86-37 密告?
店員その4が『制御核』の梱包時に行った無駄な動作。
梱包前に制御核を、一旦銀色のトレイに置く、というその動作は、観察している忍伍に違和感を与えた。
(距離もありますし、私のセンサーでは魔力を感じませんが……)
『忍部隊』は身長5センチ。
等身大のゴーレムと比較した場合に性能が劣るのは致し方ないところである。
その分、隠密性に優れているのだから。
(とりあえずは老君に報告しておきましょう)
忍伍は内蔵魔素通信機で連絡を取った。
『なるほど、それはたしかに怪しいですね。早速確認しましょう』
蓬莱島の頭脳、老君は、すぐに『覗き見望遠鏡』を用い、その『銀色のトレイ』を確認。
すると。
『これは……? 思った以上に複雑なようですね……』
トレイは多重構造になっているようだった。
そこで老君は時間を掛け、じっくりと調査する。
その結果。
『内部に魔法陣が仕込まれていましたか……しかもこれは……御主人様にお伝えしたほうがいいですね』
* * *
即、老君は仁に知らせた。
仁はすぐに司令室にやって来る。
「どうした、老君?」
『はい、御主人様、これをご覧ください』
老君は大型魔導投影窓に魔法陣を映し出す。
「これは……書き込み用の魔法陣か」
『はい』
「内容は……ここか!」
『銀色のトレイ』には工学魔法を発生させる魔法陣が隠されており、その内容は『バックドア』を書き込むものだったのだ。
「ここで……この段階で『バックドア』を書き込んでいたのか!」
『はい、ついに見つけました』
「よくやってくれた」
『どう対処致しましょうか?』
「そうだなあ……」
仁たちが対処するか、それとも、今ウラウの町にいる『世界警備隊』にやらせるか。
後者の方が後々の面倒がなくていいのだが、どうやって知らせるか、という問題がある。
仁は老君と検討を行った。
* * *
そのウラウの町。
『世界警備隊』情報局局員ゼーガ・ランバンの前に男が現れた。
『第5列』のブラウである。
「ゼーガ殿ですね?」
「君は?」
「私はブラウと申します。よろしくお見知りおきを」
「……こちらこそ」
警戒しつつ、ゼーガ・ランバンは挨拶を交わした。
そしてすぐ、疑問を問いかける。
「まず、どうして私のことをご存知なのですか?」
「『世界警備隊』情報局局員、ゼーガ・ランバン殿。どうしてか、は、今は言えません。が、あなたに協力したいと思っているのです」
「……それで、何を?」
「『販売代理店』から出荷される『光属性』の制御核には『バックドア』が仕込まれています。それを仕込んだのは『販売代理店』です」
「何!?」
ゼーガ・ランバンの顔が険しくなる。
「なぜ、そこまで知っている?」
明らかにブラウを警戒しているのだ。それも当然だろう、とブラウは思った。
「私の身分は明かせませんが、決して敵対するつもりはありません。それだけは信じてください」
そう言ってブラウは身を翻し、街角に消えた。
少し遅れてゼーガも追いかけたのだが、見失ってしまったのである。
「……どう考えるべきか……」
貴重な情報が得られたことに間違いはない。
「だが、真実とは限らないしな……」
しかしゼーガは、この内容で自分を騙すメリットは小さい、と判断した。
そこで、どうにかして『販売代理店』の調査だけはしてみようと考え始めたのである。
* * *
同じく、ウラウの町。
町中で聞き込みを行ってはいるが、今ひとつ成果が上がらないペギー・ゼノス。
「……何か、いい情報がないかと思ったんですけどねえ」
つい、愚痴っぽい独り言を漏らした、その時であった。
「あいたっ」
何かが頭にぶつかったのである。
実際にはそれほど痛くはなかったが、不意を突かれて驚いたがゆえの声である。
「……なにこれ?」
足元に転がったのは丸めた紙。中に小石が入っているらしく、そのせいで少し痛かったらしい。
ペギーはそれを拾い上げ、広げてみた。
「これ……」
そこには、
『『販売代理店』で『光属性』の魔結晶に『バックドア』が仕込まれている。『銀色のトレイ』に注意』
という情報が書かれていたのである。
これを書いて、小石を包んで丸め、投げ付けたのはもちろん『第5列』のディーナ。
(これ……信じてもいいのでしょう? でも……デタラメだったら『特に問題なし』、本当だったら一大事、ですよね……)
と、そう判断したペギーは、『販売代理店』へと足を向けたのだった。
* * *
「あっ」
「あっ」
『販売代理店』の前で鉢合わせしたペギーとゼーガ。
「先輩」
「お、おう」
「先輩も来てたんですね」
「まあ、そういうわけだ」
「重要な案件ですからね」
「そういうことだな」
この2人、少し前までは組んで調査をすることが多かったのだ。
ゼーガ・ランバンが先輩で、新人のペギー・ゼノスを指導する、という意味でだが。
ペギーも十分仕事を覚えたということで、今回は単独での調査を任されたわけであるが、期せずして指導担当の先輩とその後輩が出会ったことになる。
『世界警備隊』としても、2人で事に当たることを特に禁じているわけではないので、これは問題のない出会いであった。
そして2人は、久々に組んで仕事をすることになったのである。
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本日4月24日(日)は14:00に
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