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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
27 月の謎と宇宙船竣工篇
957/4273

27-17 サキの誕生日

 更新ミスのようです。

 次話の更新が少し遅れるかもしれません(11日に更新はします)が、このままお楽しみください。

『イカロス2』の試験飛行から数日間、仁は宇宙船用の装備製作で忙しかった。

 一番苦心したのは制御頭脳である。

『老君』『小老君』『庚申』などを作った経験を活かして製作。

 直径2メートルの球状で、司令室の中央に据え付けられる。

「名前は……そうだな、『大聖たいせい』だ」

 斉天大聖(せいてんたいせい=天と同格な聖人)から採った名称である。


 斉天大聖は、『西遊記』のヒーロー、孫悟空の別名で、悟空がまだ仏教に帰依する以前に自称し、次いで天帝が了承した称号である。

 觔斗雲きんとうんに乗り、十万八千里を一跳びにするところから、宇宙船の頭脳名に選んだのだ。


 この『大聖』は、老君が持つ知識のうちで、宇宙船制御に役立つと思われるもの全てが収められており、地上の『老君』と魔素通信機(マナカム)でやり取りもできる。

御主人様(マイロード)、よろしくお願いいたします』

「ああ『大聖』、こっちこそよろしくな」

『大聖』は、宇宙船建造時にも稼働し続け、内部構造を全て把握させる。

 こうして、仁の旗艦は着々と完成に近付いていくのであった。


*   *   *


 5月20日、サキ、22歳の誕生日である。

「くふ、照れくさいね……」

「サキ、誕生日おめでとう」

「おめでとうございます」

 今回、サキの誕生日を主催したのは実父トアと、継母ステアリーナである。

「サキさん、お誕生日おめでとうございます」

 今回は、仁の進言により、ミーネからの贈り物であるケーキが真っ先に並べられた。立てられた蝋燭は中くらいの太さ2本と細いものが2本。

 それに火をつけた仁がサキを促す。

「さあ、吹き消してくれ」

「う、うん」

 ふう、と、サキが一息に火を吹き消すと、列席者全員が拍手をした。

『誕生日おめでとう』、と、全員が唱和する。

「みんな、ありがとう」

 少し頬が赤いのは照れているのだろうか。

「おめでとう、サキ」

「ジン、ありがとう」

 仁の贈り物は当然懐中時計。サキのものは、瞳の色に合わせた薄紫色だ。

「時計か……やっぱりうれしいね」

「サキ、それを手にしたんだから、時間にだらしない生活は少しは謹んでくれよ」

「うう、耳が痛いよ……」


「サキ姉、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう、エルザ」

 エルザからの贈り物は、薄紫色のオルゴールだった。

「大事なものをしまっておくことにするよ」


「サキ、誕生日おめでとう」

「ラインハルト、ありがとう」

 ラインハルトからの贈り物は、ベルチェと2人で選んだというドレス一式だった。

「こ、こんなのいつ着ればいいんだい?」

「こういうパーティーで着ればいいのさ」

「サキ様、着替えられてはいかがですか?」

「おお、それはいいな。着て見せてくれよ」

 アアルの提案に、ラインハルトが乗った。

「……今日だけだよ?」

 着替えるため、仕方なく奥に引っ込むサキ。

 サキが着替えてくる間、ラインハルトはもう1つの贈り物を用意した。掌に乗るくらいの小さな箱である。

「それは?」

 仁が尋ね、ラインハルトは全員に向かって説明した。

「サキの祖父、テオデリック侯爵からの贈り物さ。先日、僕の手から渡してくれという手紙と共に届けられたんだ」

「ふうん」


 そんな会話をしていると、サキが戻って来た。アアルの着せ替えスキルは高いようだ。

「サキ……」

「サキ姉」

 サキが着ていたのは純白のドレス。仁などは、『ウェディングドレスか!?』と思ってしまうようなデザイン。

 だが、この国に、結婚式の服装は白が至高、という考えはない。白が好まれているのは確かであるが。

 未婚の女性は、白を基調とした淡い色のドレス、という慣習ともいえない慣習があるだけである。

「綺麗だ。見違えたよ」

 真っ先にそんな言葉を掛けたのはラインハルトだった。

「……照れるね。似合わないと言ってくれていいんだよ?」

「いや、正直な感想さ。見立てたのはベルチェだからね。否定するのは家内のセンスを否定することにもなる」

 ラインハルトの言葉に、サキも微笑む。

「あは、そうかも。なら、素直に受け止めておくことにするよ」

「それからこれは、テオデリック侯爵からの贈り物だ」

「え、お祖父様からの?」

 エルザを強引に娶ろうとしていると勘違いしていた頃には『爺さん』と言ってはばからなかったサキだが、和解が成った今は、祖父と認めていた。

 箱を受け取り、開けてみれば、それはブローチであった。

 銀作りで、ところどころに金を使い、上品に仕上げてある。

 サキは早速、ドレスの胸元にそれを着けた。

「おお、似合ってるじゃないか」

 白いドレスの最大の長所は、どんな色のアクセサリーでも合う、ということだとラインハルトは思っていた。

 そして、侯爵からの贈り物であるブローチも、サキが着る白いドレスによく映えていたのである。

「……ありがとう」

 ラインハルトからの賛辞に、頬をほんのり染めて俯くサキ。

「サキ姉、可愛い」

「……なっ」

 思っても見なかった、エルザからの言葉に、サキはますます顔を赤らめた。


 ヴィヴィアンからの贈り物は、彼女が描いた絵であった。

「これは、もしかしてボクかい?」

「そうよ?」

 白いドレスを着たサキの肖像画である。

「こんなドレスを着た覚えはないんだけど」

 今着ているドレスとも異なるデザインのドレスであった。

「そこはそれ、想像で補ったのよ」

「……凄い才能だね」


 そして最後は、あまり面識はないものの、マルシアとロドリゴからの贈り物。

「サキさん、おめでとうございます」

「ありがとう」

 それは、船の模型……というか、置物である。モデルはショウロ皇国の『ベルンシュタイン』であろうか。

「精密だね」

「最近、ポトロック……いえ、エリアス王国で流行っているんですよ」

 船を愛好するエリアス王国らしい趣味である。

「応接間に飾らせてもらうよ」

 こうして、サキの誕生日は和やかに終始したのであった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20151011 修正

(旧)作った経験を生かして作った

(新)作った経験を活かして製作

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― 新着の感想 ―
[一言] 『何度目かの読み返しの最中です』 >それは、船の模型……というか、置物である。モデルはショウロ皇国の『ベルンシュタイン』であろうか。 >「精密だね」 >「最近、ポトロック……いえ、エリアス…
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