91-21 第1の種目
『さあ、競技開始です!』
ラックハルト・ランドルのアナウンスが響いた。
『まずは第一の競技! 『リング状結界』で決められたコースを3周するタイムトライアルです!』
歓声が湧く。
機体は1メートルクラスと小型なので、超大型魔導投影窓に様子が映し出されている。
『まずはゼッケン1、シュウ・ニドー! 機体名『スカイハート』! その名を表すかのように、機体上面は青、下面は白に塗り分けられております』
『スカイハート』は曲線を多用したデザインで、主翼もまた楕円を引き伸ばしたような形状。ちょっと『スピットファイア』に似ている。
『シグナルが赤から青に変わり……今、スタートです!』
滑走路をスタートした『スカイハート』はぐんぐん速度を上げ、ふわりと離陸した。
『ジン様、いかがでしょう?』
『離陸の様子を見ると、翼面荷重が低そうだな。きっと軽く作られているんだろう』
『なるほど』
『スカイハート』は第1のリングをくぐり抜けるとさらに速度を上げ、肉眼では見えなくなってしまった。
だが大型魔導投影窓にははっきりと映っている。
『まもなく第2のリングに差し掛かります! その間、およそ8秒!』
『時速200キロを優に超えているな。なかなか速い』
500メートルを8秒なら時速は225キロ。模型飛行機としたら相当に速い。
『スカイハート』は危なげなく2つ目のリングをくぐり、Uターン。
その際にちょっと大回りをしている。
『うーん、方向転換をするなら水平旋回じゃなくインメルマンターンとするほうがいいと思うんだよな』
『ジン様、それはなぜですか?』
『方向転換するためには速度を落とす必要があるんだが、その際に上昇する方向で宙返りを半分行うことで、運動エネルギーを位置エネルギーに変換できるからだよ』
『つまり無駄がないということですね』
『そうだ。つまり速度が落ちた分高度が上がった。その高度を利用し、下降すればまた速度が上がる、というわけだ』
今回の『スカイハート』は水平旋回をしたため、大回りになってタイムロスしてしまったわけだ。
『それでも速い! 『スカイハート』、まずは1周! タイムは17秒2、およそ時速209キロとなります!』
『なかなか速いよな』
1度目の方向転換でのミスを理解したため、今度はインメルマンターンで方向転換を行っていた。
『お、今度はより速いぞ』
『2周目の『スカイハート』、速い! ……7.5秒で2つ目のリングをくぐりました! 速度はおよそ240キロ!』
『いい設計と巧みな製作があってこそのタイムだな』
仁も『スカイハート』の性能のよさには瞠目していた。
そして3周が終わり、『スカイハート』は見事な着陸を見せる。
『『スカイハート』、今、着陸! タイムは50.3秒! 平均時速は214.7キロとなります!』
観客席から拍手が送られた。
* * *
『さあ、次はゼッケン2、ユージン・フォウル! 機体名は『ブラックサンダー』! 黒く塗られた機体に金色の線が印象的です!』
その名のとおり、黒雲に稲妻が走るようなデザインの塗装がなされている。
機体は直線を多用したデザインで、仁はメッサーシュミットっぽいな、と感じたのである。
『シグナルが赤から青に変わり……今、スタート!』
『ブラックサンダー』はやや機体が重いようで、『スカイハート』よりやや長い距離を滑走してから離陸した。
そして第1のリングをくぐったあとはぐんぐん加速していく。
『なかなか速い。……ゼッケン1よりは翼面荷重が多いかな?』
飛び方の安定度から、仁はそう判断した。
単純に言って、機体が軽い、もしくは翼面荷重が小さい機体は運動性がよく安定性が落ちる。翼面荷重が大きい機体はその反対である。
『ブラックサンダー』は後者のようで、高速飛行に安定感がある。
『『ブラックサンダー』もなかなか速い! 片道8.3秒! 時速は216キロ!』
が、重い分、インメルマンターンの宙返り半径もやや大きく、幾分タイムロスがあった。
結果、
『ゼッケン2『ブラックサンダー』、タイムは52.6秒! 平均時速は205.3キロ!』
となったのである。
* * *
1機あたり2分ほどなので、競技はさくさく進む。
『続きましてゼッケン3、ナタリア! 機体名は『レッドアロー』! 真っ赤な機体が印象的です!!』
仁の『ジーク』同様、赤一色の機体である。全体に細身で、ラジエーター・ダクトがない『飛燕』っぽい機体だ。
翼面荷重はやや多めのようで、高速飛行は安定している。
『ゼッケン3『レッドアロー』、タイムは51.9秒! 平均時速は208キロ!』
なかなかのタイムである。
* * *
ゼッケン4、グリーナ・クズマの機体名は『シルヴィー』。渋い銀色に輝く機体である。仁の印象は銀色の紫電改だ。
タイムは50.4秒、平均時速は214.3キロ。
ゼッケン5、コンラッド・クズマの機体名は『イプシロン』。白を基調に、青と赤のラインが入っている。
仁としては例えるべき機体は思いつかなかったが、第2次世界大戦のドイツ戦闘機、Me209V4に似ている。
タイムは50.5秒、平均時速は213.9キロ。
ゼッケン6、ヴェルナー・ランドルの機体名は『バロン』。深緑色のゼロ戦っぽい色だ。だが形はラジエーター・ダクトのないPー51マスタング。
タイムは49.8秒……と言いたいが、最後にリングをくぐり損ない、やり直したため56.8秒。時速は190.1キロとなった(くぐり損なわなければ時速216.9キロ)
ゼッケン7、エルヴィス・アルコットの機体名は『ナイトバード』。漆黒の機体である。形状はベル XFLー1エアラボニータのよう(仁はこの機体のことは知らない……作者注)。
タイムは49.9秒、平均時速は216.4キロ。
ゼッケン8、フローレンス・ファールハイトの機体名は『ブルーローズ』。深い青色の機体である。仁の印象はラジエーター・ダクトのない飛燕。だがゼッケン3『レッドアロー』よりは翼面積が大きい。
タイムは52.5秒、平均時速は205.7キロ。
ゼッケン9、シドニー・マレクの機体名は『ウラカン』。水色と黒で塗られており、仁の印象は『ホーカーハリケーン』だった。
なかなか速かったが、最後のリングをくぐりそこねて引き返してきたのでタイムは57.1秒、平均時速は189.1キロとなった(ミスしなければタイムは50.3秒、214.7キロ)。
ゼッケン10、シーリーン・エッシェンバッハの機体名は『ティーガー』。視認しやすい黄色をベースに、青・緑・黒のラインが入っている。
なんと『推進式』で、震電によく似ている。
タイムは50・9秒、平均時速は212.2キロ。
* * *
『さて、ここでジン様に特別参加していただきます!』
ということで、仁もデモ飛行をすることになったのである……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20230208 修正
(誤)だが大型魔導投影窓にははっきりと写っている。
(正)だが大型魔導投影窓にははっきりと映っている。
(誤)『時速200キロを有に超えているな。なかなか速い』
(正)『時速200キロを優に超えているな。なかなか速い』
(誤)観客席から拍手が贈られた。
(正)観客席から拍手が送られた。




