96-62 ネットワーク、第一歩
1月21日になった。
この日は、『通信のネットワーク』と『転移魔法陣のネットワーク』を各国に構築する、その工事の初日である。
『通信のネットワーク』はデウス・エクス・マキナ3世が、『転移魔法陣のネットワーク』は仁が、それぞれを指導する。
もっともそれは初期のうちだけで、慣れてきたなら『アヴァロン』所属の職員・研究員だけで進めてもらうことになる。
「それでは、行ってきます」
「気を付けてな」
『アヴァロン』の飛行場から、『ハリケーン改』『アリストテレス』そして中型輸送機『エグレッタ』3と4が飛び立った。
『エグレッタ』には『アカデミー』の技術者たちが乗っている。
メンバーは、『通信のネットワーク』チームが、デウス・エクス・マキナ3世、従騎士レイ、『通信研究室』の技術者4名、荷物運び担当の助手ゴーレムの計7名。
『転移魔法陣のネットワーク』チームは、仁、礼子、『魔法陣研究室』(魔陣研)の技術者4名、荷物運び担当の助手ゴーレムの7名がメンバーである。
その4機がまず向かったのはエリアス王国。『アヴァロン』に最も近く、ネットワークを構築しやすい環境にあるからである。
とはいえ、着陸する場所は異なる。
『転移魔法陣のネットワーク』は主要都市に、『通信のネットワーク』は基本的に山中や荒野に。
なので同時に飛び立った4機は、途中で2機ずつ2チームに別れたのである。
* * *
デウス・エクス・マキナ3世のチームが向かったのはエリアス王国のハンバルフ峠。
ここはエリアス王国を南北に縦断する街道が通っている峠である。
かつて、仁、ラインハルト、エルザの一行も、ポトロックから首都ボルジアへの旅でここを越えている。
ここに中継器を埋設することで、首都ボルジアと『アヴァロン』の通信が今よりも簡単になるのだ。
マキナ3世のチームは、ハンバルフ峠の平坦地に着陸した。
この日はたまたまだろうが、休んでいる旅人もおらず、楽に工事が進められそうである。
「まずは縦穴を掘るんだ」
さっそくマキナ3世は指導を始める。
「『掘削』ですね」
「そうだ。見ていろ……『掘削』」
「おお……」
みるみるうちに、地面に直径30センチの穴が空いていく。
それが深さ20メートルほどになったところでマキナ3世は魔法の行使を止めた。
「こんなものだな」
「凄いですね……」
「いずれ君たちにもやってもらうからな」
「は、はい……」
今回のマキナ3世は、フルパワーの100分の1も出さずに作業を行っている。
なので、ちょっと(かなり?)頑張れば、一般の魔導士にもできるレベルのはずなのである。
「この穴に『中継器』を入れて埋め戻せば終わりだな」
「はい」
『中継器』は直径20センチほどの球。
外装は軽銀で、厚さ3センチ。
腐食に強く、万が一の落雷にも耐える仕様だ。
内部に『中継器』の本体が入っている。
『魔力供給の魔法陣』も3系統使われており、半永久的に稼働する。
埋めたポジションは記録しておくし、微弱な魔力を発信しているので探知も可能である。
「これでよし」
工事自体は計15分ほどで終了。
最後に動作試験として、ここから『アヴァロン』へ通信が可能かどうか、専用の検査器で確認すれば一連の作業は終了だ。
専用の検査器は、微弱な出力しかない通信機で、到達距離は30メートル程度。
これで通信ができるということは、中継器が正常に働いているということである。
「こちら『中継器設置チーム』。動作テストを行います」
『こちら『アヴァロン』。感度良好』
「了解。作業終了します」
こうして、まず1つ目の『中継器』設置は終了したのである。
* * *
一方、仁のチームは首都ボルジアへ。
「おお、ジン殿、ようこそ。ご足労をお掛けしますな」
出迎えたのはエリアス王国宰相ヴァスコ・ド・ジーノ。
『世界会議』にも出席していた有能な(少々苦労症の)重鎮である。
「準備は整っておりますぞ」
「助かります」
宰相は仁たちを案内し、王城の一角へと向かった。
そこには小学校の教室くらいの部屋があり、内部はきれいに片付けられていた。
「ここに設置をお願いいたす」
その場所は王城の中庭の南東。近衛騎士の控室のすぐ側で、警備面では十分。
回廊伝いで来られる場所で、王城の重要施設から遠すぎず近すぎず、また雨に濡れることもなく行き来することができる。
玉座までには2つの大扉があるので、万が一侵入者があっても守りは固い。
仁はそうした環境を説明され、納得した。
「わかりました。ではここに『転移魔法陣』を設置しましょう。……君たち、さあやるぞ」
「はい、ジン殿」
「まずは壁の整備だ」
そう、今度の『転移魔法陣』は壁に設置するタイプなのだ。
これなら、床に設置するタイプに比べ、磨耗に強い。
『魔陣研』のメンバーは、仁の指導の下、15分で設置を終えた。
仁は『転移魔法陣』のチェックを行い、異常がないことを確認。
「それじゃあ、開通試験として、助手ゴーレムに一度転移してもらおう」
「了解です」
リスク0とはいかないので、助手ゴーレムにテストしてもらうことになった。
転移先は『中継基地』で、そちらには対になる『転移魔法陣』が設置済みである。
なので助手ゴーレムはすぐに転移していった。
「おお」
そして10秒後には戻ってきて報告を行う。
「問題なく転移を行えました」
「よし、ご苦労。……閣下、設置終了です」
「おお……うむ、ありがとう、ジン殿、そして『魔陣研』の方々」
宰相は仁たちに礼を述べた。
「今現在はご存知のように『中継基地』に出ます。将来的にはそこを真の意味での中継基地にして、世界各国へ転移できたらいいですね」
「うむ、『世界会議』での検討案件だな」
「それでは我々は、これで失礼します」
「ご苦労でした」
こうして、『通信のネットワーク』と『転移魔法陣のネットワーク』は、まず第一歩を踏み出したのであった。
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本日3月7日(木)は14:00に
異世界でホムンクルスになっていたのでスローライフを目指す
https://ncode.syosetu.com/n8402fn/
を更新します。
こちらも応援のほどよろしくお願いいたします。
20240307 修正
(誤)専用の検査器は、微弱な出力しかない通信機で、到達距離は3メートル程度。
(正)専用の検査器は、微弱な出力しかない通信機で、到達距離は30メートル程度。
(誤)「こちら『中継器接地チーム』。動作テストを行います」
(正)「こちら『中継器設置チーム』。動作テストを行います」




