99-71 順調な開発
仁が『身分証』のプレゼンテーションを行った、その同日。
ゴウたちは『新型風力式浮揚機』の製作中だ。
なお、リーダーのアーノルトは、仁の『身分証』プレゼンテーションに呼ばれており、一時的に不在である。
アーノルト不在の間、チーム最年長(今年37歳)のグローマ・トレーがリーダー代理を務めている。
「昨日、詳細な設計を行ったから、今日はそれに従って製作するだけだ。ゴウ君たちは試作と同じく『板状浮揚機』を頼む」
「了解です」
「イーナ君とタイナー君は機体の構造材だ」
「わかりました」
「で、エイラと僕は制御系の製作だ」
「よっしゃ」
ということで、分担も問題なく、スムーズに作業に取り掛かることができた。
部品の製作も、模型試作機より大きいだけで基本的に構造は同じなので、難しい箇所はないのだから。
* * *
午前中は特に問題もなく、部品製作を行うことができた。
そして午後にはアーノルトも戻って来る。
「午前中は留守にして申し訳ない。午後は大丈夫だ。グローマ、ご苦労だったね」
「いえ、皆きっちりと仕事をしてくれましたから」
そしてアーノルトは一とおり進捗状況を見てまわる。
「皆、よくできているな。今日中に組み立てを始められそうだな」
「そうですね」
「できたらいいですね」
「うむ。……よし、技術系ゴーレムを借りてこよう」
実機の組み立てにはゴーレムがいた方が効率がよい。
特に大きく重いものを組み立てるためには必須である。
クレーンやジャッキに比べ、自由度が高いため、扱いやすいという面もある。
もっとも、ゴウとルビーナはそれぞれピスティとフレールという助手ゴーレムを使っているので、最もその恩恵を受けるのはイーナとタイナーである。
そうして皆で頑張った結果、その日のうちにはとりあえず形になったのである。
とはいえ、調整や細かな仕上げは翌日に持ち越しだ。
* * *
午後5時、定時で作業は終了。
このあたりは徹底している。
「一風呂浴びてから夕食にしよう」
「いいな」
「いいわね」
チームの皆はこぞって浴場へ。
男性陣と女性陣、それぞれ分かれてのんびりと湯船に浸かった。
「いやあ、いい湯だな」
「ですねえ」
「ちょっとぬるいけど」
「お、ゴウ君は熱めのお湯が好きか?」
「はい。長湯は好きじゃなくて」
「ミツホで言う『カラスの行水』だな」
「よくご存知ですね、グローマさん」
「どこかで聞いたことがあったんだよ」
「俺はもう少し温くてもいいなあ」
「タイナーさんは温めが好きですか」
……と、風呂の熱さ談義がなされている。
* * *
一方女性陣。
「ちょうどいいお湯ね」
「熱すぎず、温すぎず」
「イーナさんはこのくらいのお湯がいいのね」
「あら、ルビーナさんは違うの?」
「あたしは、もう少し熱いほうが好みかも」
「へえ、ジンと似てるな」
「エイラさん、知ってるの?」
「以前そんな話をグローマとしていたのを横で聞いていたのさ」
「なるほどね」
こちらもお湯の熱さ談義に花が咲いていた……。
* * *
夕食は、それぞれ分かれて摂った。
ゴウとルビーナはメルツェと合流して一緒に。
エイラとグローマは弁当を購入して自室で食べているようだ。
イーナは同じ『航空研』の女性研究員たちと。
タイナーもまた、同じく『航空研』の同僚と夕食を摂っていた。
「ルビちゃん、ゴウさん、順調みたいね」
「おかげさまでね」
「ジン様たちが始めた『身分証』っていうのも順調?」
「ええ、そうね。今、詳細検討をしているところよ」
「セキュリティが増すんでしょ?」
「ええ。それ以上に、管理が楽になることを期待してるわ」
メルツェいわく、『アヴァロン』内の機密セクションのセキュリティがまちまちなので、管理者への負担が大きいのだという。
「また少しだけ、トマックスさんの負担が減ったみたい」
「それはよかったわね……」
こんな会話がなされていたようだ……。
* * *
そして、夜。
仁とエルザの会話再び。
「アーノルトが進めている、ゴウたちの『新型風力式浮揚機』も順調のようだし」
「ん、いろいろな用途があると思う」
「だな。……どうしてマリッカの『風力式浮揚機』が廃れたのか……」
「1つには、あれは『ノルド連邦』での『足』として開発されたから、『アヴァロン』には微妙に合わなかった、のかも」
「ないとはいえないな……」
「あとは、トマックスさんの前任のグラハム・ダービーの、せい」
「それもありそうだな」
いずれにせよ、『アヴァロン』内では使いづらい、という意識が蔓延した結果、廃止されたことになる。
今更その原因を探る気はないが、同じことを繰り返さないためにも、意識改革というか、使い道を限定せず、柔軟な発想で応用するよう指導していきたい、と考える仁とエルザであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回後進は11月18日(火)12:00の予定です。




