99-82 デモ飛行
8月21日はいろいろなことが進展した日であった。
明けて、22日は、そのいろいろなことが結実する日である。
まず、ゴウたちの『レルヒ』。
最初の2機が完成し、お披露目される。
場所は『空港』。
そこに今、『レルヒ』の1号機『レルヒ1』が静かに佇んでいた。
「ほう、これが『新型風力式浮揚機』ですか」
「以前のものと形状が違いますね」
「なかなか速そうです」
「以前のものはどうして廃番になったのでしたかなあ」
などなど、ギャラリーは思うままのことを口にしている。
「それでは、量産機のデモ飛行を行います」
アーノルトが宣言した。
「テストパイロットは『エアリア02』です」
『エアリア02』はエイラ、グローマらが開発したパイロットゴーレムで、反応速度は人間の十数倍、体重は60キロで、視力10.0。
航空機の操縦に特化したゴーレムである。
「『エアリア02』、発進だ」
『了解』
携帯通信機でアーノルトが指示を出し、『エアリア02』が応答した。
『レルヒ1』の『魔素変換器』が動作を開始し、『魔力炉』も起動する。
発生した『魔力素』が機関に供給され……。
「おお、浮いたな」
「安定していますね」
「ゆっくりゆっくり上昇している……これはなかなかできないことですよ」
技術に多少詳しい者は、その完成度に感心している。
「お、空中で静止しましたな」
「見事に静止してますね」
「これもなかなかできないことですよ」
そして今度は前進を始める『レルヒ1』。
最初はゆっくり、人が歩く速度よりも遅く。
これもまた、見る者が見れば高度な技術が(テクノロジーもテクニックも)必要だとわかるというもの。
その後は普通に飛行。
飛行場の上を円を描いて飛ぶ。
「静かですな」
「ダウンウォッシュも感じませんよ」
「これはなかなか……」
基本的に『密閉型推進機関』を使っているため、静音性は高い。
また、ダウンウォッシュも発生しない。
なので、ゆっくりと頭上を通過されても、機体が空気を押しのける微風程度しか感じないのだ。
「『エアリア02』、速度を上げろ」
『了解』
『レルヒ1』の速度が更に上がる。
先程までは時速10キロ程度だったのが、時速50キロに。
「おお、なかなか速いですな」
「さらに速度が上がっていきますよ」
飛行場の上を周回するごとに速度は時速10キロずつ上がっていく。
10周すると時速140キロとなった。
「あの速度でこの旋回半径とはすごい」
「操縦性は良好ですね」
「扱いやすい機体ということなんですな」
そして『レルヒ1』はさらに高度を取ると、速度をぐん、と上げた。
「おお!」
「この距離であの見かけの速度……多分、時速200キロは出ているでしょう」
この呟きにアーノルトは答える。
「最高速度は時速250キロです。定員は、操縦士を入れて6名。空中静止も可能です」
最初に説明しなかったのは、実力を見せてからの方が印象に残るだろうと思ったからである。
「なるほど……素晴らしい」
これは最高管理官、トマックス・バートマン。
間髪を入れず、アーノルトは続ける。
「いまお見せしているものは汎用型です。ここから、速度はやや落ちるものの15名程度を乗せられるものや、逆に定員は3名ほどになっても最高速度が時速400キロほど出るものなど、カスタマイズできます」
「なるほど、『アヴァロン』に配備するのにふさわしいな」
トマックス・バートマンは満足そうに頷いたのだった。
* * *
「うまくここまでまとめたものだな」
「ん、ゴウとルビーナも、成長した」
少し離れた場所で、仁とエルザも『レルヒ1』のデモ飛行を見ていた。
「モノづくりの本質を身につけたようだ」
「もう、一人前?」
「そう言ってもいいが……まだ、ちょっと頼りないところもある」
「そう言うと、思った」
仁がそう言うとエルザはくすっと笑った。
「ジン兄は、ことモノづくりに関しては、自分にも身内にも他人にも、厳しいから」
「そうかな?」
「ん、自分では気付きにくいのかも。他のことでは身内に甘いのに」
* * *
「あれが、このように発展するなんて、思ってもみませんでした」
そう呟いたのは『風力式浮揚機』の開発者、『森羅』のマリッカである。
『レルヒ1』の試験飛行の様子は、老君の『覗き見望遠鏡』によって蓬莱島に大型モニターで逐一見ることができていた。
「ゴウもルビーナも、成長しましたね……」
嬉しそうに微笑むマリッカであった……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は12月16日(火)12:00の予定です。
20251214 修正
(誤)「以前のものはどうして廃盤になったのでしたかなあ」
(正)「以前のものはどうして廃番になったのでしたかなあ」
(誤)などなど、ギャラリーは口々に思うままのことを口に出している。
(正)などなど、ギャラリーは思うままのことを口にしている。
(誤)間髪入れず、アーノルトは続ける。
(正)間髪を入れず、アーノルトは続ける。




