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99-86 メルツェの方針

「『アヴァロン』から航空機で向かいます」


 それがメルツェの選択だった。

 『アヴァロン』からアンベルクの町までは直線距離でおよそ650キロ。

 直接現地へ行くなら、飛行場はないため、開発されたばかりの『レルヒ(ヒバリ)』を使おうと考えたのだ。


 『レルヒ(ヒバリ)』の最高速度は時速250キロ(公称値)。

 3時間は掛からないだろうと思われる。

 それ以上に、ゴウとルビーナが関わったこの新機種を早速実用に使い、その有用さを実証したくもあったのだ。


「ふむ、『レルヒ(ヒバリ)』を使って現地へ行く、というのだね」

「はい。実証テストにもなりますし」

「うむ……いいだろう」


 最高管理官トマックス・バートマンは、わずかに考えた後、許可をくれた。


「気を付けて行ってくるのだぞ」

「はい、閣下」


 許可が出たので、メルツェは『アカデミー』へ。

 技術主任アーノルトに会い、『レルヒ(ヒバリ)』の使用許可が出たので貸してもらえるよう交渉。


「そういうことなら、いいだろう。『レルヒ(ヒバリ)0』を貸してあげよう」


 『0』とは量産試作機である。

 量産が始まったばかりの今現在では、数々の試験をクリアしており、量産機よりも信頼性は高い。


「ゴウとルビーナに声を掛ければ、調整してくれるよ。操縦士は必要かな?」

「いえ、『ララ』に頼みますので」

「わかった。それじゃあララに操縦のノウハウをインストールしてあげよう」

「よろしくお願いします」


 今日はもう終業時間が近いので、現地へ行くのも『レルヒ(ヒバリ)0』を借りるのも翌日となる。


*   *   *


「……というわけなの」

「へえ……『レルヒ(ヒバリ)0』を使うのね」

「うん、許可をもらったから」


 午後5時15分、メルツェはいつもの浴場でルビーナと共に湯船に浸かっており、そこで今日の成果を報告していた。


「それはいいけど、あとでゴウにもちゃんと話してあげてね? 二度手間になるけど」

「うん、それは、もう、ちゃんと」

「ならいいわ」


*   *   *


 それは、夕食時、いつもの食堂、いつものメンバー。

 つまり仁、エルザ、ゴウ、ルビーナ、そしてメルツェ。


「……ふうん、頑張ったな、メルツェ」

「ん、初めての調査行、頑張った」

「ありがとうございます」


 仁とエルザから褒められ、少し照れるメルツェ。


「で、『レルヒ(ヒバリ)0』を使うんだって?」

「はい。それで、アーノルトさんからはゴウさんとルビちゃんに話をしておけ、って言われました」

「なるほどね」

「……どういうこと、ルビちゃん?」

「あー、メルちゃんにはわからなくて当然ね。……あのね、『レルヒ(ヒバリ)0』は試作機だから、量産機とはちょっとだけ違うのよ」


 ルビーナはメルツェにわかりやすいように説明を始めた。


「で、試作機である『レルヒ(ヒバリ)0』は、実験を繰り返すために自由度が高いのよね。だから、メルちゃんの要望に応えていろいろカスタマイズしてあげられるはずなのよ」

「よくわかったわ。ありがとう、ルビちゃん」

「で、どうしよう?」

「うーん、まずは速度、でしょうか」


 低〜中速機である『レルヒ(ヒバリ)』であるから、やはり速度がネックになる。


「それなら、時速300キロくらいまでなら上げられるわ」


 公称値は時速250キロなので2割増しである。


「いや、多分350キロ弱はいけると思うよ」


 ゴウが補足した。

 どうしてそういえるのかわからない、という顔をするメルツェ。

 それを察したゴウが説明を行う。


「量産機はコストダウンのためにあちこちで構造を簡略化しているから、試作機に比べて強度が少し低いんだよ」

「そうそう。量産機は『必要十分』な強度なのよ」

「あ、つまり試作機は『十分過ぎる』強度を持っているわけね」

「そういうこと」

「だから『レルヒ(ヒバリ)0』は量産機よりも大幅に速度を上げることが可能なのね」

「メルちゃん、正解」


 そんな3人のやり取りを、仁とエルザは微笑ましそうに見つめていた。


*   *   *


 その夜、自室(と呼べるほど馴染んだ部屋)で、仁とエルザは話し合っていた。

 いや、礼子と、通信で老君も参加している。


「メルツェが調べてきたわけだが、わからないのは『空中から現れたように見えた』というやつだな」

「ん」

御主人様(マイロード)、可能性としては『転移』と『透明化結界』の2つが考えられます』

「そのへんは現地で調べないとわからないだろうな」

『はい。ですが、既に事件から日数が経っていますから、痕跡も消えてしまっている可能性が大です』

「うーん……だけど老君はもう調べているんだろう?」

『はい、御主人様(マイロード)

「で、何か掴んでいる」

『そのとおりです』


 当然だろうな、と仁は頷いた。


「あとは、それをメルツェが気付くかどうか。また、気付かせたほうがいいのかどうか、だな」

『はい、御主人様(マイロード)。……ですが、おそらくご自身で気付くのは無理かと思われます』

「そうか……」

『はい。時間がたちすぎておりますので、『(サブ)自由魔力素(エーテル)技術』でないと痕跡を発見するのは無理でしょう』

「そうか、それならどうするのがメルツェのためになるのかな……」

「ん、それは大事」


 そこに、礼子も意見を述べる。


「お父さま、それとなく助言するのがよろしいかと」

「そうだろうなあ……」

「なんにせよ、やはり最新の情報が、必要」

『エルザ様のおっしゃるとおりですね』


 とにかく明日、現地の様子を確認してから、ということになったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 次回更新は12月26日(金)12:00の予定です。


お知らせ:本年中の更新は26日で終了させていただきます(異世界シルクロードは27日に更新します)。


 12月28日から31日は年末のためお休みをいただきます。


 2026年1月1日から3日は新年スペシャル更新の予定です。


 20251223 修正

(誤)今日はもう就業時間が近いので

(正)今日はもう終業時間が近いので

(誤)メルちゃんの要望に答えていろいろカスタマイズしてあげられるはずなのよ」

(正)メルちゃんの要望に応えていろいろカスタマイズしてあげられるはずなのよ」

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― 新着の感想 ―
転移は別次元への転移もありうる? もう一つ、認識阻害という事も。
今年も楽しく読ませて頂きました。 来年も仁達の物語を楽しみにしています。 作者様は今年は目を患われたりと大変な年でしたね。 今年も残り数日ですが、年末年始新年も体調には気を付けてお過ごし下さい。
>「で、試作機である『レルヒ0』は、実験を繰り返すために自由度が高いのよね。だから、メルちゃんの要望に応えていろいろカスタマイズしてあげられるはずなのよ」 >「うーん、まずは速度、でしょうか」 >低〜…
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