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王宮に棲み憑く者

私は、この王国の側妃ロゼット。

私の実家は王国でも指折りの公爵家でして、この国の皇太子だったアルマンド様とは幼い頃から婚約者として愛を育んでおりましたの。そう…あの忌まわしく、下品な女リシャールが現れるまでは。


なぜ高貴な私が、アル様と幼少期から愛を育んでいた私が側妃などという座に収まっているか‥。それもこれもね、全てあの女のせいなのです。


リシャールとかいう名前の下卑た女は、ある男爵家の庶子でしたの。けれどある日、とてつもない神聖力を発現させたとして、聖女として私やアル様と同じ年に学園に入学しましたの。


ですがね、あの女は聖女なんて大それたものではなくってよ。皆様騙されているようだけれど‥あの女は神聖力ではなく魅了という禁忌の魔法で周りを騙して籠絡して、自分の思う通りに動かしているだけ。そうでなければ、あんな汚らしくて、大した作法もなってない女にアル様が目をかけるなんて事あるはずないのですから。


私は、皆様にちゃんと事実を訴えかけました。何せそんな禁忌に手を染めた危険な存在が、この国の未来を背負うアル様に近づいているのですから。……けれど、皆様魅了の力に飲み込まれてしまったのでしょうね。誰も私の事など信じませんでしたわ。


遂には、私が聖女に嫌がらせをしているなんて冤罪をでっち上げられて婚約破棄まで言い渡されました。何とかお父様が、説得をして下さって…私達の結婚と同時に陛下はアル様に王位を譲られ、結局私はアル様の側妃となり、あの女は私を差し置いて正妃となりました。


アル様も皆様も、あの女に騙されているだけなのです。そうでなければおかしいのです。


私は、それでもアル様の事を心の底から愛しておりました。ですから、側妃としてまずは懸命に仕事をし、アル様のおそばに常にお控えする事にしましたの。そうすれば、きっとアル様も真実の愛によって目が覚めるでしょう。


最近私、アル様を見ていて気付いた事があります。

立場が人を作るとはよく言ったもので、アル様の顔立ちが皇太子時代より精悍で凛々しくなった気がいたしました。王としての威厳が備わりつつあるアル様を支える為にも私、もっと頑張って、そしてあの女を排除しなければなりませんね。


側妃である私は、毎日毎日地味な事務作業に追われるばかりで、行事にはいつもアル様は横にあの女を侍らせて私は壁の花。元々、この国屈指の公爵家の令嬢で、今は側妃とあってか誰も、私に声をかけてくれる者はおりません。私は、王宮でひとりぼっちなのです。もう随分、お父様にもお会いできていませんわ。


そんなある日、いつものように事務作業をこなしてアル様の後に続いて王宮を歩いていましたら、何やら不気味な視線を感じました。じっと私だけを観察するような気味の悪い視線です。そんな視線をここ数日ずっと感じています。


ある日、侍女達がこんな話をしているのを偶然耳にしてしまいました。

何でも、この王宮には、何代か前の王の時代から人間でないものが棲み憑いているとか。普段なら、そんなくだらない噂、信じませんでしたが…その話を聞いた時あの不気味な視線が脳裏にふと思い出されました。


それから数日して、私はアル様とお茶を共にする機会がありました。最も今は王妃であるあの女の嫌がらせのせいで私の席は用意されていなかったのですが…。侍女に席を持ってくるよう言おうとした時、不気味な視線を感じました。私は、侍女に言いつける事も忘れ、その視線の主を探しました。

そうして、私はやっと視線の主である男を見つけたのです。


その男は今まで見た事ない男でした。前髪で目が隠れて何とも言えない暗い雰囲気を漂わせている男でした。

ただ彼は、私が存在に気付いても気にせず、じっと私の事を見ていました。私も、流石に気味が悪かったのですが、あの噂を聞いてから誰かに言うのも恐ろしくて、誰にも言えずにいました。


けれど、変わった事があります。

彼は、私が存在を認識してからというもの、私をなぜか憐れんだ目で見るようになりました。目は隠れて見えないはずなのに、なぜかそんな気がしてなりません。

それから、彼は私の事務机に花を置くようになりました。本来ならば、注意するべきなのでしょうが、その花は私が大好きな月下美人。彼が、この世の者でないにしても、この世界で彼だけが私を見てくれている気がして、ただ私は置かれる花を眺めていました。


きっといつか、アル様がこの花を私に贈って下さる事を願って。






後日、この話の後日談のようなものも投稿する予定です。


不気味な彼の正体が分かる…かも

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