84-10 ロイザートへ戻る仁
4月13日、『世界会議』からの指示で、『世界警備隊』の調査団がガスマダ島を訪れた。
メンバーは世界警備隊アヴァロン勤務陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテス、陸戦隊隊員アレオ・ヨカ・ナイツ以下3名。
同行するのはアヴァロン技術管理官リンカス・カンデ、土木研副室長ルザー・ブドー、新技研室長補佐ラスナート・ハイルブロン。
それに護衛の汎用ゴーレム2体となる。
現地では管理者であるデルフィナが出迎えた。サポートのため『フィル』が隣りにいる。
「皆様、ようこそ」
移動は管理棟に設置した転移魔法陣を使ったので楽であった。
「初めての方もいらっしゃいますね。私はここの施設の管理者となりましたデルフィナと申します」
『アカデミー』関係の面々は顔を見知っていたが、『世界警備隊』のメンバーは初顔合わせであった。
「陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテスだ」
「同隊員、アレオ・ヨカ・ナイツ」
以下3名も名乗りを上げる。
自己紹介が済むと、デルフィナは説明を始めた。
「ここはジンさんがお建てになった管理棟です。こちらは『フィル』。これまでここを管理してきたゴーレムです。彼もジンさんが改造してくれました」
「おお……」
「ジン殿が……」
こうして仁の名を出すことにより、技術的な不安を払拭するのである。
「では、さっそくご案内致しましょう」
転移で訪れたので移動の疲れなど微塵もなく、一行はデルフィナと『フィル』に導かれるまま施設へと赴いたのであった。
* * *
同日、『新技研』。
「エイラ、届いたぞ!」
研究室内にグローマ・トレーの声が響いた。
何が……と、大半のメンバーは思った……が、エイラはすぐに察した。
「届いたか!」
「ああ。早速解析してみよう」
「もちろんだ!」
包みを開ける時間ももどかしいほど、2人はワクワクしながら注文品を確認した。
「お」
「これが、か……」
現れたのは球形ではなく円盤状に加工された魔結晶だった。
直径は4センチほどで、厚みは3ミリくらいだ。
「説明書が入っているぞ」
「どれどれ」
簡単な説明書が同梱されているあたり、そこそこ親切なようだ……と2人は思った。
「ふむ、これはこの魔結晶……というより制御核の取説だな」
「なかなかわかりやすく書かれているじゃないか」
特殊な電子デバイスを購入した際に、端子の説明や接続例などが書かれた取説が入っていたようなイメージであろうか。
これなら、中級くらいの魔法工作士なら、これを利用してゴーレムや魔導機をつくれそうだ、とエイラとグローマは思ったのである。
そして、いよいよ解析である。
「まずは読み取ってみようか」
「そうだね」
「では。……『読み出し』……おお!」
『読み出し』は制御核に刻まれた内容を『言語的』に読み取る工学魔法である。
エイラとグローマの眼前に、淡く光る『魔導式』の列が現れた。
「ほう……」
「綺麗な構文だな」
「無駄がまったくなさそうだ」
「ちょっとジンの書いた構文に似ているな」
「ああ、確かに」
つまり、初代『魔法工学師』アドリアナ・バルボラ・ツェツィの系譜かもしれない、とグローマは言った。
それはあるかもな、とエイラも同意。
『アドリアナ記念館』ができたので、アドリアナの歩みと功績は一般にもだいぶ浸透してきたのである。
「3代目であるジンにも見せてみたいな」
「ああ、同感だ。何ていうだろうな?」
2人はそんな空想をするのであった。
* * *
ようやく諸々のことにケリが付いた仁はロイザートに戻っていた。
春の園遊会に備えて、作法やマナーを復習するためである。
「おかえりなさい、ジン兄」
「ただいま」
「いろいろ、ご苦労さま」
「まったくだ。思ったよりいろんなことがあったよ」
「ん、聞いてる」
ロイザートに戻った仁を、エルザが労った。
「他のみんなは?」
「ダイキさんとココナさんは、ゴウとルビーナとメルツェのマナー講師。アマンダさんとイェニーさんも一緒」
「そうかあ……いよいよ俺もやらなきゃだめか」
「ん。ジン兄は、私が」
「……お手柔らかに頼むよ」
そういうわけで、仁も園遊会に向けて作法やマナーを学び直すことになったのである。
……翌日から。
「あ、ジン様、おかえりなさい」
「ジン様、おかえりなさい」
居間に戻ってきたゴウとルビーナが仁を見つけ、嬉しそうな顔になった。
「ジン様、お帰りなさいませ」
少し遅れて入ってきたメルツェはきれいなカーテシーでお辞儀をした。
「メルツェ、上手」
「ありがとうございます」
エルザが褒めると、メルツェは嬉しそうに微笑んだ。
「ふうん、すっかり小さな貴婦人だな」
仁もメルツェを褒める。
「あ、ありがとうございます」
少し頬を染めて照れるメルツェ。そんな仕草もどことなく気品が出てきていた。
と、メルツェの仕草にばかり目が行っていたが、ゴウとルビーナも随分と作法が身についてきているな、と仁は思った。
それを口にすると、
「わあ、そうですか? でしたら嬉しいです」
「ほんと? ジン様から見てもよくなった? ……なりました?」
「そうだな。未成年のマナーとしたら合格レベルだろう」
仁自身、そうした会には何度か出席しているので、見る目だけはある。
逆に言えば、『こうしては駄目』ということくらいは承知しているのだ。
「ジン様、いろいろ大変だったようですね」
居間にやって来たダイキも仁を労った。
その後アマンダとイェニー、そしてココナもやって来たので、仁は何をやって来たかを説明するとともに、不在だった時のロイザートの様子も教えてもらったのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
この話を持ちまして、2021年の更新は終了させていただきます。
今年1年ありがとうございました。
更新再開は2022年1月5日(水)12:00を予定しております。
きたる年もどうぞよろしくお願いいたします。
本日12月26日(日)14:00に、
『蓬莱島の工作箱』を更新します。
https://ncode.syosetu.com/n0493fy/
お楽しみいただけましたら幸いです。
お知らせ:2021年12月27日(月)昼前から2022年1月4日(火)昼過ぎまで不在となります。
その間レスできませんのでご了承ください。
2022年スペシャルを1月1日から4日までアップする予定です。
お楽しみいただけましたら幸いです。
20211226 修正
(誤)移動は管理等に設置した転移魔法陣を使ったので楽であった。
(正)移動は管理棟に設置した転移魔法陣を使ったので楽であった。
20220306 修正
(誤)その後アマンダとイェニー、そしてココナもやって来たので。
(正)その後アマンダとイェニー、そしてココナもやって来たので、




