96-58 カート、テスト走行
ゴウとルビーナの眼下に広がるカートコース。
そこを走り抜ける1台のカート。
「うーん……なんとなくギクシャクしてるな」
「ゴウ、正解だ」
ゴウの呟きに、マキナ3世が反応した。
「サスペンションのストロークがちょっと大きい。で、軟らかいからロールしているんだ」
「ああ、そうですね」
「だから、立ち上がりでちょっとだけもたつくわけだな」
「わかりました……」
「とはいえ、ピットに入れて調整すれば済むレベルだがな」
そう言ってマキナ3世はピットインの合図を出した。
普段はコース脇にサインボードが出るのだが、今回はレイに直接『魔素通信機』で指示を出したのだ。
マキナ3世、ゴウ、ルビーナはピットへと向かう。
ちょうどそこへカートが戻ってきた。
「さあ、調整してみろ」
「はい」
ピット・インしたカートを、さっそくチェックするゴウとルビーナ。
ドライバーのレイに話を聞くことも忘れない。
「レイさん、安定性はどうですか?」
「サスが軟らかくてロールが大きい」
「ああ、やっぱり。ハンドリングは?」
「悪くない」
「アクセルレスポンスは?」
「こちらは上々」
「トータルでは?」
「今のところ、専用のカートの方がバランスがいいです」
「そうですか……」
感想を聞きながら調整を施していくゴウとルビーナ。
およそ5分で調整は終わり。
「足回りだけをいじってみました」
「これでお願いします」
「了解」
レイは再びカートを走らせ、ピットロードを抜けていった。
「さあ、今度はどうだ?」
「早く行きましょう」
観客席の一番上まで駆け上がるマキナ3世、ゴウ、ルビーナ。
「おお、今度はだいぶ安定したな」
明らかにロールが少なくなっている。
「タイムを取ってみればわかるぞ」
マキナ3世はそう言って、計測システムをオンにした。
自動で測定し、掲示板に表示してくれる。
「このコースの1周は520メートル、コースレコードは39.4秒だ」
ちなみに、富士スピードウェイのカートコースも1周が520メートルで、2024年2月時点のコースレコードが35.283秒だそうだ。
カートのレギュレーション(規約・規定)が異なるし、コースレイアウトも違うので一概に比較はできないが……。
「レコードホルダーは誰ですか?」
「『自動車研』のシルノ・ハスキーだな」
「ベテランなんですか?」
「オフの時はしょっちゅう来ているようだな」
「へえ……」
ここでふと、ゴウは気になったことを確認してみる。
「……レイさんのコースタイムは?」
「よく気が付いたな。34.1秒だ」
公開されているのは人間が出したタイムだからな、とマキナ3世は言った。
「そうでしょうね……でも、だとすると今のタイムはよくないですね」
「まあそうだな。……今度は38.9秒だ。少し速くなったぞ」
「でも、このあたりが限界っぽいですね」
「うーん、まあそうだな」
「……マキナ様が用意したカートと何が違うんでしょう?」
「そうだな。エンジン『だけ』載せかえてみるか?」
そうすればより比較しやすいだろう、とマキナ3世。
「いいんですか?」
「もちろんだ」
そこでマキナ3世はレイにピット・インさせた。
そして、実際に使われているカートを1台用意。
「これは、シルノが使っているカートじゃないが、同等のマシンだ。まず、レイに走らせてもらおう」
比較用、ということである。
レイは再度ピットから走り出していく……。
結果は、5周した平均が『34.8秒』、ベストは『34.5秒』。
「それじゃあ、エンジンを載せかえてみろ」
「はい!」
ゴウとルビーナは2人掛かりで作業を行う。
およそ10分で作業は終了した。
「うん、ちゃんと出来ているな。作業が速くなったな、2人とも」
「あ、ありがとうございます」
マキナ3世に褒められ、2人は少し照れた。
「よし、レイ、これで走ってみてくれ」
「わかりました」
今度も5周して、そのタイムを見る。
結果は平均が『35.2秒』、ベストは『34.9秒』であった。
「直線での最高速度も計測しておいたぞ」
「あ、そうですか! マキナ様、ありがとうございます!」
エンジン性能の差なのかどうかを知るためにも、最高速度の比較は重要である。
「ええと、換装前が時速62.2キロ、換装後が時速62.5キロだな」
「ほとんど、差がないですね……」
「むしろ換装後の方が少し速いくらい……」
「さあ、これをどう考える?」
「うーん……」
「えーと……」
マキナ3世に尋ねられたゴウとルビーナは考え込むのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20240303 修正
(誤)マキナ
(正)マキナ3世
地の文で3箇所修正。




