Error Code 002 香月翔
主人公の幼なじみの香月翔についてのお話です!
俺と翔はいわゆる”幼なじみ”ってやつだ。
物心つく頃にはもう隣に翔がいた。
母から聞いた話だと、幼稚園入園の少し前に会ったらしい。
つまり、もう今年で10年以上の付き合いがあることになる。
お互いのことはある程度知っている。
趣味も部活も性格も、全く違う俺たちだけどなぜか気が合う。
例えば隣に翔がいて、ずっと無言だったとしても全く苦ではないと言いきれる。
翔以外の友達だったらきっと気まずくて無理にでも話しかけるだろうけど。
きっと翔もそう思ってくれているんじゃないかな。
昔からたくさんケンカもしてきた。
だいたいお互いケンカしたことなんか忘れて次の日には遊んでたりしてたけど。
とにかく、俺にとって”全てをさらけ出すことの出来る友達”とか”親友”っていうのは翔以外にありえないと思う。
昔は、俺の方がなんでもできた。
…というより、なんでもそこそここなせる能力があった。
例えるなら、そうだな。
平均点が1~点中60点のテストで全教科75点ぐらいをとるイメージ。
100点とか90点とかの高得点もないかわりに、30点とか40点みたいなやばい点数もない。
学力だけで言えば中の上とかそんな感じ。
でも、翔は違った。
翔は天才肌だから全教科にムラがある。
と言っても勉強はかなり壊滅的だけど。(全教科平均点ないぐらい)
翔の1番の長所は足が速いこと。
まぁ足が速いだけの男子ならどこにでも居るだろう。
陸上部で1番足が速くて、100mで県大会のBEST8に入るレベルの速さだ。
しかもイケメンで性格もよかったから中学でもかなりモテた。
それはもう、マンガとかドラマみたいにモテた。(さすがに下駄箱にチョコとかはなかったけど)
翔は1度だけ、彼女がいたことがある。
でも、翔が人気者なだけに周りからの風当たりが強かった。
その子はとてもいい子だった。
なのに、翔と付き合ってることが周りにバレて、今まで仲がよかった友達から嫌味とか陰口を言われるようになってしまったらしい。
しかも翔が気づかないところで。
翔がそれに気づいた時にはもう遅かった。
もうその子は孤独になってしまっていた。
翔がそのことに気づくのが遅れたのはその子が翔には気づかれないよう、明るく振る舞っていたからだ。
それでも、限界は訪れた。
嫌味や陰口に耐えかねて1度だけ、泣いてしまったらしい。
周りの子はそれを気遣ったり慰めたりすることはなかった。
「翔くんに慰めて貰えば?」
「どんな手使って翔くんの彼女になったの?」
「翔くんって理想低かったんだねぇ?」
とか、口々に言われたらしい。
その子は自分がたくさん嫌なことを言われるのはいいけど翔くんを悪く言うのは違うでしょ、と怒った。
やっぱりその子はすごくいい子で、翔と付き合っているからといって自慢しないし、可愛いと男子からも人気だった。
俺から見ても2人はお似合いだと思った。
きっと悪口を言っていた女子達に僻まれていただけなのだろう。
それ以来、その子は少し吹っ切れた様子でもう泣くことはなかった。
さすがにやりすぎだと思った翔の男友達が翔にそう言った女子達の名前を教えた。
みんな、過去に翔に振られた女子達だったそうだ。
翔はこれ以上その子を傷つけたくなかった。
お互いまだ好きだったのに、結局別れることになってしまった。
別れるという結果にはなったが、それからも2人は仲が良く、友達として上手くいっているらしい。
しかし翔はそれがやっぱりトラウマになってしまったようで。
「俺のせいであんなに苦しい思いをさせる訳には行かない」
そう言ってそれ以来、彼女を作ることは1度もなかった。
告白されても全部丁寧に断るし、何も知らない男子に
「なんで彼女作んねーの?」
と聞かれた時には
「今はお前らとバカみたいに遊ぶ方が楽しいからいーんだよ!」
と決まって答えていた。
彼女を作らないということは特に公言してはいなかったけど、みんな薄々気づいていた。
それでも告白してくる女子達は後を絶たない。
やっぱり翔はすごいと思う。
もちろん翔は男女関係なく人気だった。
休み時間になるたび翔の周りには人が集まっていて、笑顔が溢れていた。
俺はそんな幼なじみをすごいと思うと同時に、俺が翔の隣にいてもいいのだろうかと思えて来たことがある。
ある時、翔に聞いてみた。
「なぁ、俺みたいなのと一緒にいてつまらなくないの?」
翔は一瞬目をぱちくりさせて、それから少し微笑んでこう言った。
「直人。俺はさ、直人と一緒にいるのが1番楽しいし、落ち着くから一緒にいんの。つまらないとかそーゆーんじゃないし、考えたことないなぁ。」
俺はそれを聞いた時、なんでこんなことを聞いてしまったんだろうと少し後悔して、でも同時に嬉しかった。
翔はメリットとかデメリットとかを一切考えずに俺に接してくれてる。
それが分かってとても安心した。
でもやっぱり少し気恥しかった俺は、面と向かって
「ありがとう」
というのはなんだか照れくさくて。
少しうつむいて、ぼそっと翔に聞こえないようにつぶやいた。
そういえば、俺たちの通う高校は偏差値60ぐらいのそこそこの進学校だ。
ならどうしてあの翔みたいな万年下から1割レベルのおばかさんが入学出来たかと言うと、陸上部がめちゃめちゃ強いからだ。
公立高校には珍しい強豪校で、毎年県大会とか時には全国大会とかに行くらしい。
翔は100mで県大会のBEST8に入るぐらいだから、スポーツ推薦で入学した。(ちなみに筆記試験はナシで面接オンリー)
ちなみに授業について行けてないらしく、赤点ばっかり取るから担任との個人面談がめちゃめちゃ多い(笑)
そしてなぜか分からない問題(特に数学と物理)があると俺に聞いてくる。
「俺だって先生じゃないんだから全部はわかんねーよ」
と毎回言うんだけど、翔は真顔で
「俺先生が言ってること全くわかんないし、直人に聞く方がわかりやすい」
と言っていた。
そこまで言われるとやっぱり嬉しいし、自分の復習にもなるから分かる問題だけ教える。
わかんない問題があったら2人で職員室に行って説明を聞いて(ちなみに翔は一緒にいるだけでわかんないって顔してる)、俺が理解して、もう一度自分で解けたら翔に説明する。
こんなことを繰り返してたら、期末の数学と物理の順位がめちゃめちゃ上がった。
ありがと翔(笑)
…とまぁこんな感じで。
もう分かると思うけど、翔は(ちょっとばかだけど)根っからのいい奴で、イケメンで、スポーツもできて、優しくて、面白くて…
いい所をあげたらキリがない。
俺はこんな幼なじみを持っていることを誇りに思う。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!!