絶望
襲いかかるさらなる不幸
失い続けなければいけないのだろうか
新しい場所で出来た、新しい友達。
私は前と同じように振る舞った。明るく元気に、活発に。
過去を隠しながら。
自分を偽りながら。
世界を騙しながら。
それはいつの間にか私にとって真実になっていたし、
世界そのものを騙しているということに小さな私が思い至るわけもなかった。
当時の私の世界は自分の中にしかなかったから。
目をそらし、すべてを忘れたように務めることにいつしか疑問すら持たなくなった。
引っ越してから、ちょうど一年目の夏。
11歳になった私は引越し先で初めて出来た友達、
唐立涼子ちゃんといつものように通学路を通って学校から帰る途中だった。
「美香ちゃんはもうここに慣れた?」
私は笑いながら、
「涼子ちゃんそれいつも言ってるじゃん。大丈夫だよ。」
と返した。
いつもの日常。いつものやりとり。
私は事件のことを思い出さなかったし、
少なくとも私自身の気持ちは満たされていたと思う。
コロコロ・・・そんなところに転がってきたボール。
道路の向こうの公園からみたいだ。
涼子ちゃんは手に取ろうとしたが、蹴りあげてしまう。
思わず走る涼子ちゃん。
「涼子ちゃん危ない!」
迫ってくる大型トラック。
そして、ものすごく大きなブレーキ音。
吹き飛ばされる涼子ちゃん。
私はそれを目の前で見ていた。
あたりは騒然としていた。
周囲の交通は完全にストップ。
轢いてしまった運転手、ボールを外に出してしまった子どもたちのグループ。
皆が呆然としていた。
「涼子ちゃん!」
そう呼びかけて車に駆け寄って、
あらぬ方向にひしゃげた足
衝撃で飛び出た内臓
見開いた目
半開きの口
傷口と口から血
それはあまりにも死を想起させる姿で、誰がどう見ても助からないのは明白だった。
病院に来た涼子ちゃんの両親。
変わり果てた物言わぬ彼女を見て泣き崩れた。
その場に居合わせた私と「お父さん」「お母さん」。
運転手さんは署に連行された。
どうしようもない事故とは言え、人を死なせてしまったのだ。
「あの・・」
そう私は涼子ちゃんの両親に声をかけようとした。
その時、
「お前みたいな奴がなんで!なんでお前なんだよ!なんで生きてるんだ!この疫病神!人殺し!」
涼子ちゃんのお父さんからの思わぬ発言に私達家族は言葉が出なかった。
愛する娘さんの死で錯乱してたのだろうか・・・
近くの看護師や医師につまみ出される形で涼子ちゃんのご家族は
別室に移された。
葬儀告別式も終わって、一段落した頃、私達家族は衝撃の事実を知ったのであった・・。
かなり長くなるので更に分割しました。
長すぎるとわかりにくくなってしまうので・・・