表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
25 飛躍への準備篇
858/4212

25-06 行き先

 よくよく調べてみた結果、間違いなくアルシェルの髪飾りに付いていたルビー、ということを兄のベリアルスが保証したので、とにかくここを彼女が訪れたらしいことは確定した。

 問題はその後、である。

「まずこの付近を調べてみるしかないな」

 仁ダブルは『音響探査(ソナー)』と『地下探索(グランドサーチ)』を使い、調べてみることにした、その時。

「お待ち下さい!」

 礼子から待ったが掛かる。

「魔力の流れを感じます」

 仁ダブルよりも礼子の方がそうした知覚は上である。

「もしかすると、この付近に魔導機(マギマシン)が存在する可能性があります」

「何だって? 何の意味が……」

 と言いかけて仁ダブルは口を噤む。

 レーダーに代表されるような、監視系の機器は、高い場所に設けた方が有利なものが多いからだ。

「と、なると……」

 その魔導機(マギマシン)がどういうものかで対応の仕方は変わる。魔導投影窓(マジックスクリーン)を見つめながら、仁は考えてみた。


 監視系か、攻撃系か、それとも……転移系か。

 監視系だった場合、仁ダブルたちのことはもう知られていると考えた方が良いだろう。

 攻撃系の場合でも、何らかの監視系が付随している可能性が大である。

 転移系の場合でも、そこに誰かいないか、何か障害物がないかの確認は必要だ。


 少なくとも監視系があるという前提で行動することだ、と仁は結論を出した。

 それを、仁ダブルを通じて、ベリアルスに伝える。

 ベリアルスは少し考えたのち、口を開いた。

「我々を監視している『誰か』、聞こえていますか? 私はベリアルス、アルシェルの兄です。もし聞こえていたら反応して下さい」

 しばらく待ったが、反応がない。そこでベリアルスはもう一度同じことを口にした。

 そして更にもう一度。

「……」

 だが、反応は返ってこなかった。日没も間近で、薄闇があたりを覆い始めている。

「ベリアルス、今日はもう遅い。また明日にしよう」

 仁がそう声を掛けたときだった。

「あれを!」

 礼子が声を上げ、指差す方向を見ると。

「何だ?」

 山頂の一部が淡い光を放っていた。

 魔導投影窓(マジックスクリーン)越しにそれを見つめた仁は、仁ダブルの口を借りて推測を述べた。

「……もしかして転移門(ワープゲート)なのか?」

「こんな形状で、ですか?」

「そうだ。岩の表面でなく、内部に格納されているんだろう。少し様子を見てみよう」

 仁ダブルは、ベリアルスを呼ぶと、自分とベリアルスを包み込む障壁(バリア)を展開した。

 そして数秒後、その場所に1体のゴーレムらしきものが現れた。

「来訪者よ、そなたたちの目的は何だ」

 この問いに、ベリアルスが反応した。

「先程も言ったように、私はアルシェルの兄です。妹を連れ戻しに来ました」

 この回答を聞いたゴーレムは大きく頷いて見せた。

「なるほど、それは理解した。では、残りの2人は?」

「地下の魔物についての情報が欲しくて来ました。また、知り合いの『700672号』から、そちらにいるのがもしかして『始祖(オリジン)』の従者ではないかと言われていますが、いかに?」

 仁ダブルの『始祖(オリジン)』という言葉を聞いた途端に、ゴーレムの反応が変わった。

「『始祖(オリジン)』だと? ……貴殿は何を知っている?」

「あまり多くは。でも、これを見てもらえますか?」

 仁ダブルは、ここぞとばかりに、700672号から借り受けた『クリスタルキューブ』を出して見せた。

「それは……ミティアナイトか。わかった。貴殿らを受け入れよう。ここへ来たまえ」

 ゴーレムが仁たちを認め、招いた。

 仁ダブルたちは、一瞬顔を見合わせたあと、頷きあってゴーレムにゆっくりと近付いていく。

「そう警戒せんでも、何もせんよ。先に行って待っている」

 ゴーレムはそう言うと姿を消した。転移門(ワープゲート)が転極したらしい。

「……ジン殿、行きましょう」

 ベリアルスは、罠かもしれないという思いよりも、妹アルシェルに会えるかもしれないという思いの方が強いようだ。

 その気持ちを表すかのように、真っ先に転移範囲と思われる、微光を放つ地面に踏み込んだ。続いて仁ダブルと礼子が。

 そして3人はエルラド山山頂から消えた。


*   *   *


「……変わった仕様だな」

 転移した先も当然、転移門(ワープゲート)の中。

 仁は、仁ダブルの目を通じて、『変わった仕様』の転移門(ワープゲート)内部を観察していた。


「……ああ、ここが受入機(レシーバ)か。ふうん、効率よさそうだな……」

 そんな観察を怠らない仁ダブルの前に、

「……ようこそ、ジン殿」

 700672号とそっくりな外観の『何者か』が現れた。先程のゴーレムが後ろに控えている。


「私は『600012号』。おそらく見当は付いているだろうが、『主人』に仕えていた従者だ。今は自動人形(オートマタ)の身体になっているがね」

 確かに、『600012号』と名乗った彼の身体は自動人形(オートマタ)……、それもあまり出来の良くないものであった。

「俺は……」

 仁ダブルが口を開きかけると、600012号はそれを遮り、

魔法工学師マギクラフト・マイスター、ジン殿だな。そしてそちらはレーコ殿」

 と、仁と礼子を見知っているような物言いをした。

「これでも外の世界に斥候を放っておるからな。ジン殿のことはかねてより存じておる。会いたかったよ」

 そう言って顔を歪めた。……どうやら、『笑った』らしい。

「えーと、俺たちより前に来た者がいたはずですが」

 ベリアルスの姿が見えないので、仁ダブルは600012号に尋ねてみる。すると、彼の顔つきが明らかに変わった。

「そのことについてなのだが……」

 600012号は小声でそう言うと、仁ダブルに椅子を勧めた。礼子は自動人形(オートマタ)と知っているからか、何も言われていない。

 仁ダブルも自動人形(オートマタ)の身体なので疲れることはないが、敢えてばらす必要もないので、素直に礼を言って腰掛けることにした。

 

「まずは詫びねばならない」

 いきなり600012号が頭を下げたので仁ダブルを操縦している仁は面食らった。

「いったいどういうことですか? 説明してください」

「もちろんだ」


*   *   *


「……ここは?」

 一方、仁たちに先駆けて転移門(ワープゲート)を通過したベリアルス。

「……よく来た」

 彼の前に現れたのは、顔の上半分を覆う仮面を付けた男だった。いや、声から男と判断しただけで、その正体はわからない。

「貴方は?」

「吾は60……いや、『ロクレ』と呼んでくれ」

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20150704 修正

(誤)そう警戒線でも、何もせんよ

(正)そう警戒せんでも、何もせんよ


(誤)真っ先に転移範囲を思われる

(正)真っ先に転移範囲と思われる


(旧)調べてみることにした、その瞬間。

(新)調べてみることにした、その時。


(誤)「……ようこそ、ジン君」

(正)「……ようこそ、ジン殿」


 20150705 修正

(旧)アルシェルの髪飾りに付いていたルビー

(新)よくよく調べてみた結果、間違いなくアルシェルの髪飾りに付いていたルビー

(旧)とにかくここをアルシェルが訪れたらしいこと

(新)とにかくここを彼女が訪れたらしいこと

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ