88-04 発見した場所は
デウス・エクス・マキナ3世と従騎士レイを乗せた『フェニーチェ』は時速300キロでエリアス王国を目指した。
「マキナ様、とても扱いやすい機体です」
「そのようだな」
マキナの乗機『アリストテレス』も、時速300キロでついてきている。
そして念のため、蓬莱島から『アルバトロス』10と11の2機が支援に来ていた。
『アルバトロス』は1人乗りで、最高速度は時速600キロ。
武装しており、標準武装はレーザー砲2門。
そして力場発生器を追加装備しており、空中で停止することもできる機体である。
「もうすぐ『フラットヘッド山』が見えてくる頃だが……」
「マキナ様、見えました」
「おっ、そうだな」
麓の台地にある『ドーサ鉱山』近くに、『世界警備隊』の小型飛行船が着陸しているのが見えた。
「『フェニーチェ』は『アリストテレス』に着艦させよう」
滑走路がないので、そうしない限り飛び続けなければならないのだ。
『アリストテレス』は硬式飛行船であり、扁平な気嚢を持っているため、『フェニーチェ』を上部に着艦させることが可能なのだ。
……もちろんこっそり『力場発生器』も併用する。これは主にずり落ちないように、である。
「『アリストテレス』、降下」
『フェニーチェ』の中からマキナは指示を出す。それは内蔵魔素通信機で『アリストテレス』内の乗員である『スペース』たちに伝えられた。
『アリストテレス』はマキナの乗機として有名である。『ドーサ鉱山』に派遣された『世界警備隊』の面々は安心感を持ってその着陸を歓迎した。
「マキナ殿、よく来てくださいました」
ジョルダ・カーターが一歩進み出てマキナたちを出迎えた。
「出迎えありがとう。カーター殿だったか、君からの提案を聞き、急遽『フェニーチェ』を改造して持ってきたよ」
「は、ありがとうございます!」
「急ごしらえの改造だが、時速500キロは堅い。操縦はレイ、補助は俺が行う。任せてくれ」
「それは……は、お願いいたします」
マキナたちに任せるのは多少気が引けたが、最適任者であると考え直し、素直に助力を受け入れたジョルダ・カーターであった。
* * *
マキナはもう1つ、手を打つことにした。
『こそ泥ゴーレム』が運び出していく『魔結晶』に『魔力処理』を施すのだ。
通常、天然の『魔結晶』が魔力を帯びることはないが、土属性魔法で採掘される、あるいは火属性魔法で爆破されて採掘されるなど、大きな魔力にさらされた場合、極稀だが魔力を帯びることがある。
そうした『魔結晶』を装い、『マーカー』を謎の敵の下へ送り込もうというのである。
これがあれば、『魔力探知機』を使って敵本拠地を特定できる可能性がぐんと向上する。
やり方は簡単。
採掘ゴーレムが掘り出した『魔結晶』の原石全部に『採掘』の魔導式を書き込んでおくのだ。
『採掘』なら不自然ではないし、書き込む場所は精錬時に削り落とされるような低品質の部分にしておくことで、価値の低下を予防する。
一旦魔導式が書き込まれてしまった『魔結晶』は価値が下がるからである。
* * *
相変わらず『こそ泥ゴーレム』は原石をくすねている。
マキナは、採掘現場から運び出される『魔結晶』の原石全てに『採掘』の魔導式を書き込んだ。
そしてマキナの思惑どおり、『こそ泥ゴーレム』は2個の原石をくすねた。
その様子は『波長変換ゴーグル』を装着した3人から目撃されている。
もちろん、マキナとレイも目撃者だ。2人ともボディは自動人形であり、視界は可視光以外に拡張可能なのだから。
(これで老君も魔結晶が送られていく先を特定できるだろう)
計画どおりである。
あとは、いつ『謎の飛行船』が飛び立つか、であった。
* * *
その日は思ったより早く来た。
6月17日の昼、『謎の飛行船』は、『魔結晶』を積み込むと、ゆっくりと発進したのである。
「おお、飛び立ったな」
「任せてもらおう」
『アリストテレス』もまた飛び立った。
そして『謎の飛行船』を追い、スピードを上げる。
時速150キロくらいのところで、気嚢上部に係留した『フェニーチェ』が解放された。
もちろんマキナとレイは乗り込み済みである。
『アリストテレス』は『謎の飛行船』と距離を取る。
『フェニーチェ』もまた、『アリストテレス』ほどではないが距離をおいて『謎の飛行船』を追った。
その速度はおよそ時速350キロ。
「『アヴァロン』の飛行船では追いつけなかったな」
それを予想したジョルダ・カーターの判断は大したものだ、とマキナは称賛した。
『謎の飛行船』の向かう先は、やはりプレアデス諸島の1つ、『アルキオネ島』、その西端。
偽装された建物内の転移魔法陣を使い、くすねた魔結晶を送り出したのも前と同じ。
だが今回は、その魔結晶の中に『マーカー』が仕込まれていたことが異なる。
『『魔力探知機』で場所を特定できるはずです』
そして、老君は『魔力探知機』の能力をフルに活用した。
* * *
『魔結晶の転移先を特定。……む、これは……』
そのポジションは旧レナード王国とセルロア王国国境の『エントス山』。
しかもそこは、『魔法探求者』の拠点がある『クェント村』のすぐ近く。
『むむ……これは、『しんかい』のような『中継地点』なのかもしれませんね……』
侮りがたい相手である、と再認識する老君。
『謎の黒幕』の正体はまだ判明しない……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20220726 修正
(誤)ジョルダー殿だったか、君からの提案を聞き
(正)カーター殿だったか、君からの提案を聞き




