騎士団長
「俺が出る」
騎士団長はそう参謀に告げて、背負っていた剣を握る。
国王より賜りし、剣の名はデュランダル。
切れぬ物はないと噂され、装備の中でも最上位であるSSSランクに位置する剣。
それを構えつつ、巨大な神獣バハムートの正面まで移動する。
「お前ら、もう少しで英雄が到着する。その時まで持たせろ!」
保険ではあったが、とある英雄の出動も要請してあった。
意図的に英雄が来る時間を遅らされていたのだが、それは軍の面目を立たせるためであり、上の政治的な力が働いた故である。
移動しつつ周囲に指示を出し、隊列の修正を図りつつ、バハムートと対峙する位置に出た騎士団長は、魔法を発動させる。
【風鎧ー瞬花ー】
風を纏い、風に舞う花びらの如く高速かつ流れるような移動を可能とする騎士団長のオリジナル術式。
「獣風情が調子に乗るなよ…!」
【闘気錬磨―斬―】
剣にも魔法により魔術付与を行い、バハムートの喉元目掛けて飛び上がる。
そして横凪ぎに剣を振るった。
それに対してバハムートは黒雷を纏った爪で凪ぎ払いをかける。
お互いの衝突は一瞬で、騎士団長は衝撃で後ろにはじき飛ばされる。
バハムートの爪も剣との衝突によって欠けていた。
「グルル…」
それに警戒するようにバハムートが唸り、騎士団長に目標を着けた。
体制を建て直して、騎士団長はすぐに次の行動に移る。今度は側面からバハムートへと攻撃をしかける。
スピードで撹乱しての攻撃だった。
巨大な図体を持つバハムートの弱点としては動き自体は素早い訳ではない。
そしてデュランダルの特性も相まって、切り合えば相手に傷を与えることができる。
「負ける訳にはいかねえ…!」
騎士団長がそういって再度斬りかかろうとした次の瞬間、世界が赤く染まった。
切られていたバハムートだったが、角が赤く光ると今度は紫色の雷が如の獣の周囲を包み始める。
「何!?」
剣で切りかかっていた騎士団長から驚愕の声が漏れた。
紫色の雷になってからバハムートの外皮全てが鋼鉄以上の硬度に変わり、切ることが出来なくなったのだ。
「いくつ能力を持ってやがる!」
始めは優勢だった騎士団長だが、攻撃が通じぬとあっては徐々に押され始める。
「騎士団長を援護しろ!!」