92-03 『アヴァロン2』連結
3902年9月18日、蓬莱島時間午前11時18分、『アヴァロン』時間午前7時48分。
「おお、見えたぞ」
「大きいな……」
『アヴァロン』の監視塔から『アヴァロン2』が目視で確認された。
その数分後、甲板上からも見えるようになる。
「順調のようですね」
「さすがジンだな」
監視塔では最高管理官トマックス・バートマンとデウス・エクス・マキナ3世が。
「おお、来たな」
「すごい……」
「さすが、ジン様」
『アカデミー』の屋上ではアーノルト、ゴウ、ルビーナら研究員たちが。
「ううむ……」
「圧倒されますな……」
『世界会議』の関係者たちも建物の最上階から見物している。
「わあ、すごい」
「これって、世紀の瞬間に立ち会ってるってことですよね」
「そうよねー」
手空きの事務職の面々も甲板や建物の屋上で、『アヴァロン2』の到着を今や遅しと待ち構えているのであった。
* * *
『アヴァロン』時間午前7時57分。
『アヴァロン2』と『アヴァロン』との距離は100メートルまで近付いていた。
『アヴァロン』時間午前7時59分。
『アヴァロン2』と『アヴァロン』との距離、50メートル。
『アヴァロン』時間午前8時2分。
『アヴァロン2』と『アヴァロン』との距離は、ついに20メートルとなり、相対速度は0となった。
以降はこの距離を保つよう、構造材で連結、固定することとなる。
その手始めに、2つの構造物間に太いワイヤーロープが渡された。
これをもって『連結』の第一歩となる。
「おお! やった!」
「やったな!」
「やったぞ!!」
『アヴァロン』のあちこちから歓声が上がる。
「ついにやりましたな」
「ああ。ほら、ジンの配下が作業を始めたぞ」
「おお」
マキナとトマックス・バートマンの眼下では、『アヴァロン2』内部から出てきたゴーレムたちが、2つの施設を固定するための作業を開始したのが見えた。
「まずは鋼鉄製の構造材で距離を固定する。その後、64軽銀の構造材で補強していくわけだ。トラス構造を使うから軽くて強い」
「なるほど」
「おそらく今日中には連結を終えてしまうはずだ」
マキナの説明に、トマックス・バートマンは深く感心する。
「さすがジン殿ですなあ」
「だな。その後、2つを繋ぐ通路の建設が行われるだろう。それも多分1日で終わる」
「凄いものですな……」
この場合、仁の工事速度は一般人の20倍以上である。
「ジンだからな。俺も手伝うつもりだ」
「よろしくお願い致します」
* * *
ゴウとルビーナも仁のゴーレムたちが作業を開始する様を目の当たりにしていた。
「ついに『アヴァロン2』がやって来たわね」
「うん、さすがジン様だよねえ。あの大きさの建造物を難なく作ってしまうんだから」
「ちょっと真似できないわ」
2人の目から見ても仁の製造・製作速度は常軌を逸している。
「同感だよ。……でも、ジン様は1人で作っているわけじゃないからなあ」
「そうよね。配下のゴーレムたちが大勢いるわけだからね」
「でも、そのゴーレムたちを作ったのはジン様だから、結局はジン様の力、というわけだけど……」
「あたしたちには無理ね」
「でも、この前話し合っていた助手ゴーレムがたくさんいれば……」
「……うん、そういうことなのよね……」
考え込む2人。
「うーん、人手が欲しいなら『アヴァロン』のゴーレムを増やすという手もあるよ」
「あ、そうね。それならみんなの役に立つし」
「いつか自分の助手を作る時の練習にもなるし」
「……それっていいのかしら?」
「別に悪いことをしようとしているわけじゃないし、いいんじゃないかな?」
「そうよね……」
2人は自分なりに折り合いをつけたようである……。
* * *
仁は蓬莱島から仁Dを通して工事の様子を把握している。
「よしよし、順調だな」
『はい、御主人様。『アヴァロン2』側は準備を終えていましたから』
「そうだったな」
構造材の接合には溶接やボルト止めのような不確実な(こともある)方法ではなく、工学魔法による『融合』を使うため、異なる材料同士でも問題なく接合できる。
とはいえ、仁は元金属系の仕事をしていたので、『不向きな組み合わせ』『避けたほうがよい組み合わせ』はしていない。
これは『異種金属接触腐食』と呼ばれるもので、電解液中に導線で繋いだ異種金属を浸けると電位差が生じ、電流が流れる。同時に電位の低い方は腐食していく。
これが『異種金属接触腐食』である。
これを防ぐには電位差の小さい金属を使う(理想は全て同じ材質にする)こと、また接触部を濡らさないこと、あるいは接触部を絶縁することなどの対策法がある。
軽銀、あるいは64軽銀と鋼鉄の場合は電位差が大きいので、鋼鉄ではなくステンレス鋼にするという方法をとることがある。
しかし。
『工学魔法』にはもっと便利で効果的な対策があった。
「構造材は全て『安定化』処理してあるな?」
『はい、御主人様。抜かりはありません』
「よし」
『安定化』はかつてステアリーナが開発したオリジナルの魔法で、物質の分子構造を変化しづらくする効果がある。つまり化学変化が起きにくくなるわけだ。
これを仁が使えば『起きにくくなる』というよりは『起きなくなる』と言っていいほどの効果が得られる、というわけである。
そうした技術を駆使する仁と仁の配下たちは、世の常識をいろいろな意味で破るような作業を続けていったのだった。
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