93-28 仁の参加、そして
仁が『ハリケーン改』で『アヴァロン』に着いたのは現地時間午前1時。深夜である。
真夜中でも『アヴァロン』の機能は停止することはなく、管制塔も動いている。
「こちらジン・ニドーの『ハリケーン改』。着陸許可を求む」
『了解。飛行場には他の機はない。着陸灯を点灯させるのでそれを目標にされたし』
担当はゴーレムのようだ。
指示内容に問題はなく、着陸準備に入ると1番ポートのライトが点灯。
操縦士のホープは寸分の狂いなく着陸。
ゴーレムによる形式上のチェックが行われたあと、仁は礼子と共にアーノルトの工房を目指したのである。
* * *
「マキナ、来たぞ」
「おう、ジン!」
「ジンさん、わざわざ済みません」
「それはいい。……で、解析は?」
「進んでいない。『制御核』の内容はさっぱりだ」
「うーん……マキナとアーノルトでもわからないというのは尋常じゃないな」
少し疲れた顔……はしていないが、なんとなくそんな雰囲気を察する仁。
そこで、まずは仁も自分の目で確認するところから始める。
「内部構造はざっと見てるからいいとして、これが『制御核』か? かなりでかいな」
「そうなんだ。通常品より二回りくらい大きいんだよな」
「まあいい。……『読み出し』……うーん、なるほど」
仁も『制御核』の内容を読み出してみて、全く意味を成さないような文字列、魔導式、命令が出てくるだけなのを確認した。
「これで制御ができるはずはないんだがな……」
「ジンもそう思うだろう? 暗号化されているわけじゃなさそうだし、まったくわけがわからんぞ」
ここで仁はふと思いつく。
「マキナ、『読み取り機』を間に噛ましてあるとかはないか?」
「『読み取り機』か……なさそうだな」
『制御核』からは制御用の魔導神経線が伸びている。
『読み取り機』があるとすれば筋肉組織に接続される手前のはずだが、それらしいものは何もなかった。
「……全く異なる言語体系によるプログラミングの可能性は?」
アーノルトも思い付いた可能性を口にする。
「それは老君が検討している。読み取ったわけのわからない情報からは言語体系を構築できなかった」
「老君ができないなら言語じゃないんだろうな」
「え……? 言語じゃないとしたら何なんですか?」
「単なる文字の羅列だな」
「それでどうやって動いているのでしょう?」
「そこが問題だ」
『小型ゴーレム』も、命令されて動いているわけではなく、操縦されているわけでもなく、まして自分の意志で動いているわけでもなかった。
仁は『スレーブ』と評したが、何かこれまでとは違う、謎のテクノロジーがあるのかもしれない、とも思われる。
「まあ、まずはこっちだ」
『小型ゴーレム』のことはひとまず置いておいて、目の前の問題に集中することに。
「うーん、こうなったら、初心に帰ってみよう」
「ジン、どういうことだ?」
「いや、考えてもわからないから、手を動かそうということだな」
制御系でつまずいて止まってしまっている解析を、とりあえず進めようと仁は言った。
「そうだな、そうするか」
「そうしましょう」
マキナとアーノルトもそれに賛成し、3人は『敵ゴーレム』をさらに分解していく。
筋肉組織を取り外し、骨格を顕にする。
その次は動力炉だ。
「『魔素変換器』と『魔力炉』だな」
「効率は今ひとつっぽいが、それでも一般的なゴーレムより遥かに上だ」
「これだけのものだと……ほぼ『魔導大戦』時のレベルですね」
「今の時代だとかなり進んでいるわけだな」
そして頭部の分解に取り掛かり……。
「……いやにケーブルが多いな?」
「これは……そうか、わかったぞ!」
「ジン、どうした?」
「こいつの『制御核』は頭部にあるんだ!」
「ええ!?」
「論より証拠。見てみよう」
3人は大急ぎで頭部を分解する。
「あったぞ」
「これがそうか」
「読んでみよう。……『読み出し』……やっぱりな」
頭部で見つかった『制御核』を読み取ったところ、ちゃんと理解できる内容だったのである。
「つまり、胸部にあった『制御核』はダミーということか、ジン?」
「そうなるな。何のためかは不明だが」
「こうした分解解析への対策では?」
「それもあるかもしれないが、時間稼ぎにしかならないだろう……」
現にこうして見つけてしまったのだから、と仁は言った。
「そうですね……」
「いや、そうでもないか」
「え?」
仁は今自分で言ったことを否定する。
「もしかしたらこいつもダミーかもな?」
「ええ?」
「……なるほど、重要な『制御核』を頭部に配置していること自体がおかしい、というんだな?」
「マキナの言うとおりさ」
「だとしたらどこにあるでしょう?」
「魔導神経線を追っていけばわかるさ。……『追跡』……ほらな」
仁は僅かな残留魔力を追い、ついに真の『制御核』を見つけた。
「腹部の少し下……か」
人間でいえば臍のあたりにそれは収められていた。
「こんなところに……」
「臍……というより『腰』だな」
背中側にあるため、臍というより腰、という方がよりふさわしい、と仁は判断した。
「背中側の防御力の方が高めだからわからなくもないな」
マキナが感想を言った。
「ですね。腹部では打撃に弱いでしょうし」
「そうだな。この構造なら、前側には腹筋に相当する筋肉組織もあるし、こいつは保護ケースに入っているようだから、防御力も十分だろう」
ついに仁たちは『敵ゴーレム』の『制御核』を探し当てたようだ。
「解析しよう、ジン」
「もちろんだ、マキナ」
果たしてどんな成果が得られるのであろうか……。
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