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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
84 子孫の弟子篇
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84-13 誕生日と新メンバーと

 春たけなわとなった4月22日。

 ベルチェの誕生日である。

 『仁ファミリー』は蓬莱島につどい、お祝いをしていた。


「ベルチェ、誕生日おめでとう」

「ベルチェさん、おめでとうございます」

「ベルチェ、おめでとう」

「誕生日おめでとうございます、ベルチェさん」


 皆がそれぞれにお祝いの言葉を掛け、ワインを注いでくる。

 そのたびにベルチェはグラスを空にし、また次の者がワインを注ぐ……のだが、グラスは特別製で、5ミリリットルも入れればいっぱいになった様に見えるので、20杯飲んでもやっと100ミリリットルだ。


 ラインハルトの奥方ではあるが、ベルチェはあまりアルコールには強くないので弱めに『解毒(エントギフテン)』の魔法が発動するよう『仲間の腕輪』を調整しているので、まさに『ほろ酔い』以上にはならない。


「皆さん、ありがとうございます」

「僕からもお礼を言わせてもらおう」


 そう言って、ベルチェとラインハルトは夫婦揃って会釈を行った。


 今回はプレゼントのやり取りはなし。

 毎年のことなので、贈る方も贈られる方も負担だろうというベルチェの意見でそうなった。


「……これが『ジンファミリー』の方々か……」


 そして、もう1人。

 フィリシャスである。

 妹デルフィナと共に、彼も『仁ファミリー』の一員となったのだ。

 『仲間の腕輪』はシルバーグレイに金色のマーブル。デルフィナがシルバーグレイに金色のラインなので、同じ配色になったのだ。


「末席に加えていただけて光栄です」

「そんなこと言っていないで、こっちに来なさいよ」


 シオンがフィリシャスを呼んだ。隣にはマリッカもいる。


「はあ、シオン様、マリッカ様、何でしょう?」


 フィリシャスはシオンに呼ばれ、そちらへと歩んでいった。

 デルフィナは悪戯っぽい笑みを浮かべ、その背中を見つめている。


「フィリシャスにも紹介しておくわね。こちらは『長老』ターレスさん。あなたが『北の賢人』と呼んだその人よ」

「シオン殿、面映おもはゆいのでその呼び名はやめてくださらんか」

「ターレスさん、お気持ちはわかりますが、そういう紹介をしないと、フィリシャスとデルフィナには伝わらないじゃないですか。だから今回だけは許してくださいね」

「む、マリッカ様にそう言われては是非もありませんな」


 そんなやり取りをしているシオンとマリッカ、『長老』を見て、フィリシャスは固まっていた。


「『北の賢人』殿……?」

「兄さん、兄さん!」

「あ、ああ……」


 デルフィナに背を叩かれてフィリシャスは我に返った。


「賢人様、お会いできて光栄です!」

「いや、だから賢人はやめてくれぬか」

「では、『長老』様、と」

「……もう、それでよい」


 『長老』ターレスも、フィリシャスが持ち上げるので閉口しているようだった。


 一部でそんなやり取りもしているが、蓬莱島での集まりは和やかに進んでいくのであった。


*   *   *


「そういえば、明後日は春の園遊会だって?」


 ラインハルトが仁に尋ねた。


「そうなんだ」

「礼儀作法とかマナーとか大丈夫なのか?」

「まあまあかな。エルザに特訓してもらったし」

「そうか」


 一応、仁は名誉貴族扱いであるから、それなりの行動をせねばならない。

 400年前も宮中にはたびたび顔を出さざるを得なかったので、多少なりとも作法やマナーは知っていた。


「主役はゴウとメルツェ、それにルビーナだけどな」

「まあそうだが、保護者役というか後見人も大変だろう?」

「なんとかなるだろう」

「春の園遊会は堅苦しくないしな」


 基本、丁寧な言葉遣いと控えめな態度を取っていればとがめられることはない。

 一般常識にのっとった行動をすればいい……と言われるが、その一般常識が国によって、また人によって多少異なるのが困りものである。

 その異なる部分を覚えるのがマナーを覚える第一歩である、とラインハルトは言った。


「とは言ってもな。ラインハルトやエルザと違って、俺は一般人だからな」

「今は違うけどな」

「混ぜっ返すなよ」

「すまん。まあ、慣れるしかないな」

「それはわかってはいるんだがな」


 そこでエルザも話に加わった。


「大丈夫。ジン兄はひととおり覚えたし、私もいる、から」

「そうだよな。頼りにしてるよ」

「ん」


*   *   *


 また、シオンはロロナと話し込んでいた。


「素敵な集まりね」

「ええ、でしょう?」

「でも、確かにここにいる方たちは『表舞台』に出られない人が多すぎるわ。秘匿しなければならないというのがよくわかる」


 既にこの世のものではないはずの人物がここにいる。しかも若い頃の姿で、ともなれば、常識でははかれない集団だということを嫌でも認識することになる。


「そうしたことをばらさないだろうという信頼の証でもあるのよ」

「そうよね」


 信頼してくれたからこそ『仁ファミリー』の一員になれたということを、ロロナは改めて噛み締めていた……。


*   *   *


 『長老』との話が一段落ついたフィリシャスは、改めて仁に礼を言っていた。


「ジン様、本当にありがとうございます。このような、国家を超えた集団の一員にまでしていただいて」

「いや、有能なメンバーは大歓迎さ」


 仁としては、惑星『ヘール』を皆の第2の故郷にできたらいいな、と思っている。

 そのためには有能な同志は1人でも多い方がいいのだ。

 が、まずは『今』のことである。


「フィリシャスはこれからどうする?」

「しばらくはマリッカ様のお世話になり、今の時代について学んでから決めようかと思っています」

「そうか、そうだな」


 デルフィナはガスマダ島の地下施設の管理者として公式に知られているが、フィリシャスはまだだ。

 日を改めて公式にデビューしたほうがいいだろうなと仁は思っていたが、それもフィリシャスの希望次第である。


「いずれにしてもサポートするから」

「その時はお願いします」


 メンバーの増えた『第二期仁ファミリー』。

 彼らの進む道は、果たして……。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20220107 修正

(誤)グラスは特別性で、5ミリリットルも入れればいっぱいになった様に見えるので、

(正)グラスは特別製で、5ミリリットルも入れればいっぱいになった様に見えるので、

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― 新着の感想 ―
[良い点] フィリシャス、ようこそ戻れない世界へ! 仁「出来れば、もう一人紹介したいのがいたんだけど」 出「彼は今、アヴァロンの研究室長で、忙しい身ですからね。それに、彼は私達マリッカ党員ではなく、 …
[一言] >>特別製 振「お猪口でも良かったんじゃ・・・」 皆「・・・空は大丈夫か?地震は来ないか?」 振「おい・・・」 >>これが 出「何を見比べていたのかしら?」(^ω^# 斜「いや、ちが・・・…
[一言] >>そのたびにベルチェはグラスを空にし、また次の者がワインを注ぐ ……のだが、グラスは特別製で、5リットルも入れればいっぱいになった様に見えるので、20杯飲んでもやっと100リットルだ。 …
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