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マギクラフト・マイスター  作者: 秋ぎつね
79 捜理協会篇
3002/4343

79-29 顔合わせ、そして

 チェルたちがいきなり『北方民族』と敵対することはないとわかり、一安心。


 マリッカDは用事があるという建前で、転移門(ワープゲート)を使い、帰っていった。

 実際は、あまり長いこと接していると『分身人形(ドッペル)』であるということがバレるとまずいからである。

 というのも、マキナ3世と違ってマリッカDは『魔力パターン』をチェルたちに検知してもらわねばならないので体表面の『魔法障壁(マジックバリア)』展開をしていないからである。

 蛇足ながら、もしも作りものであることがバレたなら、『直接対峙は危険だと思ったから』という言い訳が用意されていた。使わずに済んだが。


 そして今、『アリストテレス』内でのチェル、ハーン、アン、そしてマキナ3世らの会談は平穏無事に進んでいた。


「チェル殿やハーン殿らと敵対せずに済んで、正直、ほっとしている」

「それはわたくしどもも同じです」

「双方が争いを回避できたことをよしとしているなら、この先共闘もできるだろうと思うが」


 マキナ3世がそう言うと、チェルもまた答える。


「相手にもよりますが、可能でしょうね」

「もちろん相手は『捜理協会(そうりきょうかい)』だ」

「それでしたら何の問題もないでしょう。むしろこちらが力を借りたいと思っているのですから」

「なら、問題ないな」

「はい」


 こうして、対捜理協会(そうりきょうかい)のための協力体制がマキナ3世とチェル・ハーンらとの間に結ばれた。


 これがあれば、調査はチェルたちが、実際の逮捕はマキナ3世側……つまり『世界警備隊』が行うことができるわけだ。


「では、『世界警備隊』の本部である『アヴァロン』へ案内しよう。そこには俺の兄弟弟子も来ているはず」

「その方とは……もしや?」

「ああ。『魔法工学師マギクラフト・マイスター』、ジン・ニドーだ」

「それは楽しみです」


 そして『アリストテレス』は夜の闇の中、『アヴァロン』を目指した。


*   *   *


 時間調整を行い、現地時間で2月21日の午前8時、『アリストテレス』は『アヴァロン』の空港に着陸した。

 その横には『ハリケーン』が既に着陸している。


「あれは『魔法工学師マギクラフト・マイスター』の乗機『ハリケーン』だ」


 『ハリケーン』は全長40メートル。『アリストテレス』よりも小さいが、それでも空港に駐機されているどの飛行船よりも大きい。


「この船よりは小さいですが、それでもただならぬ何かを感じます」


 チェルが言った。


「そう、そのとおり。あの船は、多分この『アリストテレス』よりも総合性能は上だろう」

「それほど、ですか」

「ああ。だからジンが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』を継いだんだ」

「なるほど。……初代様にお会いしてみたかったですね」

「それはちょっと無理だな……」


 『アリストテレス』から下船するマキナ3世、チェル、ハーン、アン。

 彼らを出迎えたのは『アヴァロン』の最高管理官であるトマックス・バートマンと仁、それに礼子であった。


 仁はマキナ3世たちより10分ほど早く到着し、トマックスと共に彼らを待っていたのである。


「やあ、マキナ」

「よう、ジン」

「マキナ殿、ようこそ」

「トマックス殿、今日はよろしく。急な来訪で申し訳ない」

「いやあ、貴殿たちにはもう慣れましたよ」


 そんな挨拶を交わしたあと、チェルとハーンが紹介される。


「チェルと申します。よろしくお願いいたします」

「ハーンと呼んでくれ。よろしく頼む」

「こちらこそ」


 そして仁Dも自己紹介する。

 仁Dは『魔法障壁(マジックバリア)』を展開していない。

 アンと同じ魔力パターンであると検知してもらわないと、本人であるという証明が面倒臭いからだ。

 ちなみに作りものであるとバレた場合は、こちらも『不必要な危険を避けるため』という理由が用意されている。


「ジン・ニドーだ。3代目『魔法工学師マギクラフト・マイスター』を名乗っている。こっちは従騎士の礼子だ」

「あなたが『魔法工学師マギクラフト・マイスター』ですか。お会いしたいと思っておりました」

「それは光栄だな」

「……そして従騎士、でしたか。レーコ様、お会いできて光栄です」

「よろしくおねがいします」


 チェルは仁Dと礼子に対し、控えめな挨拶を行った。ハーンは無言である。


 そして一行は『世界警備隊』の小会議室へ。

 そこで今後のことを打ち合わせるのである。

 メンバーは、今顔を合わせた面々に加え、最高管理官副官のイルミナ・ラトキンが加わっている。


*   *   *


「まず、俺から報告しよう」


 小会議室では、まずデウス・エクス・マキナ3世が口火を切った。


「『捜理協会(そうりきょうかい)』では……」


 これまで調べた結果を報告していく。

 曰く、

 捜理協会(そうりきょうかい)では、信者を麻薬『ファナ』の中毒にしている。

 捜理協会(そうりきょうかい)では、『暗示(セデュース)』の効果がある魔導具を使い、信者を洗脳している。

 捜理協会(そうりきょうかい)では、3人いると言われている『聖女』もまた、麻薬漬けになっている。


 これを、アンが補足する。

 捜理協会(そうりきょうかい)では、『大聖堂』で行われる『朝の礼拝』で洗脳が行われている。

 その内容としては、『世の人々を救うのは平等ではなく公平さである』『力あるものは弱きものを助け、富めるものは貧しきものを救い、健康なものは病弱なものをいたわるべし』という協会の基本理念の他に、『信者以外との接触は極力控えよ』や『一致団結し、協会の理想のために努力せよ』『聖女を敬い、導師を尊び、協会に忠誠を』などと、協会への忠誠を深める内容が挟まっている。


 そしてチェルも発言。


「その麻薬『ファナ』と『暗示の魔導具』は、私どもの系列の基地が所有していたものなのです」


 と。

 ここで仁Dが補足説明を行う。


「セルロア王国南部のルトグラ、という町近くにある砦の地下に魔導大戦時の施設があった。しかもご丁寧に二階層……というのかな。『第1地下』はここのグローマやエイラを危険に陥れた『イザーク』という魔導頭脳が管理している。その『イザーク』がとある理由で暴走したのでやむなく強制停止したところ、『第2地下』の施設が目覚めたわけだ」


 そこに所属する自動人形(オートマタ)がチェルで、ゴーレムがハーンだ、と締めくくる仁Dである。

 そこから先は本人……チェルが説明を行う。


「今のジン様の説明は真実です。同じような施設がクゥプの南海上にある島の地下にもありまして……そこはいざという時の避難所として作られました」


 そして避難した人を落ち着かせるために暗示の魔導具があり、また麻薬も置かれていた、と説明。

 ここでマキナ3世が引き継ぐ。


「そういうわけで、『捜理協会(そうりきょうかい)』が使っている暗示の魔導具は盗難品だ、麻薬も同じ。2つを取り戻し、協会を糾弾するのに何の問題もないと思うが」


 仁Dもまた、それが真実だと口添えをした。


「こちらで独自に調査した結果、今のチェル殿の発言のとおりだと証言しよう」


「わかりました。そういうことでしたら、『世界警備隊』としても動くのにやぶさかではありません」


 と、トマックス・バートマン。


「それでは引き続き、『捜理協会(そうりきょうかい)』の捜索について打ち合わせを行いましょう」


 そういう流れになったのである。

 いつもお読みいただきありがとうございます。


 20210702 修正

(誤)彼らを出迎えたのは『アヴァロン』の最高管理感であるトマックス・バートマンと仁、それに礼子であった。

(正)彼らを出迎えたのは『アヴァロン』の最高管理官であるトマックス・バートマンと仁、それに礼子であった。


(旧)そこは今、無力化しているんだが、そのために『第2地下』の施設が目覚めたわけだ

(新)その『イザーク』がとある理由で暴走したのでやむなく強制停止したところ、『第2地下』の施設が目覚めたわけだ

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― 新着の感想 ―
[良い点] チェルとハーンが大きく世界と関わりを持った瞬間ですなぁ。 アヴァロンの方もこれだけ調べ上げてもらったら動くのが楽ですねぇ。 さぁ、面倒ごとと後始末を押し付けて胃痛さんちのトマックスを破壊す…
[一言] 更新お疲れ様です! >「この船よりは小さいですが、とてつもなく恐ろしい気配を感じます」 ここにとどまりますか? →YES  NO 本当にとどまりますか? →YES  NO 魔人…
[一言] >>わたくしどもも同じ 汎「(これが最大の物とでなければ負け確だからな)」 >>それは楽しみです 知「新たなるマスター・・・」wktk 汎「(脚の修理で実力を測るか?)」 >>初代様にお…
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