97-80 最終テスト
4月24日の『アヴァロン』。
ゴウとルビーナ、エイラとグローマは手分けして『思考会議用のヘッドセット』をせっせと作っていた。
「あと4つ……」
「なんとか間に合いそうね」
「ギリギリだけどな」
「手を動かせ」
「はいはい」
ゴウ、ルビーナ、グローマ、エイラ、そしてグローマのセリフである。
時刻は午前10時半、なんとか午前中に予定どおりの数を作れそうであった。
* * *
一方、エルザは『アヴァロン病院』で『魔導内視鏡』と『魔導カテーテル』を紹介していた。
「これは……」
「こうやって、使います。基本的に局部麻酔をして使った方が、患者さんへの負担は少なくなります」
「すばらしい……」
「前にも言ったかもしれませんが、医学の発展とは、特殊技能を持った一握りの『医師』が対応するのではなく、専用の器具を使うことで、より多くの『医師』が患者さんを救うことができるようになる、そういうことです」
「確かに……」
「では、順に使ってみて、ください」
「おお……これは……」
エルザが作成した『練習用人体模型』は、半透明なので、『魔導内視鏡』や『魔導カテーテル』が、どのあたりまで進んでいるかがわかる。
「一朝一夕では習熟できませんが、練習あるのみ、です」
「はい」
「今日の昼までにはもう5台ずつ、追加で納品される予定です」
もちろん、作っているのは仁である。
エルザは、練習に励む『医師』と『研修医』たちを指導して回るのであった。
* * *
同じ頃、仁は蓬莱島で『魔導内視鏡』と『魔導カテーテル』を作り終えていた。
「頼まれた台数の倍はできたけどな……」
作っていて、いくつか気が付いた改善点も直してある。
その1つ。
『吸収することもできるようにしたほうがよさそうだ』ということで、『魔導内視鏡』には、液状のものを吸い取れる機能も付けた。
消化管に残った、未消化の食物もを吸い取れるようになっている(通常は患者に、最低でも1食抜いてもらい、胃や小腸を空っぽにする)。
そしてもう1つ。
先端に『医療魔法』を放てる極を設けたのである。
これにより、治療後、即患部の『治癒』を行うことができるわけだ。
「それじゃあ持って行くとするか」
時刻は『アヴァロン』では午前11時。
『アヴァロン病院』で、この納品が大いに歓迎されたのは言うまでもない。
* * *
午前11時45分。
「完成だ」
「できましたね」
「間に合ったな」
ゴウたちは、ヘッドセットの必要数を完成させることができていた。
もちろん、動作チェックも含めて、である。
「これで午後から『思考会議』の最終テストを行ってもらえるな」
「ですね、グローマさん」
「楽しみね」
「まったくだな」
そこへアーノルトがやって来た。
「お、できたな。よくやってくれた」
ヘッドセットが完成しているのを見たアーノルトは、まず全員を労った。
「動作チェックは?」
「済みました」
「そうか、それなら安心だ」
「午後は予定どおりですか?」
「うん。午後1時半から、第1中会議室だ」
「わかりました」
「ヘッドセットはこちらで運んでおく」
こうして、午後からの『思考会議』テストの準備は整ったのである。
* * *
そして、昼休みも終え、午後1時、第1中会議室。
仁、エルザ、礼子、アーノルト、チェル、ゴウ、ルビーナ、エイラ、グローマらはもう来ており、準備を進めていた。
「今日は20人が集まってくれることになった。これが成功すれば……すると信じているけど……『思考会議』まではあと一歩だ」
「はい!」
「さあ、いよいよだぞ」
* * *
「やあ、今日は、この『アヴァロン』の歴史に残る記念すべき日になりそうだね」
最初に部屋に入ってきたのはアカデミー学長補佐のサホ・ショマス。
「今日は私も協力させてもらうよ」
「私もだ」
その次は『ゴー研』室長ラスナート・ハイルブロンと『航空研』室長ロア・エイスカー。
それからも、『医療研』のマスミ・ドウメンや、『機械研』副室長カイジ・オキ・イルノスキー、『通技研』副室長ナオ・スルハシといった、技術系の者たちが続々とやって来た。
もちろん管理職も、『アヴァロン総務局』庶務課長ノリヒト・カショムや『アヴァロン設備局』局員マーカス・ヨゴ、『アヴァロン軍務局』局員ゾデス・クグンといった面々も。
* * *
「さて、全員揃ったようですので、『思考会議』の実用化に向けて、最終チェックを始めたいと思います」
技術主任アーノルトが宣言し、いよいよテストが始まる。
「使い方は簡単です。このヘッドセットを被り、魔導機を起動すれば、あたかも会議室にいるように感じられるはずです」
「危険はないということでしたね?」
「ありません。それは、ここにいる製作者全員で確認しました。ご自分の意志で会議から抜けることもできますし、魔導機を停止すれば速やかに現実に復帰します」
「なるほど」
それからもアーノルトは詳しい説明を行っていった。
「……以上です。何か質問はありますか?」
「……くどいようだが、身体に害はないのだね?」
「はい、それは大丈夫です」
『医師』であるエルザも保証した。
「エルザ殿にもそう言っていただければ安心ですな」
「他にはございませんか?」
「思っていることが他者に筒抜け、ということはないのですね?」
「ありません。『話そう』と思ったことしか相手には伝わりません」
「わかりました」
「もう質問はございませんか? …………ないようでしたら、テストを始めたいと思います」
いよいよ『思考会議』の最終試験が始まる……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20240703 修正
(誤)『魔導カテーテル』
(正)『魔導カテーテル』
(誤)(通常は患者に1食抜いてもらい
(正)(通常は患者に、最低でも1食抜いてもらい
(誤)すると信じているけど……『思考会議』まだはあと一歩だ」
(正)すると信じているけど……『思考会議』まではあと一歩だ」




