表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろうラジオ大賞5

無能な私、守護精のたまご 未だ孵化せず

作者: 夜狩仁志

小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。

テーマは「たまご」です。

 この世界で私達は、卵を一つ抱えながら誕生します。

 成長するに伴い卵も育ち、ある時“守護精”が孵化(ふか)します。

 守護精によって人は能力が付与され、様々な才能が開花するのです。


 そのため私達は卵を孵化させようと勉学に励むのです。


 もちろん私にも卵が。

 何が産まれるのだろう?

 期待を胸に学園で様々なことを学びました。

 でも何をやっても孵化しません。


 才能がないまま一生を終えてしまうの?


 同い年の子達は次々と……


「私の守護精様、可愛いでしょ。私ね、ダンスの素質があったみたい!」

「素敵ね、似合ってるわ」


「俺の卵が孵化してさ、剣術の才能だったぜ」

「おめでとう。毎日稽古、頑張っていたものね」


 でも私だけ……

 もう二十歳なのに卵のまま……


 私だけ取り残され、周りからは白い目で見られる日々。


 卵が孵化しない、失くした者は能無しと蔑まれ、奴隷のような扱いを受けます。


 このままでは私も能無しに……



 そんなある日のこと。


「大変だ! 黒龍が現れたぞ!」


 黒龍とは卵を好物とし、子どもごと食い尽くす恐ろしいモンスターです。


 街は騒然とし卵を抱えた子たちが教会へと避難します。

 そこへ私も逃げようとしますが遮られます。


「数に限りがある。お前はもう孵化しないだろ?」

「そうだ、お前が囮になって黒龍を遠ざけろ」


 そう……

 もう私の居場所は無いのです。

 私一人犠牲になって皆の未来が救えるのなら。


 そう思い、自ら生贄(いけにえ)に。


 迫り来る黒龍はとても恐ろしく足が震えましたが、街から離れるように逃げます。

 でもすぐに追い付かれ……


 このままでは食べられる!


 そう思った時、


 今までなんの変化もなかった私の卵が光輝き?


 中から美しい赤と青の二匹の(ドラゴン)が!?


 〈今まで育ててくれてありがとう。僕は勇気の龍〉

 〈私は慈愛の龍〉


 〈勇気と慈愛は育つのが遅いんだ〉

 〈しかも双子で2倍。今まで諦めないでくれてありがとう〉


 本来一人一つの守護精が二つも孵化?

 しかも勇気と慈愛の才能!?


 二匹の龍は難なく黒龍を倒しました。


 その後、街の人たちが教会へと集まり、


「大丈夫だったか?」

「うん、お姉ちゃんが二匹の龍で退治してくれたんだ」


「ま、まさか……」


 私はそのまま何も告げずに街を去りました。


 まだ世界には自分の才能が孵化しないで苦悩する人達がいるはずです。

 彼らを励ますためにも、私は世界を旅することに決めたのでした。


 大丈夫です。

 心配いりません。

 不安もありません。


 だって、私には勇気と慈愛の頼れる龍が、二匹も側にいるのですから……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ