99-75 レルヒ
『小型浮揚機』を使った推進機。
『板状浮揚機』で使用しているため、動作に関しては信頼性がある。
外接円の直径3センチ高さ6センチの中空の六角柱なので、横に並べるだけでなく、縦に積み重ねることも可能なのだ。
しかも、外部に風圧が漏れることはないため、環境に優しく、静音性にも優れている。
「これを10個積み重ねて60センチにし、それを7個束ねると大きさ的には推進機レベルになりますね」
「合計70個か……それを2基使えば、推進力としては十分そうだな」
「ですね」
「よし、ゴウ君、ルビーナ君、さっそく推進機用の『小型浮揚機』を作ってくれ」
「はい!」
こうして『新型風力式浮揚機』の試作機は新たな段階に入った。
蛇足ながら、この段階で『推進機』(進む)の出力はペダルからレバー(前後させる)に変更されている。
* * *
ゴウが『小型浮揚機』を作り、ルビーナがそれを縦に接続。
さらにそれらをイーナとタイナーが束ね、魔力導線と制御線をエイラとグローマが接続、整備していく……。
この分担で作業を行った結果、午後3時には2基の推進機が完成したのであった。
「取り付けも終わったから、試運転できますよ」
「うーん……改造してしまったからなあ……」
先程の飛行は、まあギリギリOKとしても、今回はそうもいかない。
「許可は取っておいたぞ」
と、そのタイミングでマキナ3世がやって来た。
「マキナ殿、それは本当ですか?」
「ああ。午後、アーノルトたちがバタバタしていたからな。こんなことだろうと思ったよ」
「いつもありがとうございます」
「気にするな。これも役目だ」
マキナ3世は笑って、早くテストを始めたほうがいい、と指示をした。
そこで、改造した試作機を飛行場へ運ぶ。
車輪も改良したので移動させるのも楽になった。
「それじゃあチェル、もう一度頼む」
「わかりました」
テストパイロットは今回もチェル。
改造前との比較をしてもらう意味でも適役だ。
「では、行きます」
垂直上昇に関してはもはや問題ない。
十分高度を取ったチェルは、いよいよ新推進機を起動した。
と言っても、最低出力から始めているので、試作機はゆっくりと動き出す。
チェルは出力レバーをゆっくりと押し進めていく。
「おお、進み始めたぞ」
「滑らかだな」
そして試作機はどんどんと加速していく。
「いい感じだな」
「計算上の出力とほぼ一致しているから、最高速度は時速250キロくらいになるはず」
そして一同の視界から消えた後、1分ほどで試作機は戻ってきた。
「うん、今度は問題はないな」
それを眺めていたデウス・エクス・マキナ3世が呟いた。
「やっぱり、『小型浮揚機を使った推進機』というのはいいアイデアだったよ、エイラ」
「ありがとうございます……」
さすがのエイラも、マキナ3世には多少丁寧な言葉づかいをせざるをえないようだ……。
* * *
20分ほどのテスト飛行を終え、チェルと試作機は着陸した。
「どうだった、チェル?」
「はい、アーノルト様、出力は滑らかに変化し、扱いやすくなりました。舵の効きも改善されており、扱いやすいです。エンジンコントロールもこれなら直感的でわかりやすいです」
「そうか、成功だな」
「はい、大成功です」
この返答に、メンバーは喜びあう。
「やったな!」
「これで苦労が報われた!」
「悩んだ甲斐があったな」
そして試作機を工房へ運び、各部チェックを行う。
結果、
「問題なし」
となった。
「よし、あとは各部の再検討をして終わろう」
時刻は午後4時20分、あと40分は話し合える。
「チェル、どうだ? 細部で気が付いたことは?」
「そうですね、私は気になりませんが、座席が少し硬いかと思われます」
「なるほど」
「それから、計器類のバックライトはもう少し暗めのほうが見やすくなると思います。明るすぎても視認性が悪くなりますから」
「わかった。他には?」
「ハンドル類のグリップ感はいいのですが、少々細いのではないかと思われます」
「ふうむ」
本当に、チェルは細部についての感想を述べていく。
逆に言えば、全体としての完成度は高い、ということでもある。
そして、そうした細部への心配りもまた大切なのだ。
「みんなはどうだ?」
「そうですね……この機体について、というか、これを元にした量産機についても話し合いたいです」
イーナ・コウキはそういう意見を口にした。
「うん、それもいいな。何か言いたいことはあるのかい?」
「はい、機体の色はどうするかとか、名前をどうしようか、とか」
「なるほど、それは一理ある」
「いつまでも『試作機』では味気ないですしね」
現在時刻は午後4時40分。
終業まであと20分なので、今回の機体の愛称を考えることにした。
「うーん、命名は苦手だなあ」
「ゴウはそうよね」
仁の血筋であろうか……。
そんなこととは知らずに、他の面々は意見を出していく。
「垂直に飛び立てるんだから『ラーク』とか?」
「軽快に飛べるんだからいいかも」
「うーん……」
以前、蓬莱島の航空機に『スカイラーク(雲雀)』があった(今は退役)ことを知っているアーノルト、ゴウ、ルビーナらは悩んだ。
そこでゴウは、
「ちょっとひねってショウロ皇国風のヒバリの呼び方で『レルヒ』というのはどうでしょう?」
と言ってみる。
「レルヒ、か」
「響きはいいわね」
「よし、この『新型風力式浮揚機』は『レルヒ』にしよう」
「いいですね」
「意義なし」
ということで、『新型風力式浮揚機』は『レルヒ』と名付けられることになったのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は、手術後の安静を踏まえて11月30日(日)12:00を予定しております。
20251125 修正
(旧)そこで、
(新)そこでゴウは、




