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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
91 新たな技術篇
3573/4413

91-21 第1の種目

『さあ、競技開始です!』


 ラックハルト・ランドルのアナウンスが響いた。


『まずは第一の競技! 『リング状結界』で決められたコースを3周するタイムトライアルです!』


 歓声が湧く。

 機体は1メートルクラスと小型なので、超大型魔導投影窓(マジックスクリーン)に様子が映し出されている。


『まずはゼッケン1、シュウ・ニドー! 機体名『スカイハート』! その名を表すかのように、機体上面は青、下面は白に塗り分けられております』


 『スカイハート』は曲線を多用したデザインで、主翼もまた楕円を引き伸ばしたような形状。ちょっと『スピットファイア』に似ている。


『シグナルが赤から青に変わり……今、スタートです!』


 滑走路をスタートした『スカイハート』はぐんぐん速度を上げ、ふわりと離陸した。


『ジン様、いかがでしょう?』

『離陸の様子を見ると、翼面荷重が低そうだな。きっと軽く作られているんだろう』

『なるほど』


 『スカイハート』は第1のリングをくぐり抜けるとさらに速度を上げ、肉眼では見えなくなってしまった。

 だが大型魔導投影窓(マジックスクリーン)にははっきりと映っている。


『まもなく第2のリングに差し掛かります! その間、およそ8秒!』

『時速200キロを優に超えているな。なかなか速い』


 500メートルを8秒なら時速は225キロ。模型飛行機としたら相当に速い。


 『スカイハート』は危なげなく2つ目のリングをくぐり、Uターン。

 その際にちょっと大回りをしている。


『うーん、方向転換をするなら水平旋回じゃなくインメルマンターンとするほうがいいと思うんだよな』

『ジン様、それはなぜですか?』

『方向転換するためには速度を落とす必要があるんだが、その際に上昇する方向で宙返りを半分行うことで、運動エネルギーを位置エネルギーに変換できるからだよ』

『つまり無駄がないということですね』

『そうだ。つまり速度が落ちた分高度が上がった。その高度を利用し、下降すればまた速度が上がる、というわけだ』


 今回の『スカイハート』は水平旋回をしたため、大回りになってタイムロスしてしまったわけだ。


『それでも速い! 『スカイハート』、まずは1周! タイムは17秒2、およそ時速209キロとなります!』

『なかなか速いよな』


 1度目の方向転換でのミスを理解したため、今度はインメルマンターンで方向転換を行っていた。


『お、今度はより速いぞ』

『2周目の『スカイハート』、速い! ……7.5秒で2つ目のリングをくぐりました! 速度はおよそ240キロ!』

『いい設計と巧みな製作があってこそのタイムだな』


 仁も『スカイハート』の性能のよさには瞠目どうもくしていた。


 そして3周が終わり、『スカイハート』は見事な着陸を見せる。


『『スカイハート』、今、着陸! タイムは50.3秒! 平均時速は214.7キロとなります!』


 観客席から拍手が送られた。


*   *   *


『さあ、次はゼッケン2、ユージン・フォウル! 機体名は『ブラックサンダー』! 黒く塗られた機体に金色の線が印象的です!』


 その名のとおり、黒雲に稲妻が走るようなデザインの塗装がなされている。

 機体は直線を多用したデザインで、仁はメッサーシュミットっぽいな、と感じたのである。


『シグナルが赤から青に変わり……今、スタート!』


 『ブラックサンダー』はやや機体が重いようで、『スカイハート』よりやや長い距離を滑走してから離陸した。

 そして第1のリングをくぐったあとはぐんぐん加速していく。


『なかなか速い。……ゼッケン1よりは翼面荷重が多いかな?』


 飛び方の安定度から、仁はそう判断した。

 単純に言って、機体が軽い、もしくは翼面荷重が小さい機体は運動性がよく安定性が落ちる。翼面荷重が大きい機体はその反対である。


 『ブラックサンダー』は後者のようで、高速飛行に安定感がある。


『『ブラックサンダー』もなかなか速い! 片道8.3秒! 時速は216キロ!』


 が、重い分、インメルマンターンの宙返り半径もやや大きく、幾分タイムロスがあった。


 結果、


『ゼッケン2『ブラックサンダー』、タイムは52.6秒! 平均時速は205.3キロ!』


 となったのである。


*   *   *


 1機あたり2分ほどなので、競技はさくさく進む。


『続きましてゼッケン3、ナタリア! 機体名は『レッドアロー』! 真っ赤な機体が印象的です!!』


 仁の『ジーク』同様、赤一色の機体である。全体に細身で、ラジエーター・ダクトがない『飛燕』っぽい機体だ。


 翼面荷重はやや多めのようで、高速飛行は安定している。


『ゼッケン3『レッドアロー』、タイムは51.9秒! 平均時速は208キロ!』


 なかなかのタイムである。


*   *   *


 ゼッケン4、グリーナ・クズマの機体名は『シルヴィー』。渋い銀色に輝く機体である。仁の印象は銀色の紫電改だ。

 タイムは50.4秒、平均時速は214.3キロ。


 ゼッケン5、コンラッド・クズマの機体名は『イプシロン』。白を基調に、青と赤のラインが入っている。

 仁としては例えるべき機体は思いつかなかったが、第2次世界大戦のドイツ戦闘機、Me209V4に似ている。

 タイムは50.5秒、平均時速は213.9キロ。


 ゼッケン6、ヴェルナー・ランドルの機体名は『バロン』。深緑色のゼロ戦っぽい色だ。だが形はラジエーター・ダクトのないPー51マスタング。

 タイムは49.8秒……と言いたいが、最後にリングをくぐり損ない、やり直したため56.8秒。時速は190.1キロとなった(くぐり損なわなければ時速216.9キロ)


 ゼッケン7、エルヴィス・アルコットの機体名は『ナイトバード』。漆黒の機体である。形状はベル XFLー1エアラボニータのよう(仁はこの機体のことは知らない……作者注)。

 タイムは49.9秒、平均時速は216.4キロ。


 ゼッケン8、フローレンス・ファールハイトの機体名は『ブルーローズ』。深い青色の機体である。仁の印象はラジエーター・ダクトのない飛燕。だがゼッケン3『レッドアロー』よりは翼面積が大きい。

 タイムは52.5秒、平均時速は205.7キロ。


 ゼッケン9、シドニー・マレクの機体名は『ウラカン』。水色と黒で塗られており、仁の印象は『ホーカーハリケーン』だった。

 なかなか速かったが、最後のリングをくぐりそこねて引き返してきたのでタイムは57.1秒、平均時速は189.1キロとなった(ミスしなければタイムは50.3秒、214.7キロ)。


 ゼッケン10、シーリーン・エッシェンバッハの機体名は『ティーガー』。視認しやすい黄色をベースに、青・緑・黒のラインが入っている。

 なんと『推進プッシャー式』で、震電によく似ている。

 タイムは50・9秒、平均時速は212.2キロ。


*   *   *


『さて、ここでジン様に特別参加していただきます!』


 ということで、仁もデモ飛行をすることになったのである……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20230208 修正

(誤)だが大型魔導投影窓(マジックスクリーン)にははっきりと写っている。

(正)だが大型魔導投影窓(マジックスクリーン)にははっきりと映っている。

(誤)『時速200キロを有に超えているな。なかなか速い』

(正)『時速200キロを優に超えているな。なかなか速い』

(誤)観客席から拍手が贈られた。

(正)観客席から拍手が送られた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仁『やっぱり、ユージンの機体に対する食い付きが凄いな……』 楽『リアルではバレンタインデーが近いだけに、ですね……』 [気になる点] 仁『しかし、『スカイハート』以外の演舞がおざなりなのは…
[一言] >>その名を表す ハ「『ハート』は何処へ?」 運「う゛っ」 >>赤から青に変わり 仁「100%点灯するって自信の表れか」 エ「とあるレースで点灯しなかったのにスタートは問題なく行われたとか…
[気になる点] 試技の公平性を保つなら、ターンの仕方の指摘は全員の試技が終わってからにするべきだったんじゃないかな?
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