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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
91 新たな技術篇
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91-38 仁のチェックと評価

「ゴウ、ルビーナ、頑張ってるようだな」


 5号工房をノックしたのは仁であった。礼子も一緒だ。


「あ、ジン様」

「こっちへ来ていたんですね」

「ああ。少し前にな。で、トマックスさんに挨拶して、アーノルトのところへ行って……で、2人のことを聞いたわけだ」

「そうだったんですか」

「で、何か揉めていたのか?」

「ええと、じ、実は……」


 ゴウは事情を説明した。


「ふうん、つまり『試作の試作』ができたけれど、試してみたいが人体実験は危険。で、どっちがやるかで揉めている、と」

「はい」

「はい……」


 どちらも相手に危険なことをさせたくないという思いからの揉めごとだと知って、仁は微笑ましく思った。

 そこでまず、仁もチェックを行ってみる。


「『分析(アナライズ)』……ふんふん、なるほど。ありあわせの材料でよくここまで作ったな」

「ありがとうございます」


 十分慎重に、といっても仁なので1分ほどチェックが行われる。


「……うん、少なくとも暴走することはないだろう」

「……ほっとしました」


 起動したら想定もしなかった高重力が発生する、などということはなさそうだと仁は保証した。


「それはともかく、2人とも、ゴーレムを借りることは思いつかなかったのか?」

「……え? ……あっ!」

「……思いつきませんでした……」


 ゴーレムを借り、操作を任せれば、ゴウがやるかルビーナがやるかという議論はしなくても済んだわけだ。


「まあ、自分たちで検証したかったんだろうけどなあ」

「はい……」


 ここで仁は1つの提案をする。


「気が付いて反省したならいい。……だけどな、2人とも、そろそろ助手を持ってもいい頃だな」

「助手ですか?」

「そう。相棒と言ってもいい。要するに俺の礼子、マリッカの花子、ロードトスの桃子、アーノルトのチェルみたいな自動人形(オートマタ)さ」

「それって……」

「ゴウは目標があったな?」

「はい」

「少し前にも言った気がするが、もう自動人形(オートマタ)を自作するのには十分な実力を持っていると思うぞ」

「でも……」

「ああ、別に同じものを作る必要はない。好きなものを作ればいいさ。ゴウにその気がないなら、ルビーナはどうだ?」

「あたしですか? ……うーん、ほしいような、まだいらないような」

「そうか」


 2人での研究開発が楽しくなって、余人の介在が嫌……それが自動人形(オートマタ)であっても……なのかな、と仁は想像してみる。

 が、今はそれにこだわる時ではないと思い直した。


「……と、話がれたな」


 仁は少し考えて、結論を出した。


「よし、今日は特別に礼子にやってもらおう」

「え!?」

「いいんですか!?」

「ああ。だから特別だぞ」


 仁はそう前置いて、礼子に試作を操作してくれと言った。


「はい、お父さま」


 礼子なら、たとえ試作が暴走して数十Gが生じても平気であろう。

 もっとも、仁がチェックしているのでそのようなことはまず起こり得ないが。


「で、『1人用重力調整装置』……でいいのか?」

「いえ、『重力均等化装置マギ・グラビティ・アジャスター』って呼ぼうかと」

「お、いいじゃないか。そうだな、1人用にこだわる必要もないだろうからな」

「はい」


 そんなやり取りをしている間に、礼子の準備は完了した。

 『重力均等化装置マギ・グラビティ・アジャスター』の試作の試作は大きいので、その上に座って操作するようになっている。


「いつでもいいです」


 それを聞いた仁は、ゴウとルビーナと共に、『試作の試作』から距離をとった。


「よし。2人とも、動作をよーくチェックしろよ?」

「はい」

「礼子、頼む」

「はい、お父さま。……始動します」


 宣言後、礼子は『重力均等化装置マギ・グラビティ・アジャスター』の始動スイッチを入れた。

 設定は『1G』なので、この時点では効果範囲内には1Gしか掛かっていないはずである。


「礼子、どうだ?」

「はい、お父さま。確かに1Gが保たれているようです」

「そうか。……ゴウ、ルビーナ、ちゃんと『観て』いるか?」

「は、はい!」

「大丈夫よ!」


 『分析(アナライズ)』『追跡(トレース)』『精査(インスペクション)』などを駆使し、自分たちが作り上げた『重力均等化装置マギ・グラビティ・アジャスター』の動作をチェックしていく2人。

 もちろん仁も行っている。

 異常がないことを確認したので、『試作の試作』に近付いての観察も行った。


「うーん、ちょっと魔力コンデンサの動作が甘い気がする」

「ありあわせだもんね」

「そのせいか、安定性がいまいちだ」

「でもフィードバック制御回路は完璧よ」

「うん、おかげで見かけ上は安定しているね」

「発生端子はまだまだ改良の余地がありそう」

「同感だ」


 など、仁から見ても濃い内容のチェックが行われている。

 内容も、仁自身の見立てとほぼ同じなので、そんなところからも2人の成長ぶりがうかがえた。


「……どうでしょうか、ジン様」

「うん、だいたいいいが、見落としている部分があるぞ」

「え、それは……?」

自由魔力素(エーテル)の消費率だ」

「え……」

「た、確かに確認してませんでした……駄目でしたか?」


 がっくりと肩を落とすゴウ。

 だが仁はすぐに否定した。


「ああ違う違う、逆だ、逆」

「逆……?」

「こんな寄せ集めなのに消費率が低い、つまり作動効率がいいんだよ」

「えっ」

「ほんとですか……?」


 仁は頷いた。


「こんなことで嘘を言うものか。作動効率がいいってことは、『魔法制御の流れ(マギシークエンス)』が適切だということだ。よくやったな」

「あ、ありがとうございます」

「なんか、嬉しい」


 仁に褒められ、少し戸惑う2人。

 だが、それは2人が技術者として成長した証でもある。


「そういうわけだから、この……なんだっけ? ああ、『重力均等化装置マギ・グラビティ・アジャスター』の開発にはちゃんと予算が下りるよう、口添えしておくよ」

「ありがとうございます」

「ありがとう、ジン様!」


 海底資源の採掘により、多くの鉱物資源が『アヴァロン』の倉庫に現在進行形で収められている。

 そのうちのいくらかは仁が私財で購入しており、今現在の『アヴァロン』の予算は臨時収入で潤沢なのである。


「それじゃあ、後の実験は自分たちでな」

「はい、わかりました!」


 というわけで仁と礼子は5号工房を後にしたのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 本日は 異世界シルクロード(Silk Lord) も更新しております。

     https://ncode.syosetu.com/n5250en/

     お楽しみいただけましたら幸いです。


 20230225 修正

(誤)「発生端子はまだまだ完了の余地がありそう」

(正)「発生端子はまだまだ改良の余地がありそう」

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― 新着の感想 ―
[一言] >「気が付いて反省したならいい。……だけどな、2人とも、そろそろ助手を持ってもいい頃だな」 78-08で仁の指導の下ゴウが作成した助手ゴーレム『ピスティ』   |||||orz|||| …
[良い点] >「こんな寄せ集めなのに消費率が低い、つまり作動効率がいいんだよ」 重力魔法陣弄った成果(だけではありませんが)が。 [一言] ル「あ、ジン様」 拷「こっちへ来ていたんですね」 仁「ああ。…
[一言] >「ああ、別に同じものを作る必要はない。好きなものを作ればいいさ。ゴウにその気がないなら、ルビーナはどうだ?」 男性型のを作ればアミィ78とは別物ってことで折り合いが付きそうではあるけど。…
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