サンキュー一ノ瀬、俺も飲み物欲しかったから助かるわ。それに…
「大丈夫か歩夢。体調悪そうだぞ?」
「ご、ごめん。酔ったかも…」
歩夢が酔ったのだ。ぐったりとシートにもたれつき、額には冷や汗が滲み、息苦しそうにしている。休憩させないと吐くぞこれ。間違いなく吐くぞ。
「大丈夫?すぐ近くのコンビニに停めるからね。」
渚さんがコンビニを探す。俺が柊を落ち着かせるために「深呼吸しろ、いいな?」と話しかけ、一の瀬に「すまん、窓を開けてくれ、新鮮な空気を入れる。ちょっと暑くなるが我慢してくれ。」と伝えて窓を開けてもらう。
少し時間が経つと柊の呼吸が軽くなってくる。お、あと少し先にコンビニあるじゃないか。とりあえず柊はおろしてゆっくりさせようそして水飲んでガム噛ませるか、ミント味のやつ。
「とりあえず水でいいか…お茶は…うん、便所行きたくなるからやめるか。」
「私も水にしますね‥。柊くんのも含めて3本買いましょう…」
「だな。」
水を買い、柊に飲ませる。
「皆んなごめん‥」
「大丈夫だよ!そんな気にしなくていいから!」
「ええ、誰も迷惑なんて思ってないわ。」
柊が申し訳なさそうにしているが誰も気にゃしてねえさ。後部座席って酔うもんな。大人になってからずーっと運転ばっかだったから忘れてたよ。
5分くらい休憩し、また車に乗る。さて、高速に乗るんだな。何も起こらなきゃいいけど。
10分後、ETCレーンを通り高速に乗る。いやー高速から見る景色って綺麗だよなぁ。景色が山だけだと退屈だけどな。前世で実家から京都まで9時間かけて高速で行ったことあるけどいやー死ぬかと思った。景色は殆ど山しかなくて退屈だったもんなぁ。音楽聴きながら言ったけどスマホ接続のやつだからラジオ聴きながらマップ使えねえし。…よく1人で行けたな俺。
「どうしたの久川君?」
「どうしたの久っち。」
「いや懐かしさにふけた。」
言えるか!自分の運転だけで某県から京都まで行きましたなんて。
しかもぼっちで行ったなんてよ!
しかし高速に乗ると80キロって遅く感じるよなぁ。100キロとか出すよな普通に。あ、前の車が遅いんだな?すかさず俺は後ろを確認する。
「すいません、下の名前で言いますが渚さん、今のうちに追い越してください。後ろはいないっす。」
「え、ええ。」
ウインカーをつけて左車線に入る。やっぱ緊張してるな。弟の友人たちを乗せてるから仕方ないが。
「よし、だいぶ追い越したので左車線に。」
「わ、わかったわ。」
(…なんで冷静に指示できるのこの子?)
渚は内心不思議に思いながら左車線に変更する。
「このまま90キロをキープしてください。今あのクソ忌々しいオービスの標識見えたんで。煽られても無視してください。」
「嘘!?」
自動速度違反取締装置の予告標識が見えたからな。100キロくらいなら大丈夫だと思うが念には念をだ。
「久川君…オービスって何ですか?」
「久川、何だそれ?」
早坂と平賀の質問に全員が俺を見てくる。まぁ免許もってなきゃ知ってる訳ないよな。
「まー大雑把に言えば速度超過しすぎると撮ってくるカメラ。これに撮られると一発免停、罰金&学科を1発でクリアしないと取れないおまけ付き。」
「あれ?だけど10キロオーバー…」
「その心配はない。国だってそこまで細かくは見ないからな。速度超過でも悪質なレベル、30〜40キロオーバーとかじゃないと撮ってこないからな。そんなことが書いてあるのをネットで見たからな。」
まぁあくまでそう見ただけだから本当かは知らん。厳しいところはマジで厳しいって聞くし。
まぁオービスのことを説明したあと、1時間は走っている。
まぁしかしあれだ、車の中って雑談タイムになるよな。
「ねえ亮介君、前から思ってたんだけど、子供の頃から戦争物が好きって言ってたけど、その、特撮ヒーローとかは見なかったの?」
「確かに、俺も子供の頃は見てたよ。柊も見てたのか?」
「うん、ほら、僕力が無いから憧れてたんだよ。強くなりたいなって、子供の頃憧れてたなぁ。」
柊と平賀、可愛らしいこと言ってるじゃ無いの。
「私も子供の頃はヒーローとかじゃないけれど魔法少女とか見てたわね。」
「アタシも!アニメとかだけど子供の頃はお姫様が出てくるやつとか見てたな〜」
「私も見てました‥。久川君は?」
3人も似た感じか。まぁ子供の頃ってそう言うのに憧れるよなぁ。けど俺は憧れなかったよ。
「俺は正直に言うと無かったな。」
「あら、どうしてかしら?」
「何だろうな、どちらかと言うと軍と軍のやり合いとかドンパチを見てる方が好きでな。」
平賀が「お前子供の頃からそんなの見てんのか!?」という表情をしてくる。柊と一ノ瀬は知っとるぞ。
まぁなんだ、ヒーローとか正義の味方ってのはどうも性に合わなくてな。あと1人から5人くらいに対して相手は巨大組織みたいなやつ。同じ人数同士や集団戦が好きなんだよな。
「まぁガキの頃偶然SF戦争ものを見てな、特撮ヒーローからすぐにそっちにいっちまったんだよ。」
「珍しいな、ヒーローとかに憧れないなんて。」
「まあ同じ人数でやり合ってたり、大軍同士の戦闘の方が好きだったからな。」
「なるほどなぁ」
ま、きちんとした殴り合いの方が好きってこったな。俺たちが雑談していると渚さんが「あっ!」て叫んだ。
「ごめん!通り過ぎちゃった‥」
「大丈夫です。次のところで降りても大丈夫ですよ。カーナビが指示しますんで。高速は焦らず、ですよ。今のうちに左車線に。」
俺が冷静に指示し、渚さんが頷く。左車線に入る。あ、渋滞してる。
「平賀、悪いけどハザードつけて、そこの三角マークのボタン。」
「あ、ああ。これか?」
平賀がハザードランプを押す。渋滞を後続車に教えるためだ。
「久川君、なんでそんな詳しいの?免許ないよね!?」
「親父の運転見てたんで。教えてもらってたんですよ。」
勿論嘘だ。元の世界で高速に乗りまくったからな。友人としょっちゅう首都高走りに行ったり他県に遊びに行ってたからな。
(詳しすぎませんか‥?)
早坂がジト目で見てくるがなんで?まぁ気にしないでおくが。
高速を降り、数キロ走ると海が見える。
「おおー、綺麗だなおい!」
「ええ、いい景色ね。早く泳ぎたいわ。」
「だね!しかもキャンプ場の目の前なんでしょ?楽しみー!」
海を見るとテンション上がるなおい。おれ海無し県育ちだから。まじで。単車で海沿い走った時気持ち良かったもの。この世界でも中型取ろう。んでネイキッドタイプを買う。
「あーこの海沿い単車で走りてえなぁ。」
「久川くんバイク乗りたいの?」
「歩夢よ、当たり前だろ?俺そのためにバイト始めたんだから。最初は怖えけど楽しいぞーバイク。転けたら運が悪いと大惨事だけどよ。」
「ぼ、僕はいいかな?」
「ですよね〜。」
俺の返答に全員が笑う。バイクいいのになぁ。前世で乗りまくったから分かるのよ。
「そろそろ着くわよー。」
お。キャンプ場が見えた。目の前に海水浴場のあるオートキャンプ場が。
駐車場に停めると渚さんが管理棟に入って受付をしに行く。さーて…楽しみますか!




