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第13話 アルバイトって楽なところはとことん楽

アルバイトを始めて1週間が経った。早坂は裏方作業をやっているがラッピングやフラワーアレジメントをテキパキとやっている。


「いや早坂さんすげえな、俺はできる自信がねえよ。」


水やりをしながら早坂の作業をみてつい呟いてしまう。


「ありがとうございます…。楽しいくて、夢中になっちゃいますね。」

「初めてやったとは思えないよ。お父さんも褒めてたしね。」

「はい…資格の方も取ってみたいです。色々勉強して、スキルに役立てて…」


優しい手つきで作っていく。瀬戸口先輩と親父さんが微笑みながら見つめ、俺は教わった通り根切りや水やりをやる。冷てえ。おや、客が入ってきた。


「Excuse me, do you have marigolds? Also, asters and red roses?」


英語でなんかの花が欲しいと言ってきたが、薔薇しかわからん。先輩は困惑し、親父さんも「えーっと‥」と言いスマホを取り出して通訳アプリをだそうとする。すると早坂が立ち上がる。


「Here you go... The red roses and marigolds are here, and the asters are over there.」


俺でもわかるほど流暢に伝えて流石に驚く。マジか!?早坂がメモで伝え、親父さんが頷き指定された花を売り、瀬戸口先輩と俺で顔を見合わせる。


「え、英語喋れるの‥!?」

「すげえな。俺全然わからんぞ。」

「その…英検2級持ってるんです。中学生のころ英会話教室で習ってたので。」


少し顔が赤くなりながら、だが嬉しそうに語る。いや大したもんだ。俺なんて多分okとかyesとかしか言えねえ。


「通信士目指せるぞ‥いやほんと大したもんだ。俺なんて馬鹿だからわからねえや。」

「近いうちに教えましょうか…?」

「お願いします早坂様。英語はできませんので。」

「久川君敬語になっちゃったね。」

「そりゃなりますよ。タメ歳で英語ペラッペラでクラス1位とか勝てませんよ。俺成績表、数学と理科と英語2だったんすよ?ほかは3。」


勉強しなよ。そんな目で瀬戸口先輩が見てくる。やめて、泣いちゃうから。前世でも勉強苦手だったんだから。


「…久川君もすごいですよ‥色んな人とすぐ仲良くなれて、色んな場所を知ってて…」

「…色々あったからな‥」

「…え?」


早坂、俺はお前と違って頭の悪いダメ人間だったんだよ。ただ、なぜかわからねえが人生をやり直せただけだ。おや、配送が来た。


「すいません、こちらにサインをお願いします。」

「あーはいはい。ご苦労様です〜。」


親父さんがサインする。園芸用の土と様々な野菜や花の種。鉢とかだ。土は2.5キロだが数が多くて結構重いからな。俺に任せろ。


「土は任せてください。」

「ああ、頼むよ。」


全てを台車に乗せて中に入れる。こちとら鉄鋼やってたんだ、こんなの軽いもんよ。

力仕事なんて前世でやってたからな。余裕余裕。

しかし気になってるんだが、花屋って個人経営は結構売り上げとか捻出とか大変と聞いたことあるんだが、よくバイトを雇えるな。

冠婚葬祭とか、他にもよく知らねえが旅館やホテルにでも卸てるのか?


(ホームセンターとかならともかく個人経営ですげえよな‥。親父さん…やり手なのか?)


考えながら作業をしていく。台車から5リットルの土をどんどん下ろして棚に置いていく。

ま、他人の家の事を深く考える必要はねえわな。


19時、アルバイトが終わり、タイムカードを挿して帰宅する。

翌日、休みなのだが部活の水やり当番があるので12時ごろに学校に向かう。時間は自由なので。水をやり、少しだけ雑草を引っこ抜く。


「あ、久川君、部活なの?」

「まあな。柊も部活か?」

「うん、今終わったところだよ。」


柊がしゃがんで俺の雑草抜きを見てくる。


「どうなんだ?棋道部の方は。」

「楽しいよ。僕は将棋だけど、結構勝っててさ、練習試合とかじゃないけど近くの将棋クラブとかいってるんだよ。」

「楽しそうじゃないの。こっちは炎天下の中雑草引っこ抜きよ。まぁ楽しいけどな。花や野菜を育てるのも悪くねえもんだ。」

「へぇ〜。あ!そういやバイトの方はどう?慣れてきてるの?」

「おうよ、俺は水やりとか根切りやってるんだけど早坂さんすげえぞ。英語ペラッペラでよ。裏方作業を黙々とたのしんでやってらぁ」

「ん?英語?」


せっかくなので昨日のことを話す。あの流暢な英語は本当にすごかったからな。


「やっぱ早坂さんすごいなぁ。久川君も英語喋れるようになったら?」

「あー無理、天国行っちまうよ。さて、俺着替えてくるから少し待っててくれ、帰るからよ。」


私服に着替える。作業着で帰ったら間違いなくあかんからな。周りの目線が。


「飯でも食いに行かねえか?今度のことも話したいしな。」

「うん、いいよ!」


駐輪場に向かう。お、一ノ瀬もいるじゃねえか。


「一ノ瀬さんも部活の帰り?」

「ええ。今日は生花よ。柊君と久川君も?」

「まぁ俺は水やり当番だから来ただけだけどよ。これから柊と飯食いに行くんだよ。今度の海のこともあるしな。」

「あら、私もいいかしら?この後暇なの。」

「せっかくだし皆んな誘ってみる?ファミレスで話そうよ。」


柊の提案に賛成し、3人にメールを送る。あっさりとOKが出たのでファミレスに集合し、中に入って適当に頼む。


「んで、来週全員で海行くわけだけどよ、平賀、大丈夫なのか?車。」

「ああ、姉さんが運転してくれるよ。ミニバンだからみんなの荷物も乗るぞ。免許取り立てだし、高速乗るの初めてらしいけど。」

「ちょっ…それ大丈夫なの!?」


島村が流石に困惑し、平賀に確認する。高速教習以来かよ!?マジで大丈夫か!?しかもミニバンは難しいだろ。いやまぁ乗せてもらうから文句は言えないけど。


「大丈夫だ、多分。」

「ま、まぁ文句は言えないからな。ガソリン代はみんなだそうな?」

「は、はい…。確認なのですが、持っていくものは着替えと水着だけでいいのですか?」

「ああ。テントとコンロは俺が出す。平賀に車出してもらうからな。」


平賀は車、俺はバーベキューコンロを用意する。お袋と親父に話したら快く準備してくれるといってくれた。もちろん炭もだ。


「それじゃ私達は具材を用意するわ。」

「うん!色々買わなきゃね!」


ランチタイム、多くの学生や家族連れが賑わうファミレスで俺たちも盛り上がる。みんな部活やバイトで忙しいが学生生活ってのは長いようで短い。だからこそ、この青春を味わいたい。

ポテトをつまみ、メロンソーダを飲む。いつだって友人達と一緒にいられるのかもわからない。1年なんてあっという間だからな。


「こう言う青春、送りたかったよなぁ…。」


頬に手をつき、外を眺め、誰にも聞こえないように呟く。友人なんてできなくて、学校いきゃいじめられる。そんな人生だったからな。数少ない友達も、高校や専門学校を卒業したら会わなくなる。それが当たり前かもしれない。社会に出たら出たで、安月給で、残業しないと稼げない。そのくせ難しい仕事と責任だけは押し付けられる。そんな人生を生きたからこそ、だからこそ、あいつらとの仲は大切にしたい。


「楽しい学生生活…か。」

「久川君‥?」


早坂だけは俺の呟きに気づいていた。俺を見つめてくるが、俺が気にすんな。と言うと困惑した表情を浮かべるが頷く。

持っていくものや食材も決まり、部活やバイトの話で盛り上がる。


「そういやバイトの方はどうだ?クレーマーとかいるか?」

「いや、いなくてよかったよ。たまに怪しい客来るけどな?」

「大変だな平賀。」

「アタシのところも意外と普通かな。まぁクレーマーが来たら店長が対応してくれるしね。一度だけ度が過ぎた人が来て警察に対応してもらったんだって。」

「け、警察を呼ぶんだ‥接客業は大変だね。」

「前俺が話したが、それだけタチの悪い奴がいるってことさ。」


他愛もない世間話をしながら、食べ終わるとファミレスを出てカラオケやゲーセンで遊ぶ。クラスの同級生達と出会ったり、部活の先輩と出会ったり…。最高だよ。

夕方、それなりに暗くなり、別れ、俺は駅に向かい電車に乗り、帰宅する。








帰宅して早坂は考えていた。机に座り、勉強をしながらも思い出してしまう。


「…久川君、なんであんな悲しそうなことを言うんだろ…」


青春を送りたかった。楽しい学生生活を送りたかった。それはまるで大人が人生を後悔しているような、そんな呟きとしか思えない。アルバイトでも色々あったと呟いていた。まるで経験しているようなことを。


「聞くのは野暮だよね…。」


本人は知られたくないのかもしれない。いや、聞いたら多分嫌な顔するだろう。だが気になってしまう。

うん、今はまだ考えないでおこう。他人を詮索するのは良くないから。

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