99-72 試験飛行、そして
ちょっと遅れました m(_ _)m
8月19日になった。
ゴウたちは張り切っている。
なにしろ、今日は『新型風力式浮揚機』の試作機が完成するのだから。
朝食をさっさと済ませたゴウとルビーナは工房へ。
そこには既にイーナ・コウキとタイナー・ビトーが来ていた。
「早いな、ゴウ君たち」
「そっちのほうが早いじゃないですか、タイナーさん」
そこへエイラとグローマもやって来る。
「おお、みんな早いな」
「まだ始業の15分前だぞ」
「じっとしていられなくて」
「まあよくわかるよ」
と、そこに、チェルを連れたアーノルトもやって来た。
「なんだ、もう全員揃っているのか」
「はい、主任」
「やっぱりみんな、気になっているんだね」
「それはそうですよ」
「うーん、でもまだ始業12分前だから、『始めよう』とは言えないんだよ、管理職としては」
そう言ってアーノルトは笑った。
「それじゃあ、始業の時間まで雑談でもしていましょうよ」
「それしかないな……」
ということで、雑談をすることにしたが……。
「今日はいい天気だな」
「風もほとんどないみたい」
「絶好の飛行日和だわ」
「いろいろやったとしても、午後一番でテスト飛行できるわよね」
「楽しみだな」
「今日の作業は仕上げよね」
「各部のチェックもだな」
……などと、結局は仕事の話に戻ってしまう彼らであった……。
* * *
そして、定時となり、作業が始まる。
「ルビーナ、そっちは任せた」
「OKよ」
「タイナー、右側は私が」
「よっしゃ、イーナ、俺は左側だな」
「グローマ、あたしは操縦装置の制御系のチェックをするから」
「うん、エイラ。こっちは推進機系の制御ルーチンのチェックをしていくよ」
……と、勢い込んで機体に取り掛かる面々。
張り切って作業をした結果、午前10時半には試作機が完成したのであった。
* * *
「できちゃったわね」
「完成したなあ」
「チェックも終わってるよ」
「いつでも飛ばせます」
情熱とやる気のなせる業か、予定よりも早く試作機は完成した。
「お、出来たな」
「あ、マキナ殿」
絶妙のタイミングで、デウス・エクス・マキナ3世が工房に顔を出した。
「いい出来だな。マリッカもきっと喜ぶぞ」
「だったらいいですね……」
「だったらいいなと思います……」
「そうだな」
ゴウ、ルビーナ、アーノルトらとその他のメンバーでは、同じセリフでも想いの内容が違うのだが。
それはともかく、マキナ3世は出来上がった試作をチェックしていく。
こういう場合の第三者はありがたい。
実際の設計時にも、『検図』(設計図のミスや矛盾がないかチェックする作業)を、自分たちではなく別部署に頼む、ということもあるほどだ。
10分ほどのチェックの後、
「うん、これなら大丈夫だ」
と、マキナ3世は言った。
ほっと胸を撫で下ろすメンバー。
「だが、細かい調整は、動かしてみなければわからないからな」
「はい、それは承知しています」
「じゃあ、これから動作チェックをやろう」
「え? 飛行場は予約していませんが……」
アーノルトが済まなそうに言うが、マキナ3世は平然と、
「ああ、それは大丈夫。ジンと俺が予約しておいたよ」
と言って笑った。
「え?」
「いや、そろそろ完成しそうだからってジンが言うから念のために予約しておいたんだ」
「そうでしたか、助かります」
ということで一同、飛行場へ。
といっても飛行機用の工房は飛行場に隣接しているので、移動距離は十数メートルくらいだが。
「さて、見せてもらおうか」
マキナ3世は飛行場の管制塔に登り、見守っている。
一方、開発メンバーは飛行場に立って試作機を見つめていた。
「チェル、頼むぞ」
「お任せください、アーノルト様」
テストパイロットはチェル。
試作機の構造も知っており、反応時間も人間より遥かに短い。
また、飛行中の記録も確実に記憶できるため、適任である。
「では、スタートします」
起動スイッチを入れると、『魔素変換器』と『魔力炉』が起動するが、まだ各機関には供給されない。
チェルはゆっくりと浮遊出力レバーを押し込んでいく。
「お、浮いたな」
「安定してますね」
「そこは制御系がうまく調整しているわけだ」
試作機は1秒間に10センチくらいの速度で垂直に上昇していく。
風速2メートルくらいの風が吹いていたが、姿勢は安定している。
対地(対飛行場?)高度が20メートルほどになったところで、チェルは推進機の出力ペダルを踏み込んだ。
今回の試作機は、上下は左にあるレバーの前後、前進は右のフットペダル、後進は左のフットペダルとなっている。
機体の姿勢は床から伸びる操縦桿で行い、前に倒すと機首が下がり、後ろに引くと機首が上がる。
右に倒すと機体が右に傾いて右旋回。左に倒すと左旋回だ。
チェルはそうした操作を、ベテランのようにこなしていく。
「いい感じだな」
「あれはチェルの操縦のうまさもありそうだが……」
「軽快な動きですね」
マキナ3世もチェックをした試作機の出来はなかなかいいようだ。
「うーん、もう少し推進機の最高出力を上げてもよさそうだな」
そのマキナ3世が呟いた。
「安定しているからな、機体強度も申し分ない」
「成功ですね」
「やったわね、ゴウ」
「やったな、ルビーナ」
「グローマ、よかったなあ」
「そうだな、エイラ」
「イーナ、機体強度は十分だってさ」
「タイナーの補強も効果ありよね」
「やったなあ」
「できたね」
皆、それぞれに成功を喜びあったのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新は11月21日(金)12:00の予定です。
20251118 修正
(誤)風速2メートくらいの風が吹いていたが、姿勢は安定している。
(正)風速2メートルくらいの風が吹いていたが、姿勢は安定している。
(誤)高度が20メートルほどになったところで、チェルは推進機の出力レバーを踏み込んだ。
(正)高度が20メートルほどになったところで、チェルは推進機の出力ペダルを踏み込んだ。
(誤)右に倒すと機体が右に傾いて右旋回。左に倒すち左旋回だ。
(正)右に倒すと機体が右に傾いて右旋回。左に倒すと左旋回だ。




