絶望
劣勢になりつつある最中、更なる災厄が騎士団達を襲う。
「何でこのタイミングで…」
大森林の各所での天穴の吹き出し。
「「「ルオオオオオオ」」」
それと共に響く大量の魔獣の哭き声。
魔素吹き出しに伴う、魔獣の一斉活性化。
最悪と最悪が重なった瞬間であった。
◇◇◇◇◇
そして、一刻の時が過ぎた後、軍配が上がったのは魔獣側であった…。
「退却だ!
防衛拠点をビリオンの街に移すしかない!
殿の兵を残し、残りは後退して街に陣を敷き直せ!」
騎士団長があらん限りの声で叫び、司令塔へと通信魔法をつかい指示を出す。
自然の猛威を前にして、人はかくも弱きものであった。
バハムートを筆頭とした魔獣の前に、軍の配列はズタズタに引き裂かれ、酷い状態であった。
1000いた軍隊の半数が負傷もしくは死傷し、急いで後退を始める。
そして、動ける者が全面に出て盾となった。その中には騎士団長の姿もある。
「俺のミスだ。国のメンツを気にした貴族どもを押しきれず英雄の召集を遅延させちまった。お前らの命を考えれば天秤にかけるまでもないはずなのに、結果がこの様だ。本当にすまねえ…。」
広範囲型防御魔方陣の水晶。
殿となった兵は全員がこの水晶に魔力を込め、バハムート含む、大群となった魔獣の進行を防ぐ。
魔力次第ではどんな攻撃をも通さぬ、最強の守りではあるが、その対価は大きい。
蓄えていた大量の魔力水晶と、殿の兵100人の魔力、騎士団長の魔力をもっても、今のバハムートと魔獣の軍勢の前では10分持つかどうかという所であった。
騎士団長の言葉を受け、兵達の反応がどうかというと、表情に暗さを落としている者は少なかった。
「騎士団長のせいなんかじゃねえ!俺らも功績を挙げたくてついてきたんです!謝罪なんかしないで下さい!」
そう言って兵士達は皆力強く騎士団長に様々な言葉を返していった。
「【白金】が到着するまであと半日はかかることだろう。それまで街に逃がしたあいつらが持ちこたえられれば俺らの勝利となる。」
騎士団長が渋い顔で言うと全員の顔にも暗闇が差した。
「こればかりは…仲間を信じるしかないですね」
ビリオンの街には守るべき人々、民がいる。
そこでの混戦は誉められたものではないし、様々な犠牲者も生んでしまうかもしれない。
例え持ちこたえ、勝利を納めたとしても尋常ではない被害が出てしまうはずであった。
それを思って皆の顔に暗雲が立ち込めたのだ。
「既に魔力が尽きつつあるか…。最後に無駄な抵抗をするが、加わる奴はいるか?」
魔力障壁への魔獣達の攻撃による衝突。
それにより徐々に障壁が薄くなっているのがハッキリと分かるようになってきた。
騎士団長は、終わりの時が近づいたことを悟り、剣を握る。
「逃げ出すようなやつが、騎士団長にしごかれてきた俺らの中にいるとお思いで?」
「ふっ…それもそうか。」
部下からの最後の皮肉を受け止め、騎士団長が最後の言葉を全員に放とうとしたその時であった…
目の前の世界は一瞬で金色に染まり、視界は白で覆い尽くされた。
◇◇◇◇◇◇