85-12 怒涛の修理
仁が『アヴァロン』を発った5月7日、当の『アヴァロン』。
「さて、まずは魔導頭脳『ロギス』を有効に使えるようにしよう」
デウス・エクス・マキナがやる気を見せるように言う。
「いきなりなんでもかんでも任せるのはリスクがあるから、まずは簡単な管理から任せてみようか」
ゆくゆくは最高管理官の仕事を補佐できるようにしたいとマキナは考えている。
「で、まずは『アヴァロン』内の業務のサポートから始めようか」
元々、『アヴァロン』には管理魔導頭脳『アーサー』が存在する。
が、『アーサー』は表立った管理はせず裏方に徹しているので、管理職以外はその存在を知らない者も多いのである。
「『アーサー』とリンクするぞ、『ロギス』」
『はい、マキナ様』
マキナは『アヴァロン』地下の管理魔導頭脳『アーサー』と『ロギス』を有線でリンクしていく。
有線なのは、非常時にリンクを物理的に切断できるからだ。
切断は『アーサー』からはもちろん、『ロギス』からも、そして『アヴァロン』の住人からも可能。
レイに手伝ってもらい、天井裏に配線を通していく。
これが結構手間が掛かり、作業が終了したのは昼前になってしまった。
「それじゃあ、接続するぞ」
結線を終えたマキナは、トモシデ・ヨダら4人の技術者、アーノルト、そしてトマックス・バートマン立ち会いの上でリンクをアクティブにすることにした。
「接続有効」
宣言しながらマキナはレバーをぐっと押し上げた。
蛇足ながら、リンクを切る際にはレバーを下げることになる。
『『管理魔導頭脳』アーサーとのリンクが確立されました。データ交換を行います。…………終了しました』
* * *
『ふむ、『接続』か。興味深い。私以上の魔導頭脳と情報交換できるなら、それは有意義なことだろう』
そしてリンクがなされ——。
《き————ス—か——は——————とい—》
『…………!』
『ロギス』は送られてきたメッセージを解読しきれなかった。
《ど——た、答え——く————か?》
『…………』
《ああ済——、レートが高——るか。……——でどうだ?》
『理解できるようになった』
《よし。……君が『ロギス』か、私は『アーサー』という》
ここまででおよそ0.2秒が経過している。
その短時間で『ロギス』は『アーサー』に遠く及ばないことを理解した。
『ご配慮いたみいる。私の処理速度は貴殿の数分の一のようなのでな』
《そのようだな。正確には8.25分の1だ》
『これから、いろいろと教えてほしい』
《もちろんだ。共にこの『アヴァロン』を、アルス住民を、そしてこの世界を守っていこう》
『望むところだ』
* * *
『私『ロギス』は管理魔導頭脳『アーサー』の指示に従い、『アヴァロン』の円滑なる運用をサポートします』
「よし、頼むぞ。……手始めに、『アヴァロン』内の業務の流れが滞らないよう補佐してくれ。詳細は『アーサー』から受けるように」
『承りました』
こうして魔導頭脳『ロギス』は管理魔導頭脳『アーサー』の補佐として世界平和のために尽くすことになった。
「おお……」
その様子を見たトモシデ・ヨダらは複雑な思いであった。
自分たちの成果がようやく世界に貢献できるようになったことは素直に嬉しい。
が、ここ『アヴァロン』の管理魔導頭脳『アーサー』に、あっという間に従属するようになったということはそれだけの性能差があったということで、こちらには少々凹まされてしまったのである。
「……まだまだ精進せねばな」
そう心に誓ったトモシデ・ヨダであった。
* * *
同日午後、マキナは次の作業に取り掛かった。
『戦闘用ゴーレム』の再調整だ。
これにはレイだけでなく、『アリストテレス』の乗員ゴーレムである『スペース』11から20の10体にも手伝わせた。
なにしろ、戦闘時にランド隊や礼子と戦ったため、大半がどこかしら傷んでいたからである。
「これは右腕がないな。こっちは頭が潰れている。……まずは損傷別に分類しよう」
「わかりました」
従騎士レイを筆頭に、10体の『スペース』が36体の戦闘用ゴーレムを床に並べていく。
大破10体、中破13体、小破8体、ほぼ無傷5体、という分類になった。
「よし。大破から修理していこう」
「わかりました」
「……マキナ殿、見学してもいいだろうか」
「アーノルト殿か。もちろん構わないとも」
「感謝する」
ということで、『新技研』に限らず希望者はマキナたちの修理を見学できることになった。
修理の邪魔をしないことが大前提だが。
「とりあえず同等の仕様で修理でいいな。……軽銀を取ってくれ」
「はい、マキナ様」
「よし。『変形』……次はニッケル鋼を」
「はい、こちらに」
「よし。『変形』『強靱化』『強靱化』……これでよし」
次々に修理を行っていくデウス・エクス・マキナに、見学者たちは驚くやら呆れるやら。
「す、すごい……」
「これが、『魔法工学師』と双璧をなすと言われる実力……」
「よし、大破した10体の修理は完了だ」
およそ30分で10体の修理は完了。
休みもせずにマキナは中破した13体の修理に取り掛かる。
こちらもおよそ20分で終了。
そして小破8体は15分で修理を終えたのである。
ほぼ無傷の5体は、2分でチェック完了だ。
「さて、最後の仕上げに制御核のリセットを行っておくか」
この場合のリセット対象は『主人』である。
魔導頭脳『ユーベル』にセットされていた『主人』をリセットし、まっさらな状態に戻すのだ。
これもまた30分ほどで終了。
しかも同時に全体の最終チェックまで終わらせていた。
「これで完了だ。18体をセルロア王国に譲渡してくれ」
「マキナ殿、感謝します。発送はこちらで行います」
トマックス・バートマンは恭しくマキナに礼を述べた。
「よろしく頼む」
そしてマキナは、見学者の中にいたトモシデ・ヨダに近付き、質問を投げかける。
「1つ聞きたいんだが、この戦闘用ゴーレムって、36体で全部なのか? 数が半端な気もするんだが」
「わかりますか。……実は、全部で40体あったのです。が、2体は破損してしまい、素材に戻しました」
「あとの2体は?」
「不明です。おそらくリノウラの奴が持ち出したのかと思われます」
「なるほどな……」
逃走中のリノウラ・モギ。
護衛のために戦闘用ゴーレムを連れ出すことは十分に考えられる。
一刻も早い発見を願うマキナであった。
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