99-98 マリッカの思惑と仁の手伝い
エルザからの許可も下りたので、仁はさっそくマリッカDと共に工房へ。
礼子も一緒である。ホープはエルザに付いている。
「あ、ジン様!」
「やあ、久しぶり」
マリッカの弟子、『森羅』のマルティナが、仁に挨拶した。
以前仁のことを見くびっていた彼女も、今は工房主として立派になった(マリッカDはオーナー)。
「先生、何かあったんですか?」
仁と一緒だったためか、マルティナが心配そうに尋ねた。
「いいえ、そうじゃないんですよ。ついさっき、面白い依頼をシオンさんから受けたので、検討してみることになったのです。ジン様も手伝ってくださるそうだから、ありがたくお受けした、と、そういうわけですよ」
「そうだったんですか」
ほっとした顔のマルティナ。
「こっちは、私とジン様だけでいいですから、あなたたちはいつもどおりでいいですよ」
「はい、わかりました、先生。……でも、何をするのか、ちょっとだけ教えてもらえませんか?」
「ああ、そうですよね、気になるでしょうから。……『北の地』にあるオパールを採掘するためのゴーレム開発です」
「確か、永久凍土の下、ですよね?」
「ええ。多分地下50メートル以上の深いところにあるはずです」
「わかり……ました。先生とジン様が、どう解決するのか、楽しみにしています」
そう言ってマルティナは仕事に戻った。
マリッカDは微笑みながらその後姿を見送る。
「あの子も、工房主として、しっかりしてきましたよ」
「そのようだな」
そして仁とマリッカD、礼子らはマリッカの専用工房へ。
こちらは個人用なので、やや小さめである。
とはいえ……。
「きちんと整備されているな。さすがマリッカだ」
「こ、光栄でしゅ」
必要十分な工具・道具はひととおりそろっているし、素材も潤沢にある。
そして、助手である『自動人形』の『花子』もいた。
「ようこそいらっしゃいました、ジン様」
「花子も元気そうだ」
「おかげさまで」
「レイコさん、お久しぶりです」
「そうですね、花子さん」
簡単な挨拶を済ませると、マリッカDは仁を打ち合わせコーナーに招いた。
花子がすぐにお茶を淹れてくれる。
それを口にしつつ、2人は打ち合わせを開始した。
「マリッカはどんなゴーレムを考えているんだ?」
「そうでしゅね……地中深くでの採掘なので、人型である必要はないと思いましゅ」
「俺も同意見だ。俺としては『モグラ型』を推奨する」
この場合の『モグラ型』は、哺乳類のモグラではない。
以前仁が作った、地中用のシールドマシンに似ており、直径2メートル、長さ3メートルの円筒状。
『掘削』の魔導具と、ハイパーアダマンタイト製のチップを使った掘削の2とおりを行える。
人も乗ることができるが、乗り心地は非常に悪いので、大抵はゴーレムが搭乗する。
また、『忍部隊』や『コマンド』が敵基地に潜入する際に使う『ミニモグラ』もある。
こちらは直径10センチ、長さ30センチの円柱状だ。
「確かに、いいですね。ですが……」
「何か懸念事項があるのか?」
「はい。……既知技術だけで作れるかどうか、でしゅ」
「それはそうか」
『モグラ』は、いうなればトンネル工事用の『シールドマシン』である。
先端のアダマンタイトチップで岩盤を掘削する(もしくは『掘削』の魔法で穴を穿つ)。
その岩屑や土砂を、『転送機』で地上へと排出するのだ。
「そこは『転移魔法陣』に置き換えたらどうだ?」
「それがいいでしゅ……すね」
そして、『掘削』の魔法は使わず、先端のアダマンタイトチップだけで掘削する方向性でいいだろうと、2人の意見は一致した。
「大きさはどうしましょうか……」
「そうだなあ……人が乗るのはやめた方がいいだろうな。……そもそも、宝石採掘用であれば、あまり大きくなくてもいいだろうし」
「でしゅね」
「自律型のゴーレムにするなら、直径50センチから1メートルだろうな」
「採掘した鉱石も『転移魔法陣』で送り出しましょう」
「最低でも『音響探査』の魔法を使えるようにしたいな」
「地中を進むわけですからね」
……と、仕様が次々に決まっていく。
「一番むずかしいのが制御だと思うんでしゅが」
「それについては、老君がノウハウを持っているけどな」
過去、『モグラ』や『ミニモグラ』を運用した際のものである。
「それを参照させてもらうという手もありましゅが、ここは自分たちでノウハウを蓄積していきたいと思います」
最初は浅い場所で、オパール以外の鉱石を採掘させる。
その後、いろいろな鉱石をさまざまな場所で採掘させる。
その際、徐々に難易度を上げていく。
最終的には永久凍土の下にあるオパールの採掘を行う。
……と、これがマリッカDの計画であった。
「うん、これはこれでいいと思う」
開発・製作のノウハウを蓄積していくのも指導者の務めである。
仁としても、マリッカDのやり方は好ましかった。
「なので、製作時にはあの子たちにも手伝ってもらおうと思います」
『あの子たち』というのは『マリッカ工房』の弟子たちである。
「いいと思うよ」
後進の育成には、こうして製作を手伝わせながら技術を教えていく、というやり方も有効である。
「なら、今日のうちに『設計基』までは完成させたいな」
「はい」
「そこまでは手伝うよ」
「ありがとうございます、ジンしゃま」
ということになり、その日いっぱい(およそ2時間)、仁はマリッカDと共に、『採掘用ゴーレム』の『設計基』を作成していったのである。
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次回更新は2月1日(日)12:00の予定です。
20260412 修正
(誤)先端にアダマンタイトチップで岩盤を掘削する(もしくは『掘削』の魔法で穴を穿つ)。
(正)先端のアダマンタイトチップで岩盤を掘削する(もしくは『掘削』の魔法で穴を穿つ)。
(誤)その岩屑や土砂をは、『転送機』で地上へと排出するのだ。
(正)その岩屑や土砂を、『転送機』で地上へと排出するのだ。




