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願い  作者: 室姫暁人
1/8

目覚め

朝、身を切るような寒さで思わず目が覚める。

ベッドの脇の時計の針はもう12時を過ぎていた。

暗い空が天窓のごとく外界を閉ざすかのように包み込む。

「寒いし、暗いなあ・・・相変わらず。」


ここは北極圏のとある街。

私、遠藤美香は5年ほど前に両親とともに家族で移住してきた。

貯金もあるし、脱サラしてちょこちょこ仕事してスローライフをというやつだ。

特に異論はなかった。

高校も大学もあるみたいなので限りなく希薄な自分には拒める理由がなかった。

こんなところにも仕事と学校はあるのだなと感心する。

一方、どこに言っても日本と変わらない様式が広がっていること。

その広がりもしない自分の価値観に

ほんとうの意味で世界が狭いことを思い知った。


この街で日本人を見ることなんてほぼない。

それゆえ、始めこそみな

「なぜこんな不便で静寂と死が支配するこの街に来たのか」

と物珍しそうに見ていたが、すぐに無くなった。

この街の人間はあまり他人に関心がないのかもしれない。

事実、あまり大きい街ではないはずなのに近所づきあいというものがほとんどない。

回覧板すらないのだもの。


今の季節は極夜と言って一日中日が昇らない現象に見舞われている。

だから、昼でも外は暗い。

それは寒さと外の銀世界の美しさと相まって、生命の息吹を一切感じさせない。

一切を拒む冷たさ、彼女にはそれが心地よかった。

もう今年で5年目の極夜。

さすがに慣れたとはいえ日本では決して見られない光景は

いまだに私を不思議な気持ちにさせてくれる。

大学もないので、この静寂と闇が支配する幻想的な世界に浸れる。


そう思ってた矢先、そんな余韻をぶち壊すようなノック。控えめではあったけど。


「美香ー?起きた?」

「・・・起きれなくなったから帰ってくれないかな?」

「なんだよそれ!ひどいなあ。・・・慣れてるけど。いいよもう入るよ。おばさんに許可もらってるし。」

そういって彼は静かにドアを開けた。手には温かい食事。

入ってきたのはなんとも冴えない、温和そうな風貌の彼。高橋道久。

彼も私と同じくらいの時期にこっちに移住してきた。

と言ってもこっちの両親は極限環境の微生物の研究のためだけど。

「いきなり入ってくるとか品性疑うわー。頭に何が詰まってるの?豆腐?」

我ながら投げナイフのような言葉のチョイス。

彼は意に介さず・・・

「ひ、酷い!泣きそう・・・。お、おばさんおじさんから頼まれてるんだもの。この時期はいつも起きるの遅いし。」

声が震えていた。

・・・なんかゴメン。心の中で謝る。

「夜型なんだかしかたないじゃん。こんなんじゃ夜もへったくれもないけどさあ・・・。」

「だからってさすがにこの時間まで何も食べないのは・・・」


私は部屋に他人を入れることを嫌う。両親も例外ではない。仲が悪いわけでもないのに。

なんとなくだけど人を自分の心象風景に踏み込ませたくない。

自分の思い通りにならないと泣き喚く子供のようなわがままなのはわかってる。

一種の偏執的なこだわりなのだろう。

そんな私を見かねたのかたまたま家が近いという理由だけで彼に無理難題を押し付けた両親。

なぜか彼が部屋に入ってくるのは拒めなかったのだ。


私の度重なるわがままに懲りず、彼はいつもおどおどしてるのか

単に優しいのかよくわからない顔で入ってくる。

いろいろ言いながらいつも世話を焼いてくれて、正直感謝してる。

彼と過ごす何気ないこの時間が嫌いではないし。


変わり映えのない日常の中で私は満たされているようでどこか足りなかった。


初投稿です!

いろいろ考えましたが収まりきらないので連載にしました。

文章の拙さは種々見受けられると思いますが温かい目で見守ってくださると

嬉しいです。

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