第1話 天使×2との出会い
⭐︎登場人物
・アーライト・ルチア
黒髪、桃色の瞳
・レイン(双子の姉?)
プラチナゴールド、碧眼
・スイ(双子の妹?)
パープルゴールド、碧眼
身も凍えるような、深々と降り積もる雪の日のことだった。暖かい暖炉の前で幼い私は絵を描いていた。
黒髪に暖炉の光が映り込み、少女を神秘的に映す。
宵闇のように真っ黒な髪は外に降り積もる淡い雪のような肌に映えて、人形のように美しい。何より、その桃色に染まった瞳に吸い込まれるような引力を感じさせる。
「お嬢様はいつ見てもお綺麗だけれど、黙って絵をお描きなさっている姿はいっそ神々しいわ……」
「同世代の子どもたちは落ち着きがないってのに、やっぱりお嬢様は特別なのね」
「……崇めたい」
使用人たちが部屋の扉の隙間からこそこそと見守る中、少女は黙々と筆をすすめる。
まだ昼間のはずなのに外は曇っており、薄暗い。時折り、窓ごしに曇天の空を憂げに見つめながら少女は、心のどこかできっと予感していた。
(今日の夜ご飯はオムライスね……!)
少し表情筋を動かすのが苦手で、ぱっと見は深窓の姫と見間違えるような少女であったが、中身は外見とかなり違っていたのだった。
ちなみに先程の予感は全くの見当違いであったが、あながち間違ってもなかった。
まさか天使が二人も舞い降りるとは、だれにも想像できなかっただろう。
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(やばいやばいやばいめっちゃかわいいんですけど?
は?天使か?天使だよな?)
簡潔に言おう。ルチアは混乱していた。
父であるアーライト侯爵に呼ばれ、執務室にやってきたルチアの目の前には金髪碧眼の少女が二人、いや天使が二人少女の前に立っていた。二人ともよく似ていて、この世のものとは思えない程の美貌だ。外は曇天だと言うのに後光が差して見える。
「……ルチア」
よく見ると髪の色と質が微妙に違う。一人はプラチナゴールドでふわふわしている。もう一人はパープルゴールドでサラサラしている。
(私としたことが……。許せないっ……)
ぐっと拳を握り締める。
「……ルチア?」
(あぁ、もうどうしよう。このままこの拳で自分を殴りたい気分だわ。でもまだこの子たちを見ていたい……)
「ルチア??」
「なんでしょうお父様?」
「ははは。やっぱりルチアは気になると思ったんだ」
「お父様、この子たちは一体……?」
らんらんと目を輝かせる娘に侯爵である父は、目を細める。
「ルチアの新しい双子の妹たちさ。自己紹介してもらおうか」
すっと視線を少女たち、いや彼女曰く天使たちへと移す。
「双子の姉のレインです。妹共々どうぞよしなにして下さいませ」
プラチナゴールドふわふわ天使が、こちらへ礼儀正しくにこやかに挨拶をする。蒼い瞳とぱちりと目が合うと一瞬間が空いたが、控えめに微笑まれる。
(きゃわわ…………)
「双子の妹のスイです。よろしくお願いしまぅ」
かんでしまったようで、頬が赤く染め、上目遣いでこちらを見つめてくる。
(ぐぅかわっ……………)
黙って生きていることへの幸せをかみしめていると、
「……ルチア、ルチアも二人に自己紹介するんだ」
父に催促された。少し恥ずかしい。
「初めまして、アーライト・ルチアと申します。私のことはぜひ姉様と呼んで下さいませ」
にこり、と照れたようにルチアは笑った。
その瞬間、その場の時が止まったようにしん、となった。
父は目を見開いたと思うと頷いているし、双子の少女……あぁ、(彼女曰く)天使たちは凍りついたように微動だにしない。ルチアとは言うと双子の天使たちを興味深そうにじっくりと見て、いや観察している。
(質素なドレスに少し髪も傷んでいる。あまり環境がよくないところにいたのかしら。でも育ちは良さそうね。所作が洗練されているし気品が感じられる)
じっと桃色の瞳で見つめられ、天使たちは動揺する。
(ということはうちは一応侯爵家、何かしら訳アリの可能性が高いわね。どこぞの貴族の落とし胤か、亡国の王族まではいかなくとも親族はありえるわ)
ルチアは聡明であった。年の割に機転もきくし、知能も高い。マナーだって完璧で、まさに才色兼備のお嬢様。ただ、表情筋が死んでること以外を除けばだが。
(あぁ、もうほんとに可愛い。尊死しそう)
双子の姉妹たちは不安なのかルチアと目線も合わせず震えている。
(今まで粗悪な環境に耐えてきたのに次は隠し子だのなんだのと世間で晒されて、辛いめに合ってしまうのが不安なのね……。私がこの子たちを守らなきゃ)
ルチアはコツと、一歩双子の天使たちへと歩み寄り、ふわりと一礼ののちこう述べた。
「あなたたちのことを一生守ると誓うわ。そして、絶対にあなたたちのことを幸せにする」
使命感と守護欲と芽生えた義妹愛に駆られ、出会った初日、真剣にプロポーズまがいの爆弾発言をかましたルチアだった。
初投稿なのでふつつかものですがよろしくお願いします。
投稿頻度遅めです。