カイル作者と出会う
目の前に居る柴犬。
信じがたいことに神である。
いや作家?
柴犬?
分かんない。
だが僕をこの世界に呼んだということは何か重要な案件だろうか?
「そんで何で此処に呼び出したの?」
「え? カイルと唯の雑談したくて呼んだ」
くだらない理由でした。
「おい」
「え~~いいじゃん」
歯を見せながら笑う作者。
「まあ~~良いけど」
「うんうん」
「それより」
「なに?」
「一人称が僕と被るんだが……」
紛らわしいよね。
「あ~~じゃあ~~僕が柴犬と言うね」
「そうしろ」
「は~~い」
「返事だけは良いな此奴は」
「それじゃお喋りしよう?」
コテンと首を傾げ尻尾を振る。
可愛いじゃん作者のくせに。
「何でだよ忙しいんだぞ元の世界では今崩壊の危機が訪れてるのに」
「大丈夫~~僕は作家だから其処らへんどうとでもなる」
胸を張る柴犬。
「そうでした~~」
思わず蹲る僕。
そういえば作者でした此奴。
「まあ~~あの世界も大変だよね~~今は世界崩壊の危機だし」
「お前が作ったんだろうが」
ジト目で言う僕。
「うんノリで」
「ノリで作ったんかいっ!」
「まあね~~」
「おいっ!」
思わず突っ込む僕。
「いや冗談冗談~~」
「おい」
目が据わる僕。
「いや最初はね五話で終わる予定の小説だったんだけど何故か六年連載が続くとは……」
「無計画に見切り発車だったんだなしかも短編」
「うん」
「うわ~~」
呆れた。
「当時はスローライフを書くつもりが何故か低人気で二週間評価なしと言う感じでした」
「良く続ける気になったな~~」
ため息を付く柴犬に僕は同情の目を向ける。
「いやね終わる気でしたよ当初は」
「何でまだ連載してるの?」
「読者さんが連載してくれと言ったから」
「へえ~~其れで連載したの?」
あ~~其れは嬉しいね~~。
「うん」
「おお~~其れなら後の評価も高く……」
「成りませんでした」
「はい?」
僕は柴犬の言葉に目を丸くする。
「評価は一ヶ月で二十も行かなかった」
「ゑ?」
聞き間違いかな?
「しかも二十日かけて書いた次の話は評価ゼロ」
「うわ~~」
聞き間違いではないだと……。
「しかもさあ~~あの村が襲撃される時なんか正月休み返上したんだよ」
「御疲れ様……というか……アレ僕に死にかけたんだけど?」
皮肉を込める僕。
「其れでどれぐらい評価は上がったと思う?」
「努力して三十位上がった?」
聞いて無いし。
「全然上がらんかった」
正月休み返上してかよ……。
報われんな~~。
「……どんまい」
「しくしく……」
くう~~んと落ち込む柴犬を慰める僕だった。
作者のくせに可愛いんだけど……。
まあいい。