1/1
プロローグ
夜のとばりが下りた冬の寒い日。
四阿でぽつんと一人の少女が雪降る様をぼんやりと眺めていた。
広間の方では姉の生誕を祝うパーティーが行われており、使用人は一部を除き殆んどがそちらへ駆り出されている。
だからこそ、彼女は監視の目も向けられないまま外に出ている。
四阿といえど、寒さは外気温と同じくらいである。
しかし、彼女には精霊がついていた。
誰も見えない、そんな存在である精霊が、彼女に寄り添い温めていたのだった。
暫く眺めていると、雪を踏みしめる音が聞こえた。
少女が後ろを振り向くと、そこには小奇麗な身なりをした黒髪の少年だった。今までこっそり見に行った王宮で行われたパーティーでも見なかった顔である。
少女より少し年若そうな少年は、彼女がいるということに気付くとにっこりとほほ笑んだ。
それを見て、少女は体を固くする。
「・・・・・・貴方、誰です」
相手がおかしな動きをすれば精霊がいつでも動けるよう、合図をした。
痛め付ければ、誰にも告げ口出来なくなるだろうと考えて。
それが、エレナの運命の日になるとも知らずに。