86-36 手掛かり?
老君は『オエフェ鉱山』の調査を完了した。
『もぬけの殻ですね……』
古い……崩れ果て、風化した出入り口が見つかり、そこから辿ってそれらしい空洞を発見。そしてそこに何か『魔導機』が存在していた痕跡……はあったのだが、それだけ。
何も残っていなかったのである。
『仮に、ここに『移動型魔導頭脳』があったのだとしたら……』
老君は、空洞の形状から対象の大きさを推測しようと試みる。
『最小』は無理でも、『最大』の大きさは推測可能だ。空洞以上の大きさのはずがないのだから。
『縦横高さ、およそ3メートル、といったところでしょうか。部屋の形からいって、おそらく円柱状でしょうね』
部屋の平面形状が円形だったことからの推測である。
もちろん正しいかどうかはわからない、が、それなりに可能性は高いと思われる。
『問題は、どうやってここから出したかですが』
それだけの大きさのものを出すことのできる出入り口がないのだ。
年月を経て埋まったとかそういうことではなく、最初から設けられていない様子。
『床の痕跡を見ると、転移魔法陣のようですね』
床を磨いた跡があり、描かれていた転移魔法陣を消したのだろうと老君は推測した。
『消したのは人間もしくは作業用ゴーレムでしょうね』
その人間も作業用ゴーレムも今はもうおらず、確認のしようがない。
情報量が少なすぎるのだ。
『建造時の資料も残っていませんしね』
ここから得られる情報はもうない、と老君は判断し、『オエフェ鉱山』の調査を打ち切ったのだった。
* * *
「なるほどな……なかなか尻尾が掴めないな」
『はい、御主人様』
蓬莱島では仁が老君から報告を聞いていた。
仁は休憩中で、いざというときのために仁Dは老君が代わって操縦している。
『新たな可能性として、『販売代理店』の店長が何も知らないという事も考えられます』
「それもあるのか……」
『はい、御主人様。密かに寄生され、うまく利用されているという……』
「だとしたら、かなり巧妙だな」
『はい。『指導用』の魔導頭脳なら、そうした計略も得意でしょう』
「そうかもしれないな……」
正面から挑んでこない、こうした相手は初めてだ、と仁は顔を顰めた。
が、こういう時こそ、こちらもそうした企みを暴きつつ正体に迫ってやろう、と思い直す。
そのための手段は十分にあるのだから。
「そうすると、これからどうする?」
『やることは変わりません。『謎の黒幕』を見つけ出します』
見つけ出したあとは……相手次第である。
* * *
さて、24日、ウラウの町。
『第5列』の『ブラウ』と『ディーナ』は調査を続けている。
もちろん『忍部隊』も。
そして、今のところ『忍部隊』の活躍の時であった。
店長マオリクスに張り付いて観察しているのは忍壱。
(特に怪しげな行動はしていませんね……)
店員その1には忍弐。
(うーん、普通の店員ですね……勤務態度はよくも悪くも普通です)
店員その2には忍参。
(この店員は……ちょっと真面目すぎますね……)
店員その3には忍肆。
(……まあ普通、なんでしょうか。適当に力を抜いて仕事をしていますね……)
店員その4には忍伍。
(これは……!?)
忍伍が驚いたことに、店員その4は仕事中にナンパをしていたのだった。
(怪しさをカムフラージュするため……というわけでもなさそうですね……)
と、そんな観察をしている『忍部隊』。
そんな中、店員その1の行動に忍弐が疑念を抱く。
それは、彼の行動が判で押したように周期的になる時が見受けられたからだ。
* * *
店員その1は入庫担当である。
今は『魔結晶』が入荷したところ。
ゆえに店員その1は『フープラ鉱山』から送られてきた魔結晶を分類して箱詰めする作業をしていた。
(うん!?)
判で押したように周期的な動作をしている店員その1に気が付いた忍弐。
(魔結晶を手に取り、属性を確認。そして品質別の箱に入れる。その繰り返し。だが)
それら一連の動作が、コンマ数秒の誤差しかないのである。
人間が行う動作としてみたら、この誤差は小さすぎる。
(だが、この店員は間違いなく人間だ)
老君が『覗き見望遠鏡』で体内を確認しても、作り物ではなく生物のそれであった。
(特定の作業のみ、操られている?)
だが、魔力波は感知できない。
外部の影響を受けているとは考えられなかった。
(と、すると催眠暗示……?)
だとしたら何らかの方法で解除できるはずである。
折を見て『覚醒』を試してみようと思いついた忍弐であった。
* * *
店員その4は出荷担当である。
ナンパは失敗したようで、店に戻って仕事をしていた。
今は『魔法探求者』から購入した制御核を箱詰めしている。
(うん?)
忍伍はほんの少し違和感を持った。
(……無駄な動作をしている……?)
とはいえ、人間の作業である。時に無駄が交じるのは当然と言えるかもしれない。
(ですが、これは……)
その無駄を交えての動作が、4度、同じように繰り返されたのである。
その『無駄』とは、制御核を一旦銀色のトレイに置いて2秒待ち、その後梱包する、という動作。
(間違いなく、あの銀色のトレイに何かありそうですね)
どうやら、ようやく手掛かりを掴んだらしい……。
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