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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
88 アヴァロン躍進篇
3389/4342

88-09 助力と凶報

 場面は再び『フェニーチェ量産化プロジェクト』。


「へえ、機体の構造材は半自動化で量産できるんですね」

「そういうことだな」


 ゴウと話をしているのは航空研イーナ・コウキ。

 機体の生産現場での会話である。


「機体強度に関しては一切の妥協をしない。将来的にエンジンの換装で性能アップもできるんじゃないかと思っている」

「できますよ、きっと」


 元となった『ナイルⅧ』はそういった柔軟性のある設計をしていたからだ。

 その設計思想を少しでも受け継いでくれていれば、大きな設計変更なしに機体性能を向上させられるはずなのである。

 そのために、敢えて機体内部にギチギチに詰め込んだ設計をしてはいない。

 機体内部には僅かずつではあるが空間があり、装備の追加や内部構造の変更にもある程度対応できる(もちろん限度はあるが)ようになっていた。


「今日中に1番機がロールアウトするだろうな」

「楽しみですね」


 『アヴァロン』の工業生産力の粋を集めた工場である。

 軌道に乗れば、1日あたり4機を生産することができるという。

 まさに工学魔法マジック、である。

 溶融、注型、冷却という、時間的にもエネルギー的にも消費が大きい工程を踏む必要がないのだ。

 ただし、熟練の魔法工作士(マギクラフトマン)でなければならない、という但し書きは付くが。


「材料は足りるんですか?」

「大丈夫だ。今夕、輸送船が着く手筈になっている」

「それなら安心ですね」


*   *   *


 ルビーナはというと、『補助魔導頭脳』製作を手伝っていた。


「うーん、やっぱりジンの弟子だけのことはあるな」


 エイラ・シアータと一緒に、である。

 『アヴァロン』で思う存分研究・製作の日々を送った彼女は、仁と出会った頃の傲岸さは激減し、かなり丸くなっていた。

 とはいえ、元々の性格が性格なので、


「おい、そこの作業員、ちょっとミスリルを20グラム持ってこい、急げよ!」


 口の悪さは治っていないが。


「エイラさん、ここの『魔導式(マギフォーミュラ)』だけど、こう描いたほうがいいんじゃない?」

「うん? お、そうだな、そうしよう」


 ルビーナもまた、エイラとの共同作業が楽しくなりはじめているようだった。

 それもそのはず、マリッカに基本を教わり、『オノゴロ島』で研鑽し、仁に鍛えられているのだから、そんじょそこらの『魔法工作士(マギクラフトマン)』が束になってもかなうものではない。

 だがエイラもまた只者ではなく、魔法工学一筋に打ち込んできた叩き上げである。その経験値はルビーナを遥かに上回っていた。


「ここはこうした方が、全体的な効率が上がると思うよ」

「あ、そうですね」

「こっちはどうするかなあ……何かもう少しいい手がありそうだが」

「あ、それでしたらこうしてみたら?」

「お、よさそうだな」


 2人の連携は絶好調である。


*   *   *


 さて、仁である。


「お父さま、これだけあればいいのですか?」

「ああ、いいと思う」


 仁は資材課へ向かっていた。

 非常時ということで、先日納品した『魔結晶(マギクリスタル)』とは別に、(蓬莱島基準で)中品質のものを50個、寄付するのだ。


「ジン様、ありがとうございます!」


 アヴァロン資材管理官のリザ・コカインは仁を様付けで呼び、下にも置かずにもてなす。

 それほど、魔結晶(マギクリスタル)不足は深刻なのだ。


「なら、またお譲りしますよ」

「助かります! 相場の3倍出しても構いません!」

「いや、そこは相場で結構です」


 などというやり取りも。


「軽銀とかミスリルとかアダマンタイトなんかは大丈夫なんですか?」

「ええ、それは大丈夫です。今日の午後、セルロア王国から船便が着くことになっています」

「それはよかった」


 基本的に素材は、セルロア王国・エリアス王国・ショウロ皇国・エゲレア王国といった、海に面した国から援助金の代わりに貰っているのだ。


「そうすると、当面足りない資材は?」

「ええと、細かいことを言えばキリがないんですが、『魔導樹脂(マギレジン)』が予定量の3割を切ってしまっています。なんとかやりくりをして、来週の入荷まで保たせられると思いますが」

「『魔導樹脂(マギレジン)』か……」


 『魔導樹脂(マギレジン)』は魔力に反応する樹脂全般を指していう。

 一般的なゴーレムによく使われている。

 原料は魔力を持つ樹木、『マギピーネ』から採った樹脂などが代表的。

 これを実用化したのは初代『魔法工学師マギクラフト・マイスター』、アドリアナである。


「確か、パンドア大陸でも採れた気がするけど、輸送にはちょっと遠すぎるか」

「そうなんですよ。転移魔法陣の設置もまだ遅れていますからね」

「そっちも進めないとなあ」


 転移魔法陣は比較的手軽な反面、起動に時間が掛かったり、耐久性が低かったりというような問題がある。

 今現在、仁や元の『新技研』で検討されつつあった魔法陣技術を使えば、飛躍的に輸送量が伸びるだろう。そう仁は考えていた。


 だが今は、『魔導樹脂(マギレジン)』である。


「『ハリケーン』に少々在庫があるから譲りましょう」


 この申し出は渡りに船だったようだ。


「ありがとうございます! 相場の3倍で……」

「いや、相場でいいですから」


 そういう流れとなり、仁は『ハリケーン』の積み荷のふりをしつつ『蓬莱島』から『魔導樹脂(マギレジン)』を、『転移門(ワープゲート)』を使って200キロほど取り寄せたのだった。


「助かります、ジン様!」

「これで当分、大丈夫かな?」

「はい!」


 ホッとした顔のリザ・コカイン。

 だがそこに凶報が飛び込んでくる。


「大変です!」

「こら、お客様がいらしているのですよ?」


 同じ資材管理課の若手が、血相を変えて飛び込んできた。


「あ、す、すみません」

「それで、どうしたのです?」

「は、はい、セ、セルロア王国からの船便が沈没したとのことです!」

 いつもお読みいただきありがとうございます。


  本日7月31日(日)は

 『蓬莱島の工作箱』を更新しております。

   https://ncode.syosetu.com/n0493fy/

  お楽しみいただけましたら幸いです。


 20220731 修正

(誤)転移魔法陣は比較的手軽な反面、軌道に時間が掛かったり

(正)転移魔法陣は比較的手軽な反面、起動に時間が掛かったり


(誤)ただし、熟練の魔法工作士(マギクラフトマン)でなければ、という但し書きは付くが。

(正)ただし、熟練の魔法工作士(マギクラフトマン)でなければならない、という但し書きは付くが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仁「材料はこれで全部だな」 礼「はい」 『ふぉーみんぐ』 ててーん!「完成」 熟練した技術は魔法に見えうんぬん ルビ「まだ、むり!」 ゴウ「あ、う、うん、目指すのは良いよね」 このあ…
[一言] >「へえ、機体の構造材は半自動化で量産できるんですね」 型に流し込んだりプレスしたりする専用のゴーレムで自動化? >軌道に乗れば、1日あたり4機を生産することができるという。 蓬莱島だ…
[一言] 次話の最初に乗員の安全を聞くかどうかでアヴァロンの底が見えるのだ。
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