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女神の愛猫〜神獣リーゼロッテの日々徒然  作者: 天宮カイネ
第1章(序章) 生活基盤構築編
4/10

1-4 拠点作成




 迷宮を出た私は、そのままベレドナ大森林へと足を向けた。最初に大森林から街へ来た時と同じく、《隠密》をかけた上で《飛翔》の魔法で空を往くことしばらくしてーーー大森林の中心部と思しき高台を見つけて、そこの中央に降り立った。


「ふむ?ここだけ樹木が全く生えていないわね?…隕石でも落ちたのかしら」


 高台の中央はクレーター状というか、すり鉢状になっていた。高台の周囲は隙間なく緑で埋まっているのに、ここだけぽっかりと穴が空いているようだ。

 そこの中心、つまり一番低くなっている場所に土を魔法で盛り上げて固めて、"土台"を作る。何故わざわざこんなことをしているかというと、最終的に住居の周りを水で満たして、湖を作ろうと思い立ったからだ。イメージはカルデラ湖のような感じだ。ここは火山じゃないけれどね。


「土台は広めに作って…真ん中に大樹を植えようかしら。土を木の根で留めるように…。それで、大樹の枝の上にツリーハウスを建てれば良い感じよね」


 どうせ私の一人(一匹?)暮らしだし、家は小さくて良い。肝心の大樹は…迷宮から調達してこよう。確か最下層に、かなり大きな木が生えていたはずだ。ついでに湖を作るための水も迷宮で確保してこようと思う。容量無限の《ストレージ》があるからこその荒業である。


「とはいえ、ここから迷宮までを行き来するのは大変よね…魔法でどうにかならないかしら?」


 例えば……そう、"空間転移"の魔法とか。ただ、単身で転移するのは事故が怖いので、空間を繋ぐ"門"のようなものを作りたい。


「試しに……《転移ゲート》。…あ、出来た?」


 わりと適当に思いつきでやってみたら、出来てしまった。開いた空間の向こう側に広がっているのは、思い描いたとおり迷宮から少し離れた地点の風景だった。遠目に迷宮の門が見える。何故こんな位置にゲートを開いたのかというと、単に人に見られたくなかったからだ。

 ともかく、これで行き来の手間は省けたので、さっそく迷宮の最下層へと迷宮内の『転移魔法陣』で向かって…襲ってきたボスを倒した。そういえば居たんだった。


「すっかり忘れてたわ…まあいっか。大樹を回収しましょう」


 魔法で根を丁寧に掘り起こしてから、大樹を《ストレージ》にしまい込む。幹の直径が60m近くはあった大木だったのだけど…するっと入ってしまった。


「…次は、湖の回収ね。確か45階層辺りだったはず……湖の回収って文字列にすると頭オカシイわね」


 セルフツッコミを入れつつ、私は45階層へと向かった。そこにあった大きめの湖の、中央付近に《飛翔》で飛んでゆく。

 そして、透明度の高い湖の底に《ストレージ》を大きく開いた。


「…うわぁ……」


 自分がやったことだけど、これはヒドイ。《ストレージ》の白い裂け目に、水が渦を巻きながらぐんぐん吸い込まれてゆく。なお《ストレージ》には植物以外の生き物は入らないので、最終的に枯れた湖の底には魚などの生き物が取り残されていた。う、うわぁ………せっかくだから食用の魚だけ締めて回収していこうかな。




 さて、住居予定地に戻ってきた私は、まずは土台に大樹を立てることにした。根の部分を土台に埋め込み、《成長》という"植物を成長させる"魔法をかけて根を深く張らせた。よしよし、これで大丈夫ね。

 次は、湖の作成だ。土台の根元辺りの高さに水を取り出すイメージで、《ストレージ》を開く。するとまるで滝のような勢いで水が溢れてきて、あっという間に湖が出来上がった。いまはちょっと水が濁っているけれど、時間が経てば綺麗な湖面になるはずだ。


「あとは、本命のツリーハウスね。景色を楽しみたいから、枝が混み合ってない場所に建てましょう」


 とはいえ、大樹は本当に大きいので、一番下側の太い枝でも100mを超える高さにある。私は《飛翔》でその辺りを飛び回りつつ、建築予定地として2本の太い枝を選んだ。そして《製作》を使って、低い方の枝に『リビング、キッチンダイニング、書斎』のスペースを含んだ建物を建て、高い方の枝に『寝室、浴室、簡易キッチン』のスペースを含んだ建物を建てた。なおそれぞれの建物の幅と奥行は約10m四方の正方形で、高さは約5mほど。見た目は完全にお豆腐のような形をしている。

 仕上げに、建物の玄関先同士を幹に板を挿したような形の階段で繋ぐ。まあ普段は《飛翔》で移動するけれど、雰囲気的に階段が欲しかった。


「なんというか…サンドボックスゲームにありそうな家になったわね。豆腐ハウスだし…窓は広めに取ったけど」


 建物の玄関側と幹側以外の2面に、大きな窓を作った。なお窓ガラスは羽目殺しである。標高が高いから風が強いのよ、この辺。風に負けないように、ガラス自体も分厚く頑丈にしてあるし。


 あとは内装だけど…これはちょっと考えていることがある。だけど、今日はもう日も落ちかけているから、明日にまわそう。

 作り置きの料理を《ストレージ》から出して食べたあと、私は出来上がったばかりの寝室の広いベッドの上で丸くなった。おやすみなさい…。




 *




 翌朝、夜明けと共に目覚めた私は、昨夜考えていたことを実行することにした。

 それは、様々な『魔道具』を作って各所に設置することである。魔道具とは、魔力を動力源とした家電のようなものだ。用途に合った魔法陣を魔石に刻み込み、核とすることで魔道具は完成する。

 ちなみに魔法陣を使うと、既存の魔法以外のオリジナル魔法も創ることができる。私が今まで適当に使っていた魔法達は、横着して既存の魔法をいくつか重ねて発動させたりしていたのだけど…一度魔法陣を創ってしまえば、そのオリジナル魔法は次回から魔法陣なしで発動させることも可能になるのだ。この際だから、今まで使っていた魔法も見直そうと思う。


 まあ、まずは魔道具作りから始めようか。《人化》して、作業開始だ。


「最初は簡単なやつから。ということで『冷蔵庫』を作ろう」


 "周囲の温度を5℃に保つ"という効果を持つ魔法陣を創り、魔石に刻む。次に"周囲の温度を-20℃に保つ"という効果を持つ魔法陣を創って、魔石に刻んだ。それらを、事前に《製作》で作っておいた冷蔵庫内の上段と下段にそれぞれ設置する。

 そのあとは、"空気中の魔素を魔力に変換する"という効果を持つ魔法陣を創って魔石に刻み、動力部分に設置した。これで、魔石が割れない限り動き続ける冷蔵庫が完成した。

 それから、私は様々な魔道具を作っては各所に設置していった。


 "室内の温度、湿度を快適に保つ"、"屋外と屋内の空気を循環させる"という効果を持たせた、『エアコン』のような魔道具。


 "指定された範囲内を定期的に浄化する"という効果を持たせた『自動清浄』の魔道具。


 "水温を42℃に保つ"、"水嵩が減ったら水を供給する"、そして前記の"指定された範囲内を定期的に浄化する"という効果を持たせた『浴槽管理』の魔道具。


 "上に載ったものを温風で乾かす"という効果を持たせた『ドライヤー』のような魔道具。


 その他、『間接照明』や『コンロ』、『オーブン』、『水道(の蛇口)』、『食洗機』のような魔道具も作った。なお『自動清浄』の魔道具については大量に作って、湖にも等間隔に沈めておいた。


「ふう…これで体感的には前世と同じか、それ以上に便利になったわね」


 魔道具作りと、ついでにオリジナル魔法の魔法陣創りに専念していたら、気づいた時には夜になっていた。間接照明の魔道具の光は淡くて、夜目の効く猫の目にも優しい。たぶん、人から見たら薄暗いのだろうけど、この住居には誰も入れる気はないので問題ない。


 さて、現在地は寝室と浴室、簡易キッチンがある方の建物の中だ。今から料理を作るのも面倒だし、今夜は作り置きの料理を出して食べることにした。

 メニューは、具沢山&お肉多めの『豚汁』である。


「あったまるー…『ミソの実』が見つかって良かったわ」


 実は『鉱床の迷宮』では、ミソの実以外にも『ショウユの実』『ダシの実』のほか、『米』や『小麦』も見つけて収穫してきてある。《製作》スキルで精米や製粉が出来たので、白米や小麦粉はあるのだけど…ご飯を炊いたり麺を打ったりするのが億劫で、まだ手をつけていなかった。そもそも私、鍋でご飯を炊けるのだろうか…?『炊飯器』の仕組みとかよく分からないけれど、魔道具にできるかなあ…。


「炊飯器の魔道具、あとで試作してみよう…ついでに製麺機も」


 上手く行けば、ご飯やパスタ、うどん、ラーメンなどの主食が手に入るから、頑張ろう。とりあえず今は、豚汁を堪能しようっと。




 そうして豚汁に舌鼓を打ったあとは、《人化》を解いて、常に清潔かつ適温なお湯が張られた浴槽に身を沈めた。あーーー、極楽極楽。


「快適ねぇ……」


 お風呂上がりは『ドライヤー』もどきの魔道具ーー足拭きマット状ーーの上に乗って身体を乾かしてから、ベッドにダイブした。なおベッドには羽毛布団がセットされているので、ふっかふかで気持ちいい。けれど、それよりも。


「自宅サイコー……」


 住居が完成したら、なんだか安心した。やはり衣食住は大事ね。ゴロゴロと機嫌良く喉を鳴らしながら、私は布団の上を転がった。そうしている内にやがて睡魔がやって来て、私は適温・適湿な快適空間の中でゆったりとした眠りに身を任せたのだった。




第1章はとりあえずここまで。第2章へ続きます。

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