ヘタレ王子は絆されやすい?
「……え?もう返事が?」「えぇ、なんでもフェリシア様が記憶喪失になられたのを耳になさったようで…」
何歳か老けたような顔のヴィルバートと別れて自室に入った私は、リアから先日出したばかりのアルヴィンへの手紙の返事が届いたと告げられる。
(早すぎない…?嫌われてるんじゃなかったっけ?)
フェリシアの記憶喪失。
公爵令嬢にとっては取り返しの付かない弱みになるはずのその情報が王宮にまで届く程広まっているのには訳があった。単純に、前の評判が悪すぎたのである。
少しでもマシになっていれば僥倖、万が一あれ以上悪くなっていたとしても既にその名は地に落ちており、弱みになりようがなかったのだ。今更あの性格が、馬鹿で高慢でどうしょうもないあの性格が一体どう変化したというのか。社交界の話題は今やフェリシア一色である。
記憶喪失、実際のところは異世界転生した日から引きこもっている本人だけはそのことを知らず、手紙を持ってきたリアを見るなり早すぎる婚約者からの返信に首を傾げていた。
「あんなこと仕出かしたのに…本当に優しいんだね」「そう……ですね、今読まれますか?」「うん、すぐよんじゃう」「ではお返事の準備をしてまいりますね」「ありがとう」
リアが退室し一人になった部屋の、ふっかふかのベッドの上で手紙を開く。白地になんだかすごい意味がありそうな金の装飾が施された便箋に書かれた流暢な文字を追っていく。
「…挨拶文なっが……え〜と…お見舞いに行けなくてすまない、手紙をありがとう、……もし体調が悪くないなら一度週末にでもあって話さないか…?!会ってくれるの?!」
王子大丈夫か、絆されやすすぎないか。なんだか心配になりつつも好都合なのですぐにリアから受け取った便箋にぜひ伺わせてほしい旨を書いていく。
来週には会えそうな日取りが決まりそうだ。公爵令嬢2日目の始まりに備えて大きな息を吐いた。
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