80-02 ログハウス
仁が今頭を悩ませているのは、『ルトグラ砦』の地下施設である。基地と言ってもいい。
昨日、王の叔父フランシスを王都まで送っていった際に、セルロア王国国王ボザールから直接依頼されたのである。
国王ボザールとしては、国の中枢に入り込んだ『公平党』の問題を優先的に解決したいので、『ルトグラ砦の地下の基地』の方は『魔法工学師』にお任せする、というのである。
もちろん無償で、ではなく、軽銀10トン(時価20万トール)、ミスリル銀1キロ(時価400万トール)が依頼料となる。
軽銀は随分と値が下がったものだなあ、と仁は感じている。
これも、仁が精錬用魔導具を作ったおかげだ。
アルスには軽銀、地球でいうチタンが大量に存在する。が、そのほとんどは酸化物として存在するので、金属として取り出すのが難しく、高価であったのだ。
それが仁の魔導機のおかげで、3460年にはキロ200トール。3900年にはキロ20トールまで下がっている。
円に換算するとキロ200円くらいで、地球におけるアルミニウムのキロ250円(2021年時ではもう少し上がって290円くらい)よりも安くなった。
閑話休題。
特に仁の頭を悩ませているのは『第1地下』の基地である。
具体的には魔導頭脳『イザーク』だ。
今は停止させているが、再起動すればまた暴走するだろうと思われた。
「やっぱり記憶情報をバックアップしてから作り直しかなあ」
『はい、御主人様。それが一番かと思われます』
「その場合、『イザーク』が俺の配下になるんだよなあ……」
そうなった場合に、『第2地下』の魔導頭脳がどう反応するか不明である。
「つまり、まずは『第2地下』の魔導頭脳と話をしてみる必要があるわけか」
『そうなりますね』
「……よし、これ以上考え込んでいても時間の無駄だ。まずは『第2地下』の魔導頭脳と話をしてみよう」
『『分身人形』ですね?』
「そうなるな。……チェルかハーンに一緒に来てもらいたいな」
『お二方は『大聖堂』の方にいます』
「ああ、復興を手伝っているんだったな」
そうなると、まず転移門か転移魔法陣をルトグラ砦に設置する必要があるな、と仁は考えた。
そうすれば、移動時間を考慮せず、チェルやハーンも『第2地下』に戻るのが楽になるだろうからだ。
「となると、飯場みたいなものを仮設しようか」
『それがいいですね。撤去も楽です』
「うーん……」
手っ取り早いのは『ハリケーン』のような航空機をそこに着陸させ、それを使うことだ。
が、『ハリケーン』は移動で使う必要が出てくる可能性が大である。
「かといって宇宙船はまずいしな」
『そうですね』
「素直に仮設の建物を作って、『コンドル』か何かで運んで設置するか」
『それが無難かと』
「よし」
第1の方針が決まったので、仁は飯場用の建物をルトグラ砦と大聖堂に1棟ずつ、計2棟作ることにした。
大きさは4メートルの6メートルほど。
中に『転移魔法陣』を設置し、2棟を互いに行き来できるようにする。
一応、管理者として『職人』98と99を常駐させ、勝手な利用ができないようにする予定だ。
ログハウス風の木造にする。
仁のイメージは大昔のプレハブ住宅で、パネルを組み合わせ、筋交いの代わりに鋼線で張力を掛けているような建物なのだが、この世界では違和感がありすぎるのでログハウスにしたのだった。
30分で2棟完成。『強靱化』を掛けてあるので、10年くらいは保ちそうだ。
一応、基礎部分を1メートルほど地面に打ち込むようになっている。
「それじゃあ、これを『コンドル』……いや、『イーグル1』で運ぼう」
『わかりました』
『イーグル1』は巨大風力式浮揚機である。
重作業用ゴーレムの『ダイダラ』運搬用だが、カーゴルームを持ち、物資も運搬できる。
直径15メートルの円形翼を4つ持ったドローンのような形状で、最大離陸重量は10トン。
今回作ったログハウスは、1棟が3トンくらいなので2棟いっぺんに運べる。
設置は『職人』5体が行う。常駐する2体も含め、7体の『職人』が同乗して行くことになる。
マイナス4時間20分という時差があるので、『イーグル1』が現地……『ルトグラ砦』に着いたのは午後3時半だった。
付近には警備の兵が数名いるだけである。
彼らには、仁Dが『ハリケーン』でやって来て、事前にこうした大型機が到着すると伝えてあるので騒ぎにはならなかった。
「よし、設置だ」
「はい」
『職人』が7体いるので作業は早い。
基礎工事から設置まで10分で完了。
遠巻きに眺めていた兵士たちはあっけにとられている。
「おいおい……うそだろ?」
「小屋を運んできて……置くだけ? じゃないよな」
「穴も掘っていたけど……なんでこんな短時間でできるんだ?」
「さすが『魔法工学師』ってことか……」
「陛下に信頼されるわけだな……」
そして仁Dが確認し、OKが出ると、『イーグル1』はクゥプ目指して飛び立った。
仁も、『職人』98を残し、「ハリケーン」で飛び立った。
ほどなく2機はクゥプに到着。
こちらにも話は通してあるので、混乱は生じなかった。
工事も10分で終了し、『職人』5体を乗せて『イーグル1』は蓬莱島へと戻っていった。
「さて、これでOKだ」
動作試験として、『職人』98と99が互いに行き来し、確認を行ってくれた。
「さーてと、それじゃあチェルを捜そう……あ、いたいた」
仁Dはチェルを捜したのだが、イルミナ・ラトキンとメイ・シャイ・ジョーイの2人と話し込んでいるのですぐ見つかった。
簡単な打ち合わせのようだったので、話し終わるのを待つ仁D。
1分も待たずにチェルは仁Dの方を見た。
「ジン様、何かご用でしょうか?」
「うん。……あと、ハーンはどこにいるかな? 2人に話があってさ」
「少々お待ち下さい。……ああ、あそこにいます」
時刻は午後4時を回ったところ。
ハーンは『大聖堂』改装の副責任者の相談を受けているところであった。
汎用ゴーレムだけあって、ハーンの知識の幅は広い。
どうやら『ディナール王国』の建築様式について説明を行っているようであった。
横で聞いていた仁Dであるが、けっこう面白い内容であった。
話は3分後に終わり、ハーンは仁Dに向き直った。
「これはジン様、何か御用でしょうか?」
「ああ。ハーンとチェルに話があるんだ。こっちに来てくれ」
そして仁Dはハーンをログハウスに連れて行った。
そこには既にチェルが待っている。
「それじゃあ、中に入ろうか」
仁Dに続き、チェルとハーンもログハウスの中に入ったのである。
いつもお読みいただきありがとうございます。
20210716 修正
(誤)国王ボザールとしては、国の中枢に入り込んだ『公平党』の問題をを優先的に解決したいので、
(正)国王ボザールとしては、国の中枢に入り込んだ『公平党』の問題を優先的に解決したいので、
(旧)仁は飯場用の建物を2棟作ることにした。
(新)仁は飯場用の建物をルトグラ砦と大聖堂に1棟ずつ、計2棟作ることにした。




