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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
96 アカデミー発展篇
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96-03 3日の夜

 3日の午後はのんびり過ごす仁たち。


「のんびりのんびりって随分繰り返すけど……」

「そのくらいしないと、のんびりしない人だから」

「なんとなく、わかる」


 エルザとルビーナが何か言ってるな、と思いながら、仁は台所で鍋をかき回している。


「お父さま、代わります」

「じゃあ、礼子に頼むかな。焦げ付かないように、そっとかき回してくれ」

「はい」


 そこへメルツェがやって来た。


「何をしてるんですか? ちょっと香ばしくて甘い匂いもしてますけど」

「お汁粉を作ってるんだよ。香ばしいのは小豆あずき……赤目豆が煮える匂いだろう。甘い匂いは砂糖だな」

「あ、お汁粉ですか!」


 仁が施設にいた時、お正月になると院長先生がお汁粉を作ってみんなに食べさせてくれたことを思い出しでいた。

 そこに焼いた餅を入れて食べるのだ。

 なお、入れた砂糖の重さの120分の1の塩を入れると甘さが引き立つと教わっている。

 まあ、『ひとつまみ』なのだが、工学魔法『分析(アナライズ)』でちゃんと計量しているのだ。


「よし、このくらいだな」


 味見をした仁は火を止めた。


「できたぞー」


 時刻は午後2時55分、おやつの時間にちょうどいい。

 飲み物は緑茶。醤油味のおかきも出す。なので今回、餅は入れない。

 蛇足ながら、もち米で作ったものがおかき(かき餅)やあられで、うるち米で作ったものが煎餅せんべいである。

 なお、小さいものをあられ、大きいものをおかきと呼ぶ。


「わあ、美味しそうです」


 メルツェはお汁粉が大好きなのだそうだ。


「甘さは標準にしてみた」


 重量比で小豆あずき(赤目豆)と同量の砂糖を入れると『甘〜い』お汁粉、8割で標準、6割であっさり……と仁は教わっている。

 つまり今回は8割だ。


「うん、美味い」


 猫舌の仁は冷ましながら食べている。

 合間におかきをつまむ。


「緑茶も美味しいです」


 甘さの程度は皆気に入ってくれたようだ。

 お茶にもよく合う。


「明日は『アヴァロン』に帰らないとな……」


 ぽつりとゴウが言った。


「そうね、5日から通常業務だもんね」

「そうですね……あっという間の休暇でしたね」


 ルビーナとメルツェも、ちょっと寂しそうに応じた。

 長い休暇の終わり間際というのは、ちょっと憂鬱になるものだなあと仁は内心で苦笑している。


「今夜は、ちょっと変わった献立だから、食べすぎないようにな」

「え、何が出るんですか?」

「それはその時のお楽しみだ」

「へえ……」


 そして3日の日は暮れていく……。


*   *   *


 午後6時半、厨房から漂ってくる香りに、食堂に入る面々は驚いていた。


「あれ、この匂いは……」

「……ペッパー? いや、シナモン? 違うな……」

「凄く刺激的な香りですね……」

「これが、ジン様の言ってた『ちょっと変わった献立』?」

「お腹のく香りですね」


 そして出されたのは……。


「お待たせ」


 当然、カレーである。


「おせちもいいけど……」


 自分の中では有名(?)なセリフを途中まで口にした仁であった。

 礼子がご飯の盛られたお皿を皆の前に配り、仁はテーブルの真ん中にカレーの入った寸胴鍋をどん、と置いた(鍋敷きはちゃんと敷いた)。


「さあ、これがカレーだ。ついこの前完成したばかりの料理だぞ」


 と言いながら鍋の蓋を開けると……。


「うわあ……」


 香りとともに、そのビジュアルが全貌を現す。


「な、なんというか、いい香りなんですけど、その、見た目が……」

「ああ、あまり見た目はよくないかもな。だけどまあ、食べてみてくれ」


 と言いながら、仁はまずエルザの皿にカレールゥを掛けた。


「いただきます」


 既に1度……いや、実はもう、2度カレーを食べているエルザはためらうことなくスプーンを口に運んだ。


「ん、美味しい」

「だろう? 今回は黒砂糖を少し入れてみたんだ」

「あ、だからコクが深まった」

「多分な」


 このやり取りを見たゴウが、皿を差し出した。


「ジン様、ください!」

「よし」


 ゴウの皿に少し少なめにルゥを掛けてやる仁。


「足りなきゃまた掛けてやるから」

「はい! いただきます!」


 思い切りよくカレーとご飯を口に運ぶゴウ。

 そして。


「美味しい! ジン様、これ、今までに食べたことのない味と香りですよ!!」

「おかわりもあるぞ」


 続いてルビーナが、そしてメルツェもお皿を差し出した。

 仁はそれぞれにルゥを掛けてやる。


「……んっ、辛い! でも美味しい!」

「一口食べると、口の中に香りが広がって……!」


 後は無言でカレーを食べ始めた2人であった。


 そしてダイキ、ココナ、アマンダのお皿にも掛け、最後は自分の分を用意し、食べ始める仁であった。


「うん、美味い」


 まだ完成度としては8割くらいだが、十分満足のいく味である。


「ジン様、美味しいです」

「この味、癖になりますね」

「また食べたいです!」


 おおむね好評なようで、仁も嬉しかった。


 結局、全員がお代わりしたのである……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >仁が施設にいた時、お正月になると院長先生がお汁粉を作ってみんなに食べさせてくれたことを思い出しでいた。 >そこに焼いた餅を入れて食べるのだ。 >なお、入れた砂糖の重さの120分の1の塩を入…
[一言] ハ◯スのカレーCM(笑) 林檎と蜂蜜とろ〜り溶けてる♪ この世界だと香辛料の値段が高いから金額を言わない方がいいね(笑) 400年前のジンも当時高価だった桃を平然とビーナの弟妹に与えていたか…
[良い点] 順調にカレークラフト・マイスターとして伝道師の道を。 [気になる点] 多分、今年のスピンオフの時代には、マギマイ定食はほぼ全部カレー定食に変わるものと。 で、一方ミヤコの片隅では、今までの…
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