99-90 仁たちの旅行準備
明日からの旅行で訪れる予定としてロイザートの屋敷とカイナ村が候補に挙がったが、あと2つ思いついた場所がある。
ノルド連邦、つまりシオンの所。そしてもう1つはミツホだ。
「順番として、カイナ村、ノルド連邦、ミツホ、ロイザート? もしくはその逆」
「そうだな……経度を考慮するとそれでいいんじゃないか?」
「ん、決まり」
あとは、それぞれに持って行く土産である。
「『アヴァロン』のお土産って、なに」
「海産物くらいしか思い付かないな……」
「……うん」
そもそも『アヴァロン』は観光地ではないので、お土産らしいお土産は存在しない。
「『アヴァロン』に拘ることも、ないか」
「それが、いい」
そういうことにしたのである。
が、それでも、何がいいかは決めかねる2人。
「礼子、何かいいアイデアはないかな?」
「そうですね……蓬莱島のお土産を持っていけばよろしいのでは?」
「あ、そうか」
蓬莱島なら、特産品はたくさんある。
消え物……つまり食料品や消耗品である。
これが記念品だと、次第に増えていき、置き場所がなくなる……こともある。
捨てるに捨てられないため、有難迷惑になりかねない……と仁は危惧していた。
(時代劇でよくある、『家宝』を紛失したり壊したりして大慌てする大名……なんて例もあるしなあ……)
院長先生の時代劇ビデオライブラリ(DVDではない)で得た知識である……。
「なら、やっぱり果物か」
「ん、ペルシカとシトラン、それにアプルル」
「それでいこう」
果物、と決まった時点で結論が出るのは早かった。
「そっちは老君に頼んでおくとして……」
「関係各課に話しておかないと」
「そうだな」
8月いっぱい『アヴァロン』を留守にする、と伝えるべき部署、あるいは人は少なくない。
仁は『アカデミー』の各部署、エルザは『アヴァロン病院』の関係者に。休暇のことを告げに行った。
* * *
「留守中のことは任せてください」
「ん、おねがい」
エルザはリシアに留守中のことを頼んだ。
その後はサキのところへ行く。
「お、エルザも来たのか」
「あ、ジン兄」
サキの居室には仁が先に来ていた。
「やあエルザ、ジンと旅行に行くんだってね」
「うん、悪いけど、留守中のこと、お願い」
「いいともさ」
そこへ、お茶を持ってきてくれた者がいる。
「お茶をどうぞ」
「ありがとう。……君は?」
「スーリヤ・サンクと申します。お姉さまの弟子です」
そういえば、サキにはそんな教え子がいたっけ、と仁は思い出した。
「……で、その『お姉さま』っていうのは?」
「サキお姉さまが、もう先生と教え子じゃないって仰るので妹分にしてもらったんです」
「そ、そうか」
仁がサキの方をちらっと見ると、苦笑を浮かべた顔があった。
「ああ、その、なんだ……後は頼む」
としか言えない仁であった。
* * *
ゴウとルビーナ。
昼休みが終わり、『レルヒ』のカスタマイズを始めている。
「ジン様たちも休暇取るのね」
「僕らも旅行に行ってきたからね。いいんじゃないか」
「そうよね」
話をしながらも2人の手は止まっていない。
どんどんと組み上がっていくカスタムパーツ。
そんな2人を見て、アーノルトは微笑んでいた。
* * *
「そうですか、ジン様たちも休暇ですか」
メルツェもまた、2人が休暇を取ることを聞き、少し安心していた。
「やっぱり、上の人が率先して休暇を取ってくれないと、みんな休みづらいですものね……」
そして、真っ先に休んでほしいのは最高管理官ですけど、と心の中で思うのだった。
* * *
再び仁たち。
「で、まずはカイナ村だな」
2人は、おおまかな旅行計画を立て始めている。
「最近顔を出していないし、それで、いい」
「じゃあ、それでいこうか」
特に拘りがあるわけではないので、すぐに決定。
「エリスも元気かな」
「ん、大丈夫。定期的に健康診断してるはず、だから」
カイナ村の領主はエリス・ニドー。
その孫フレディが次期領主である。
「そろそろ、グリーナと一緒になるんじゃないかな?」
グリーナ・クズマはビーナ、ルイスの傍系で、今年25歳。
フレディと同い年で、仲がよい。
「エリスも、2人が結婚したら領主を譲って隠居するんじゃないかなあ」
「その可能性はあると、思う」
「今度行ったら、それとなく聞いてみるか」
「ん、いいと思う」
その時は特別な贈り物をしたいしな、と仁は言った。
「やっぱり、『侍女自動人形』?」
「それが無難なんじゃないか?」
「ジン兄らしい、とは思う」
さて、フレディとグリーナ、2人の仲はどうなっているであろうか……。
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次回更新は1月13日(火)12:00の予定です。




