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なにもしていないのに悪役令嬢として断罪されましたがおかげ様でヒロインの代わりに聖女に選ばれて幸せです

作者: 下菊みこと

せっかく聖女候補になれたなら余計なことはしない方がいいってお話

私何にもしてないんですけど!?


「ストローガニーナ・シビルスキー!私は貴様との婚約を破棄する!そしてここにいる我が愛、ジャルコイエ・イズ・チャリャーチヌイとの婚約をここに宣言する!」


「はぁ…そうですか」


「さらに、ルルを虐めた挙句に階段から突き落とし殺そうとした罪で貴様を断罪する!」


「ルイ様かっこいい!素敵!」


思わず呆れてため息が出る。出たよルイバ・ザ・ペチョンナヤ王太子殿下の悪癖。今回は中庭でのティーパーティーの席かー。


はじめまして、ご機嫌よう。私、ストローガニーナ・シビルスキーと申します。公爵令嬢です。悲しきかな、また王太子殿下の短絡思考に巻き込まれています。こうして王太子殿下の悪癖、婚約破棄の宣言をされてもう三回目。学園に入学してから王太子殿下は変わられてしまった。もうそろそろ本格的に婚約破棄してもいいんじゃないかな。ついでに言うと、何れの婚約破棄も女の子に粉をかけられた王太子殿下が本気になって、そのたびに周りの方々の説得や女の子に対する王太子籠絡の断罪によって破局し結局元鞘に納められていた。


でも、今日はなんだかちょっと違いそう。何故なら、今回の女の子は聖女候補と目される平民の女の子、ジャルコイエ・イズ・チャリャーチヌイさんだから。


この国では、心が清らかで光魔法が使える女の子が聖女に選ばれる。聖女に選ばれた女の子は、国王陛下よりも強い権力と地位を得て、全ての国民を守るためその身を水龍、オラージュ・タンペット様に捧げる。この国では何もしないと日照りが続く。日照りが続くと水不足が深刻になる。よって水龍様の力を貸していただく必要があるのだ。…といっても、実際には神殿で奉仕するだけで、結婚も自由だし特に制限されることもないのだけれど。


そんな聖女の候補である女の子に危害を加えたとなればいくら私が公爵令嬢で相手が平民とはいえ、私は無事では済まない。まあ、冤罪なんだけど無実だという証拠がないし…。うーん。でも、聖女って心が清らかな子しかなれないんだし私を冤罪で嵌めるとか大丈夫なんだろうか。


「大丈夫じゃないな」


「ちょっとジュジュ!人の心を読まないでよ!」


急に幼馴染が私の横に現れる。神出鬼没な奴なのだ。


「む、何者だ!」


「俺?俺はオラージュ・タンペット。よろしくー」


私の幼馴染は恐れ多くも水龍様の名を騙る。本名は私も知らない。けれども、幼い頃から知っている仲なので信頼できる人だ。


「水龍様の名を騙るとは!何という罰当たりな!ストローガニーナ!また一つ罪が増えたな!」


え?これ私の罪になるの?もう!ジュジュったら!


「騙る?あー…うーん。屋外だし大丈夫かー」


「何が?」


「ニーナにもまだ見せてなかったよな、本当の俺の姿。きっと惚れちゃうぜー?」


何を言っているのかしらこの幼馴染は。


「じゃ、変化解除っと」


ジュジュがそういうと、その身体が見る見るうちに巨大な龍に変わっていく。…え、うそ。ジュジュって本物の水龍様だったの?


「なっ…なっ…!」


「水龍様!水龍様だー!」


「平伏せよ!水龍様だー!」


みんなが龍になったジュジュに平伏する。もちろん王太子殿下もジャルコイエさんも。私も遅れて平伏しようとしたが。


「あー、そういう堅苦しいのいいよ。ニーナもいつも通りでいいよ。ほら、また人間に化けるからさ」


ジュジュはそう言うと人間の姿になって私の頭をなでなでと撫でてくれる。


「んでさぁ。聖女候補ちゃん、ちょっと光魔法使ってみ?」


「は、はい!光の精霊さん、力を貸して!」


手に魔力を込めるジャルコイエさん。しかし何も起こらない。なんで?


「えっ…あ、あれ?」


「まあだよねー。ニーナ、試しに光魔法使ってみ?」


「えっ…でも私、光魔法なんて…」


「大丈夫。いいからいいから」


そうしてジュジュに勧められるがままに試しにやってみた。


「光の精霊よ!」


手を翳すと手に光の輪が広がる。光魔法!?


「やーっぱり!さすが俺の見込んだニーナ!」


何故かジュジュは嬉しそうに私を抱きしめてくる。力が強すぎて苦しい。


「あ、ごめんごめん。苦しかったか?」


「大丈夫…けど、なんで?」


なんで私に光魔法が使えるの?


「と、惚けるな!貴様、ルルから光魔法を奪ったな!?」


「えっ!?」


「そ、そうです!それしか考えられません!水龍様!なんとかしてください!」


いやいや、私何もしてませんけど!?


「んー?いやいや、違うって。元聖女候補ちゃんが無実のニーナを、そうと知りながら嵌めようとしたから“清らかな乙女”じゃなくなっちゃったんだよ。だからもう光魔法は使えないわけ。で、光の精霊達が新しいお友達に選んだのがニーナなの。わかる?」


えっ…えー、自爆じゃん。


「そっ…そんな!」


「えっ…つまりルルはストローガニーナに虐められていなかったのか!?なんでそんな嘘を!?」


「そりゃあ王太子君のお嫁さんになりたかったからだろ。いいじゃん、それはそれで健気で。あ、さっきのニーナとの婚約破棄と元聖女候補ちゃんとの婚約は確かに聞き届けたから。もう国王にも覆せないからね。末永くお幸せに」


「そっ…そんな!」


「あと元聖女候補ちゃんさぁ。いくら転生者だからってちょっと調子に乗り過ぎよ?これを機に反省してね。ここはゲームのモデルにこそなった世界だけれど、現実なんだから」


「えっ…う、うそ…」


王太子殿下とジャルコイエさんが絶望している。でも、転生者ってなんだろう。


「さて、それで、ニーナ」


「あ、うん」


「これから聖女として、俺に尽くしてくれる?」


「もちろん!」


せっかく光魔法を使えるようになって、おバカな王太子殿下からも解放されたんだもの!大切な幼馴染に尽くすくらいなんでもないわ!


「嬉しいー、じゃあついでに俺のお嫁さんになってー」


「もちろん!…え?」


待って、今なんて言った?


「わあいやったー!あ、今更取り消せないからね」


「ちょっとジュジュ!」


「いいじゃんいいじゃん!俺たち元々両思いでしょ?」


「えっ!?」


なんでジュジュが私の気持ちを知ってるのよ!ていうか両思いってことは…。


「ジュジュも、同じ気持ちなの?」


「ん。例えニーナが俺よりはるかに短命だとしても、一生をかけて愛し続ける自信があるよ」


これでどーよ、とジュジュ。十分よ!


「じゃあまあそういうことで。ニーナは俺の神殿で囲ってそのまま結婚するからよろしくー」


ジュジュはどこまでもいつもの調子でそう告げます。


なんだかんだで振り回されている気もしますが、私、幸せです!

水龍様は公爵令嬢にご執心

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― 新着の感想 ―
[一言] 名前が印象的過ぎてストーリーの記憶が薄れてゆく……………(笑)
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