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流星のネコ  作者: 双見トート
第三章学園編「春は遠く、夜は始まる」
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第1話「もし時間を巻き戻せるのなら(b)」

今回第一話は時雨沢恵一著作のキノの旅をリスペクトした構成です。

ので、この話の時系列は少し先。これから、何故ここに至ったのかを描いて行きます。

 もし時間を巻き戻せるとして、自分はどこまで遡ればいいのだろうか。


 ネコは目の前に倒れる佳奈を見て茫然とする他無く、空は暗雲立ち込める夜の黒に火の手が上がる校舎によって赤が重なっていた。


 戦闘機が逃げ惑うヘリコプターを追い立て、それを防ごうと別の戦闘機が妨害。

 

 それによって産まれるジェットとソニックブームによる轟音が、ごうごうと身体に響いている。

 

 ずっと鳴り響いていた銃声は止み、代わりに少女達の泣き叫ぶ声が遠くで流れている。


「……ネコ」


 血に塗れた刀と、返り血によって汚れた義継がうなだれるネコの背中に声をかけるも、二の句が継げないでその手にした刀を落としてしまう。


 からん、と甲高い音が鳴ると共にネコは振り向き、震える声で口を開く。

「義継……佳奈が……」

「あぁ……」

「笑ってたんだ……それで……謝ったんだ……『ダメな恋人でごめんなさい』って……」

「ネコ……」

「悪いのはボクなんだ……全部、全部悪いのはボクなんだ……なのに、佳奈は……!」

「ネコ……っ!」

「――――っ!」

「もうやめるんだ……自分で自分を追い詰める必要なんか無いんだよ……」

「…………」

 涙も出なかった。


 やがて、波が引くように全てが片付こうとしていた。


 死傷者、41名。

 その内、生徒27名。教師5名、研究員及び作業員9名

 その中にはネコ達の担任も居て、目撃者の証言に依ると生徒を庇って撃たれたという。

 

 普段は、冷たい態度で生徒を突き放した様子を見せていたその教師は、実際にはこの学園屈指の生徒想いな教師で知られていて……かつては牧野の件で、縷々と協力して副理事長の不正と暴きながら、いじめの証拠を集めていた。

 

 そして、今回もまた、生徒を想っての行動だった。

 

 その代償が、自身の命だと理解していても。


 重傷者の内4名は搬送中、あるいは搬送後まもなく命を落とした。


 佳奈は、幸運な方だった。

 搬送が間に合い、いまはICUにて治療を受けている。

 

 病院は怪我をした生徒や教師で埋め尽くされていて、うめき声や泣き声がこだましている。

 地獄の様相を呈しているこの場所を幽鬼の様に彷徨い歩くネコは、脳裏に何度も何度も佳奈の言葉が反芻していた。


『ダメな恋人でごめんね』


 どこからやり直せば良かったんだろう。


 自分の何が悪かったんだろう。


 自分の間違っていたところは何処だったんだろう。


 思い起こせば思い起こすほどあれもこれもと頭に浮かんで、それが自分を苛んでいく。


 倒れこむ様に待合のロビーにあったソファへ腰を下ろすと、テレビにはちょうど今夜起きた事件の事が流れていた。


『確認されている死者は以下の通りです。


 甘利桃華さん、16歳。


 飯田茅さん、15歳。


 臼井恵子さん、27歳。


 緒方翔馬さん、33歳。


 片桐里香さん、17歳。


 葛原莉々さん、15歳。


 小島涼さん、25歳。


 富士見野薫子さん、17歳


 四方月八重さん、17歳…………。


 ――――いま入りました情報に依りますと、搬送先にて新たに2名の死亡が確認されました……』

 

 顔を土気色に染めて今にも倒れてしまいそうな出で立ちでありながらアナウンサーは職務を果たす為にニュースを読み上げている。


「今、新たに情報が入りました。アムリッツァより休戦協定の撤回と宣戦布告が入ったとの事です。その声明を読み上げます……。


 我々、アムリッツァは貴国HALと結んだ休戦協定を撤回し、宣戦布告を行った。また、この宣戦布告と同時に…………各HAL軍基地と軍需工場への攻撃を開始する…………」


 読み上げる言葉の端に段々と恐れによる震えが込められて、ついにアナウンサーはショックで気を失ってしまった。


「ネコ!」


 慌てた様子の義継が現れて、ネコの側まで駆け寄って、更なる波乱を予告した。


「アムリッツァ軍の航空機が有坂重工本社へ向けて進軍している!」

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