99-88 メルツェの帰還
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
賊ゴーレムがいきなり現れたのは姿を隠す結界ではなく、『転移魔法陣』によるものであったことがわかった。
「ということは、あらかじめここに魔法陣を設置しておいたわけですよね」
「そうなります」
メルDの質問に、『テクノ49』が答えた。
「転移のタイミングはどうやって合わせたのでしょうね」
「今のところ不明です」
商隊がそこを通った時に転移したわけである。
疑問点は、どうやって『通り掛かった』ことを知ったのか、ということである。
* * *
蓬莱島では、メルツェが悩んでいた。
「……いくつか推測できますから、それを検証していく方法はどうでしょう?」
そんなメルツェの問いに、老君が答える。
『悪くないと思います。推測をお聞かせください』
「はい。……まず、『空で』見張っていたモノがおり、それが合図を出した」
『ありえることです』
「次に、商隊と一緒に……多分、距離をおいてついてきた賊の仲間がいて、合図を出した」
『それもありえますね』
「それから、荷物に何か『マーカー』めいた物が入れられており、それを頼りに転移した」
『荷物はすべて奪われましたから、そうだったとしてもバレることはないですね』
「うーん、あとは……商隊に仲間がいて合図を出した。……ですが、これは商会で話を聞いた限りではあり得なさそうです」
以上がメルツェの推測であった。
『なかなかの仮説ですね。それでは、それぞれを検証していくことをお勧めします』
「わかりました」
『とはいえ、現状ではできることはないでしょう』
「次の被害者に話を聞く必要がありますね」
そういうわけで、メルDは『アヴァロン』へと戻ったのである。
* * *
『アヴァロン』時間で午後1時。
メルツェはうまくメルDと入れ替わり、最高管理官への中間報告は自身で行った。
「……と、いうわけです」
「ふむ、そうすると、賊は『転移魔法陣』を使うことができるだけの魔法技術を有している、ということか」
「はい」
トマックス・バートマンはメルツェが提出した報告書を見ながら確認の質問をする。
「そうすると、別の国に行き、被害者……商会とコンタクトを取るわけだな?」
「はい、その予定です」
「わかった。簡単でいいから計画書を出してくれ」
「はい、閣下」
これで最高管理官トマックス・バートマンへの報告は終了。
借りていた『レルヒ0』『テクノ49』『テクノ50』を返却するため、メルツェは『アカデミー』へと向かった。
「おかえり、メルツェ」
「メルちゃん、おかえりなさい」
『アカデミー』にはちょうどゴウとルビーナがいて、メルツェを労った。
「アーノルト技術主任なら工場で『レルヒ』の量産を指導してるよ」
「ありがとう。ちょっと行ってきます」
「僕らも行くよ。ちょうど主任に用があったんだ」
そう言って、ゴウとルビーナはメルツェと共に工場へ。
そこでは、5機目、つまり『レルヒ5』が完成したところであった。
「チェック終了。合格だ」
「主任、ありがとうございました」
今日は『航空研』のイーナ・コウキとタイナー・ビトーが現場に詰めていた。
彼らが主導で5機の生産が行われているのだ。
「主任、メルツェが来ました」
「おお、おかえり。『レルヒ0』はどうだった?」
「はい、大いに役に立ってくれました。最高管理官への報告書にも書いてあります」
「そうか、それはありがたい」
ここでゴウが発言。
「主任、まだ許可は出ていないということですが、時間の問題だと思うので、そのまま『レルヒ0』を使ってもらっていいでしょうか?」
「つまり、また別の国へ行くわけだな」
「はい、そうです。次はセルロア王国へ行こうかと」
「ふむ。別に構わないと思う。『テクノ49』と『テクノ50』もそのまま使ってくれて構わないよ」
「ありがとうございます、助かります」
次回の調査行が成功したら、もう少し長期間借用できるよう手続きをする予定なのであるが、今はまだ1日毎に更新しなければならない。
組織で働く上でのしがらみのようなものだ。
「それでですね、主任」
改めてゴウが口を開いた。
「メルツェの報告内容を受けて、『レルヒ』のオプションを思い付いたのですが」
「ほう? 聞かせてもらおうか」
「はい。『静音性』を特に強調したものです」
「調査用だね?」
「そうです。……生き物の生態を調べる時にも役立つかと」
「なるほどな。『遮音系』の結界を備えておくとなおいいか?」
「あ、そういうことです」
「わかった。バリエーションの1つとして検討しておこう」
「お願いします」
こうして、カスタマイズ『レルヒ』用のアイデアがまた1つ見つかったわけだ。
* * *
メルツェはその日のうちに次の調査計画書を最高管理官に提出し、許可を得ていた。
そして就業時間終了後、いつものように入浴。
ルビーナと語り合う。
「メルちゃん、慣れないことして疲れたんじゃない?」
「そうね……実際に現場へ行ったのは『分身人形』だから、身体は疲れていないけど、なんとなく気疲れしちゃった」
「そういうものよね」
ちなみに2人以外誰もいないので、『分身人形』の話題を出しても平気である。
その後は食堂でゴウも交えての夕食。
和やかな雰囲気で過ごすうちに、気疲れも癒えたような気のするメルツェであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は1月9日(金)12:00の予定です。
20260106 修正
(誤)「チョック終了。合格だ」
(正)「チェック終了。合格だ」




