表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
3006/4343

79-33 捜査前夜

 『脳波検査機(ブレインディテクター)』の使い方を数名に説明し終えた頃、チェルとハーンが最高管理官の執務室へ戻ってきた。

 デウス・エクス・マキナ3世とレイも一緒だ。


「おお、チェルさん、ハーン殿、いかがでしたかな?」

「ええ、有意義なひとときでした。ここ『アヴァロン』がこの世界の最先端を行くということが理解できたようです」

「それは何よりでした」


 そしてチェルはテーブルの上に載せられた『脳波検査機(ブレインディテクター)』を見つけ、


「まあ、もう完成したのですか? しかも10台……11台も!」

「ええ、1台は有効距離が10メートルで、小型の10台は有効距離が5メートルです」

「ああ、なるほど! 小型化の方を優先なさったのですね。さすが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ですわ」

「ありがとう」


 これで準備はいいだろうかと仁Dがチェルに尋ねると、


「できましたらあと1つ、お願いしたいことが」

「何だ? 俺にできることならいいぞ」


 それを聞いてチェルの顔が明るくなる。


「そうですか! ……ええとですね、わたくしの『リミッター』を解除していただきたいのです」

「リミッター?」

「はい。今の私は平均的な人間の女性の1.5倍くらいの身体性能しか出せておりません。リミッターを解除すれば、今の20倍の性能を発揮することができます」

「ほう」

「その分、ボディへの負担も大きいのですけれど」

「そういうことか。……だけど、修理のために停止して再起動したら、俺の魔力パターンが登録されてしまうぞ」


 その場合、自動的に仁D……仁がマスターもしくは至上の主人(アークマスター)扱いになってしまう。


「いえ、停止せずとも解除できるのです」

「そうなのか?」

「はい」


 チェルができる、というので、仁Dはリミッター解除をしてやることにした。

 場所は『ハリケーン』の中。

 マキナ3世と従騎士レイも立ち会っている。


「あらためて聞くけど、リミッター解除の条件は?」


「はい。パスワード『今日の花を摘む』を入力後、再度『明日の日を想え』の入力。その後わたくしが『解除リリース』と宣言すれば解除されます」

「それでいいのか?」

「はい。音声のみで解除できます。ただし、パスワードの入力の方は自分や、ハーンではできません」

「それはなぜだ?」

「勝手にリミッター解除ができないようにです」

「いや、そうではなく……ああ、他者の魔力パターンでないと無効なのか」

「そういうことですね」


 ただし、製作者だけは例外のようだが。

 そのシステムを知り、仁Dを通じて聞いていた仁は少し感心した。


(ハード的ではないリミッターか……セキュリティも2重になっているし、興味深いな)


 が、今はチェルのリミッター解除である。

 ここで礼子が口を開いた。


「……チェルさん、リミッターが解除されたあなたが、わたくしたちを襲わないという保証は?」

「お疑いはごもっともです。が、パスワードを唱えた方を襲うことはできません。……それにつきましては、制御核(コントロールコア)を参照していただいても構いません」

「わかった。信用しよう」

「いいのですか?」

「礼子もいるしな」


 礼子なら、リミッターの外れたチェルであっても、問題なく無力化できるであろうから。


「よし。……『今日の花を摘む』……『明日の日を想え』」

「『解除リリース』」


 仁Dのパスワード詠唱に続き、チェルの解除宣言がなされる。


「……どうだ?」

「……………………無事、解除に成功。ジン様、ありがとうございます」


 チェルは仁Dに礼を述べた。


「これで本来の性能を発揮できます」

「……それはいいが……20倍って言ってたけど、ボディが保つのか?」

「なんとかなります」


 仁Dが見たところ、特に骨格が強度不足に思えてならないのである。

 フルパワーでの戦闘を行ったら、まず間違いなく骨格が歪むと思われた。

 おそらくそれは製作者の技量不足ではなく、『魔導大戦』末期の資材不足によるものであろう、とも。


(まあ、チェルが直接戦闘するような機会はないだろうからな……)


 と思い直す仁であった。


*   *   *


 その日は、残り時間を作戦準備にてた。


「これで、『脳波検査機(ブレインディテクター)』の使用方法もわかったかな」

「大丈夫です」


 『大聖堂』への突入班、陸戦隊隊長のレヴェラルド・ダーテスと医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイも使い方をマスターしていた。

 『ファナ』農場担当のイルミナ・ラトキンも、念の為に操作を覚えている。


 そうした道具類の準備はもちろんのこと、捜査の手順も確認し、詳細を詰めていく。

 今回は少数精鋭による奇襲が基本なので、意識の徹底は比較的楽だ。


 仁D、礼子、イルミナ・ラトキン、ハーンが『ファナ』農場担当であるが、関係者が逃亡しないよう、農場の周囲を固める役目の者が必要になる。


「それは、自分の方で手配しますよ」

「お願いいたします、ジン殿」


 仁は『ランド隊』を呼び寄せ、農場の周囲に配置するつもりでいた。


 そして『大聖堂』班。


「『大聖堂』の裏口や非常口には『アリストテレス』からゴーレムの『スペース11』から『スペース20』を出して配備しよう」

「おお、それは助かります」

「それに、万が一のことを考え、『障壁(バリア)』系の魔導具と『麻痺銃(パラライザー)』を携帯しておいたほうがいいな」


 特に医療研副室長のメイ・シャイ・ジョーイは戦闘力皆無なので、要注意だ。


「レイ、彼女のことは気にかけてやってくれ」

「わかりました」


 一応、従騎士レイにメイ・シャイ・ジョーイのことを頼んでおくが、それでもまだ少々不安がある、とマキナ3世は感じた。


「トマックス閣下、彼女にも俺のゴーレムを1体付けようと思うが、どうかな?」

「そうしてもらえれば安心ですな」

「よし」


 こうして、メイ・シャイ・ジョーイには『スペース10』が護衛に付くことになったのである。


*   *   *


 午後6時、チェルは世界警備隊本部屋上にいた。


「海に沈む夕日はきれいですね……」

「ええ」

「わたくしの製作者様は、山の上から見る朝日と夕日が好きだ、と仰っていました」

「そうですか」

「でも、海の夕日も素敵です」


 隣にはアンがいて、共にはるか西の海に沈む夕日を見つめていた。


「ジン様はどうなさっています?」

「ごしゅじんさまでしたら、セルロア王国国王陛下のところに向かわれました」

「ああ、作戦の事前許可と同行者の案内ですね」

「ええ」


 穏やかに暮れていく作戦前夜であった。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210706 修正

(誤)チェルとハーンが最高管理間の執務室へ戻ってきた。

(正)チェルとハーンが最高管理官の執務室へ戻ってきた。


(旧)

 が、今はチェルのリミッター解除である。


「よし。……『今日の花を摘む』『明日の日を想え』」

(新)

 が、今はチェルのリミッター解除である。

 ここで礼子が口を開いた。


「……チェルさん、リミッターが解除されたあなたが、わたくしたちを襲わないという保証は?」

「お疑いはごもっともです。が、パスワードを称えた方を襲うことはできません。……それにつきましては、制御核(コントロールコア)を参照していただいても構いません」

「わかった。信用しよう」

「いいのですか?」

「礼子もいるしな」


 礼子なら、リミッターの外れたチェルであっても、問題なく無力化できるであろうから。


「よし。……『今日の花を摘む』……『明日の日を想え』」


 20210904 修正

(誤)が、パスワードを称えた方を襲うことはできません。

(正)が、パスワードを唱えた方を襲うことはできません。

(旧)ただし、パスワードの方は自分や、ハーンではできません」

(新)ただし、パスワードの入力の方は自分や、ハーンではできません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >パスワードの方は パスワード入力? >パスワードを称えた 唱えた?
[良い点] >(まあ、チェルが直接戦闘するような機会はないだろうからな……) エ「……フラグ……」 仁「……俺も、思ってから気付いた……」 [気になる点] >「……それはいいが……20倍って言ってたけ…
[気になる点] >「それは、自分の方で手配しますよ」 >「お願いいたします、ジン殿」 >仁は『ランド隊』を呼び寄せ、農場の周囲に配置するつもりでいた。 仁は戦力不所持って建前があるし、マキナに陸戦ゴ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ