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 絵になるな。と天寿は思った。

 もちろん、こんなにじっと見ているつもりはなかったのだけど(失礼だとわかってる)いつのまにか、気がつくと、天寿はずっと自分の前に座っている少年の本を読んでいる姿に(ぼんやりと大好きな本を読むことを忘れて)見惚れていた。

 ずっと見ていても全然飽きなかった。(と言うよりもずっと見ていたかった)

 少年はとてもかっこよかった。

(帽子をかぶっているのが、もったいないなと思った)

 雨雲に遮られているはずの、あるはずのない、差し込む明るい太陽の光が、(きらきらと、天寿の空想の中で)まるで少年を照らしているようだった。

 本をめくる指の動きが綺麗だった。

 文字を追う目が美しかった。

「あの、すいません」

 と少年が天寿を見て言った。

 少年の声は思っていたよりも低かった。そして、とてもかっこいい声だった。

 天寿は無言。

 少年の声のことばかり考えていて、返事をすることを忘れていた。

「僕、なにか変ですか?」と少年は天寿に言った。

「え?」その少年の声でようやく天寿はいつもの天寿に戻った。

 その瞬間、天寿の顔は真っ赤になった。

「あ、いえ。すみません!」と天寿は少年に真っ赤な顔のままで少し大きな声を思わず出してしまって(図書館の中なのに)謝った。

 すると(いつもお世話になっている)図書館の女性がこちらを見た。

 天寿は図書館の女性と目と目があって、頭を下げて、大きな声を出してしまったことを謝った。

 天寿が少年を見ると、少年はまた時間が止まっているかのように、元の姿勢で本を読んでいた。

 でも、よく見ると少年の手は小さく震えていた。

 顔も少し震えている。

 それから少しして、ようやく天寿は少年が必死になって『笑うこと』を、こらえているのだと気がついた。(そしてまたその顔を真っ赤にした)

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